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  • 2020/01/08 掲載

事例でわかる企業の再生エネ対応 イオンや大和ハウス工業、戸田建設のアプローチは

連載:令和時代の「環境経営」トレンドに向けて

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「ESG投資」、「SDGs」、「RE100」といった言葉が浸透し、コンサルティングを行っている当社が企業から相談を受けることも増えた。先行して取り組みを始めている企業を見ると、中には、単純に大きなコストをかけて実現している企業もある一方、コスト抑制やマーケティング効果を最大化する工夫を行っている企業も存在する。本記事では、そうした工夫を行っていると考えられる事例(イオン、大和ハウス工業、戸田建設)の再生可能エネルギーへの対応をピックアップし、現実的な取り組みについて考えてみる。

ビジネスデザイン研究所 代表 久保欣也

ビジネスデザイン研究所 代表 久保欣也

東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻修了後、東京電力に入社。東電では事業開発部にて新規事業の事業化やM&Aに従事した。その後、ドリームインキュベータにて、全社的な事業拡大戦略の策定支援、技術分野での新事業開発の立案や実行支援を行った。2015年11月にビジネスデザイン研究所を設立。電力分野では新規事業の立ち上げや新電力の経営支援を手がけている。そのほか日本省電、レジンも経営。

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環境問題へ取り組みつつ、コスト抑制やマーケティングを達成する方法はあるか
(Photo/Getty Images)




RE100、SBTに加盟している環境対応企業は?

 RE100(Renewable Energy 100%)は、事業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことにコミットする企業協働イニシアチブを指しており、世界では219社、日本では29社が加盟している(2019年12月16日時点)。

 社数で見ると一握りだが、全体で日本の総電力消費の約1.5%を占めるほどの大企業が加入している。

加入例:
アスクル、イオン、積水ハウス、ソニー、大和ハウス工業、東急不動産、戸田建設、富士通、富士フイルムホールディングス、丸井グループ、リコー、ワタミ等

 上記企業を含む19社は、2019年5月に「RE100メンバー会」を発足(その後、新規RE100宣⾔企業が随時参加)。再生可能エネルギー普及を進めるため、メンバー間の協業促進や、政策立案者等への提言を行っている。

 次にSBT(Science Based Targets)は、世界における気温の上昇を産業革命前と比べ、2℃未満へ抑制することを目的としたイニシアチブで、世界全体で741社、日本は83社が参画している(2019年12月16日時点)。

 日本では電気機器の製造業や建設業、食料品製造業が多くなっている特徴がある。

加入例:
アサヒグループホールディングス、NEC、キリンホールディングス、コニカミノルタ、コマツ、サントリーホールディングス、住友林業、セイコーエプソン、積水ハウス、ソニー、大和ハウス工業、戸田建設、パナソニック、富士通、 富士フイルムホールディングス、ブラザー工業、LIXILグループ、リコー等

 いずれも加入しているのはグローバルで競争している大企業ではあるが、一方で中小企業を対象とした再エネ100を目指すイニシアチブである「再エネ100宣言 RE Action」が2019年10月に発足し、足元では、RE100・SBT共に加入社数は加速度的に増加している。足元では、RE100・SBT共に加入社数は加速度的に増加している。

 これらのイニシアチブに所属する理由は前回説明したとおりだ。企業が「持続可能な社会を創る」ために動くことを投資家や消費者など社会に対して広く宣言し、その結果に応じてESG投資などでの評価、格付けがなされる。その情報を目にした投資家・消費者は、その企業を支持するようになり、今後、事業を推進する機会や投資を受ける機会を得る、という仕組みだ。

 それでは、環境とコストのバランスをうまくとり、RE100・SBTを上手に活用している事例を題材として、どういったやり方があるか考える。

イオン事例:来店者のEVから店舗電力を調達

 イオンは2018年3月に、2050年までの二酸化炭素排出量削減ビジョン「イオン脱炭素ビジョン2050」において、“2050年までに店舗での二酸化炭素排出量をゼロにする”ことを発表している。また、中間目標として2030年までに2010年比で35ポイント削減することも、同時に宣言している。

 その取り組みの一部として、イオンモール堺鉄砲町でEV(電気自動車)を活用した実証実験が面白い構想なので、その紹介をしたい。

 まず、この実証実験は主に2つの要素で構成されている。

 1つ目は、V2H(Vehicle to House。EVの電力を建物の電力供給源として利用する)機能付きEV充電器を活用した実証だ。来客用駐車場にその充電器を設置し、EVで来店したモニターが接続すると、店舗で使う電力をEVから供給できる仕組みになっている。引き換えに、電力を供給した消費者はWAONポイント等を受け取る。これによって、店舗は使用電力を削減することができ、その削減効果は混雑する時間ほど大きい。

 2つ目は、ブロックチェーン技術を使った環境価値移管の実証だ。関西電力に設置された太陽光パネルで発電した電気を社有EVに充電する際、ブロックチェーン技術を用いて電力系統の電気と識別することで、その充電量を管理できるようにしている。そのEVからV2H機能付き充電器を通して放電されれば、太陽光発電由来の環境価値(注1)を有する電気の放電量を把握できる。

注1:環境価値:自然エネルギーによる電気が、電気そのものの価値に加えて持っているとされる価値のこと。

画像
イオンモール堺鉄砲町での実証実験
(出典:イオン報道発表

 この取り組みの“肝”は、イオンの電力料金の種別・規模と、電力調達の方法がうまくかみ合っている点だ。

 イオンは国内外で約300モール、総合スーパー等も約500店舗以上を展開しており、電力消費量は年間で約74億kWh(2016年度、国内主要52社)にものぼる巨大消費者だ。高圧施設であることから、年間のピーク(最大需要kW)によって年間の基本料金が決まる構造になっている。

 イオンからすれば、単純に自然エネルギーを購入しているだけでなく、自社店舗のピークカットにつなげている。特殊な充電設備・仕組み作りにコストはかかるが、電力の基本料金を下げることで、そのマイナスを補うだけの効果が見込める可能性もある。

【次ページ】大和ハウス工業、戸田建設の再エネ対応事例

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