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  • 2020/02/07

農園をシェアする「市民農園」にチャンス到来、生産緑地2022年問題やアグリテックで

立春を過ぎて、暦の上ではすでに春。花や野菜のガーデニングをたしなんでいる人は、そろそろ忙しくなってくる季節だ。市民が農園をシェアして農作物を栽培する「市民農園」は、昨今話題のシェアリングサービスの先駆けとも言える。平成のガーデニングブームで2013年度までの20年間で農園数は約4倍と大きく成長したが、現在は主要顧客層の高齢化もあり、減速気味であることは否めない。だが、令和の「シェア農園」は成長軌道に乗れる可能性がある。その理由を解説しよう。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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市民農園が返り咲くと言える理由とは?
(Photo/Getty Images)

ガーデニング、家庭菜園の市場は成熟した

 ガーデニング愛好者で、花や野菜を育てるために小さな区画をシェアする「市民農園」を利用している人は、都市部を中心に少なくない。庭付き一戸建てに住んでいても日当たりの良さを求めて市民農園を使う人もいる。

 市民農園の開設者はさまざまだ。自治体が募集して抽選で区画を割り当てるところや、農業者が農地の一部を区切って貸すところ、農協が運営するところ、企業やNPO法人が経営する貸農園などがある。

 自宅の近くだけでなく、ドイツ語で「クラインガルテン(Kleingarten)」と呼ばれる宿泊可能なコテージがついた滞在型市民農園もあり、日本でも一時期は「週末は信州の山里で農作業ざんまい」のようにアウトドア雑誌などで紹介され、ちょっとしたブームになっていた。

 ガーデニング、家庭菜園の市場規模は、矢野経済研究所が2019年11月に発表したレポートによると、2019年度(見込み)は植物、資材を合わせた出荷金額ベースで2,304億円、前年度比1.3%の伸びだった。これは、2015年度と比べても2.4%しか伸びていない。

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ガーデニング、家庭菜園の市場規模推移

 かつてのガーデニングブームも今では落ち着いて、市場は成熟しているといえる。

伸び悩みの原因は「2025年問題」の先取り

 “平成のガーデニングブーム”の時期に、市民農園は大きく成長した。

 政府は平成時代の間に、1989年の「特定農地貸付法」、1990年の「市民農園整備促進法」、2005年の「改正特定農地貸付法」、2018年の「都市農地貸借法」(注1)と、市民農園への参入を促進し市民が利用しやすくする法制度を次々と繰り出した。これらの法整備も、市民農園の新増設を後押しした。

注1:法律名はいずれも通称

 農林水産省は毎年、3月末時点の市民農園の開設状況を公表している。1993年度(平成5年度)から2013年度(平成25年度)までの20年間で農園数は約4倍、面積は約4.7倍、区画数は約3.3倍と大きく増えている。

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市民農園の農園数、区画数、面積の推移

 それでも近年は伸びが鈍化し、2013年度と2018年度を比べると農園数は0.8%しか増えておらず、面積は5.6%減、区画数は2.3%減と純減になっていた。

 この減速については、「相続税対策のアパート建設ブームの影響」という説もある。だが、矢野経済研究所はレポートの中で、平成のガーデニングブームをけん引した団塊世代のシニア層の「ガーデニング離れ」を指摘している。

 たしかに当時は、コピーライターの糸井重里氏(1948年生まれ)の趣味が野菜づくりとのことで、トレンドリーダーとなってブームを引っ張った。だが、すでに同世代は70歳を超え、野外の農作業が肉体的に厳しい年齢になってきた。人口ボリュームが大きい団塊世代が75歳を超えて後期高齢者になる「2025年問題」を、先取りしたような形になっているのだ。

企業参入で市民農園が返り咲く?

 主力顧客の世代が“引退”するなら、その下の世代の新規顧客を取り込んでいかなければ、市場はじり貧になっていく。すでにガーデニング専門店では、子供連れをターゲットに遊具を置いたり、カフェを併設して店内滞在時間を伸ばしたり、SNSでの情報発信で来店に誘導するなど、ガーデニングの楽しさを若い世代にアピールして新しい顧客の発掘を図っている。

 ショップだけでなく、フィールドの市民農園も変わりつつある。かつては、企業やNPOには市民農園の開設は認められていなかったが、まず構造改革特区内に限定で規制が緩和され、2005年には「改正特定農地貸付法」で全国的に規制が撤廃された。

 企業やNPOなどが開設した市民農園は、2003年度は15カ所にすぎなかったが、特定農地貸付法の改正が行われた2005年度は69カ所、2013年度は296カ所と順調に伸びた。2018年度は314カ所で、全国4147カ所の市民農園の7.6%となった。

 開設者別では地方公共団体が約53.0%を占め、農業者28.0%、農協約11.4%にも及ばないが、企業やNPOが都市農地(生産緑地)を借りやすくなる「都市農地貸借法」が2018年に施行されたこともあり、今後はさらに伸びていきそうだ。

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市民農園の開設者別の農園数と割合

 企業がビジネスとして市民農園の運営に参入する動きは、すでに活発化している。さまざまなサービスメニューをセールスポイントに新規顧客を開拓し、シェアリングエコノミーの1業態「シェア農園」と呼んでも良いようなビジネスを展開する事例もある。

 「抽選になかなか当たらない」「1年契約で使いにくい」「耕されていない固い地面に苦労した」「栽培の制約や決まり事が多い」「農具や肥料や除草、病虫害対策にお金も手間もかかる」「トイレや着替える場所がない」など、従来の市民農園につきまとっていたマイナスイメージも、完全にではないにしろ、払拭(ふっしょく)されてきているようだ。

【次ページ】「シェア農園」ビジネスを展開する事例を紹介。チャンス到来のワケ

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