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  • 2019/12/16 掲載

なぜ人々はMaaSに興味を持つのか? ニューヨーカーの35%が配車サービスを利用

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自動車のテクノロジー活用といえば代表的なものが自動運転だが、ここへきてハードとしての自動車だけでなく、交通を1つのサービスとしてとらえ、クラウドやデータを駆使してモビリティ(移動)をシームレスにつなぐ「MaaS」(Mobility as a Service:サービスとしての移動)にも注目が集まる。自動車関係に特化したリサーチやコンサルティングを行うIHSマークイットのトム・デ・ボリシャワー氏とデビッド・トリパニー氏に、新たなモビリティ手段としてのMaaSと、自動運転技術の差別化のカギになるUXについて聞いた。
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新たなモビリティ手段としてのMaaS、エコシステムや自動運転技術の差別化のカギは?
(Photo/Getty Images)

すでにニューヨーカーの35%がライドヘイリングを利用

 米中貿易戦争や、日本による韓国への輸出管理強化など、地政学的要因もあり、国際貿易の先行きは不確実さを増している。

 また、貿易協定や関税の見直し、排ガス基準の改定、自動転車へ法整備、ライフスタイルの変化に伴う販売台数の減少など、自動車業界も難しい局面にあるといえる。しかし、ボリシャワー氏は「モビリティについては面白い状況になっている」と指摘する。

 その理由は、ライドヘイリング(Ride-Hailing:ウーバーなどの配車サービス)が極めて高い成長を維持しているためだ。「2017年は主要市場で推定値で100億ライド、2018年には146億ライドまで増えている。100億ライドを利用人口で割ると、年間1人あたり約2.5ライドだが、この数字は今後、伸長することが期待される」とボリシャワー氏は述べる。

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近年のライドヘイリングの推移。特に中国とインドの伸びが顕著だ
(出典:IHSマークイット)

 現在、都市部のニューヨーカーの35%が配車サービスを利用し、8%がカーシェアリングを利用している。では、なぜ人々がMaaSに興味を持ちつつあるのだろうか。ボリシャワー氏は「人々のビヘイビア(振る舞い)に変化が起きているためだ」と話す。

「かつては若くして免許証を取得し、自動車を購入して運転を始め、結婚してから家族用の大型自動車に乗り換え、生活に余裕ができた人生の後半には、自分へのご褒美として高級車を所有するという流れでした」(ボリシャワー氏)

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IHSマークイット
グローバル・トランスポート&モビリティ・プラクティスリーダー
トム・デ・ボリシャワー氏
 しかし世の中は変化している。人々の振る舞いだけでなく、環境面、テクノロジーの進化といった外的な要因もある。都市化が進み、気候変動が起き、シェアリングエコノミーが台頭することで、「アンチカー」の意識も芽生えてきたのだ。そうした需要の受け皿となるのが配車サービスだ。

「若者は短距離ならスクーター、短・中距離であればロボタクシーといった新しい交通手段を使うようになるでしょう。特に、オンデマンド配車サービスでの活用を前提とし、完全自動運転技術によって無人で運行可能なロボタクシーは、未来のキーテクノロジーの1つになると考えられます」(ボリシャワー氏)

自動運転技術をコアに、MaaSはエコシステムを形成していく

 では、これからMaaSはどのように発展していくのだろう? ボリシャワー氏は、ロボタクシーを例に、MaaSエコシステムのバリューチェーンを説明した。

「まずコアに自動運転技術があり、車両、フリート事業者、モビリティ、コンテンツというように収益チャンスが広がっていきます。自動運転技術のサプライヤーには、グーグルから独立したWaymo(ウェイモ)などが挙げられます。同社はサービス提供会社にライセンスを付与し、それにより得られる課金で利益を上げていくでしょう」(ボリシャワー氏)

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自動運転技術は、ロボットタクシーのコア技術となるが、そこから多くの収益機会が派生する
(出典:IHSマークイット)

 自動運転技術が車両に実装されると、次にウェイモのような技術サプライヤーがFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)やJLR(ジャガーランドローバー)といった車両メーカーと手を組み始める。収益チャンスはフリート事業者にも広がる。彼らの場合はクルマの清掃や保守・点検などを行うことで収益を得る。すでにウェイモは、AVIS(エイビス)やAutoNation(オートネーション)などと提携し、この分野でエコシステムを確立する。

「さらに上位レイヤーのサービスを提供するモビリティ・プラットフォームも魅力的です。ここにはウェイモのほか、ウーバーやLyft(リフト)などのプレイヤーがいます。特にウーバーは独自プラットフォームを米国2都市で展開し、さらなるスケールアップを狙っています。このプラットフォームが次に大きな収益源になっていくでしょう」(ボリシャワー氏)

 なお、最上位レイヤーには、まだ存在していないコンテンツ提供プロバイダーなどがいるが、この部分も将来的には大変重要になる。

「ロボタクシーが普及すると、移動中の過ごし方まで考えなければいけないからです。モビリティ・プラットフォームでは、顧客属性も収集しているので、利用者のあった広告や動画ストリーミングの提供も可能です。大都市では移動時間が短いですが、長距離移動であれば映画の提供も可能でしょう」(ボリシャワー氏)

 ほかにも車内のアメニティサービスとして、ドリンクやスナックを提供するなど、差別化を図る動きが出てくるかもしれない。

 ボリシャワー氏は、これらのエコシステムは「これまでのような自動車メーカー主導で形成されるものではなくなるだろう」と述べ、業界の中でゲームチェンジが起こる可能性を示唆した。

【次ページ】「UXの3要素」が自動運転技術を差別化する

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