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  • 2020/05/27 掲載

企業がAI(人工知能)を導入する際の戦略と体制構築方法、ガートナーが解説

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企業が人工知能(AI)を採用するようになっているが、その多くは未導入か採用の初期段階にある。すなわち、AIをビジネスで活用するための体制と戦略を固めきれずにいる状況だ。そもそも経営者やビジネスパーソンがAIに期待することとは何か。自社でどのようにAIを導入していくべきなのか。ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデント, アナリスト、ウィット・アンドリュース氏が同社独自の調査結果や生命保険会社の事例などをもとに解説する。
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AIに「代行」してもらうことよりもAIに「支援」してもらうことを期待している
(Photo/Getty Images)

AIの採用に行き詰まる障壁とは

 ガートナーが毎年グローバルを対象に実施している「CIOサーベイ」によると、2019年版では、AIを「導入済み」の企業は14%、「1年以内にAIを導入する」という回答が23%だった。このまま行くと翌年には37%の企業がAIを導入済みになっているはずだが、実際2020年版の同調査では、「導入済み」企業は19%にしかなっておらず、AIの導入がCIOの思惑通りに進んでいないことが分かる。

 この行き詰まりの要因は何か。別のガートナーの調査から、1つは企業の成熟度の問題、つまりスタッフのスキルやデータの範囲または品質の不足と、AIによるメリット・利用についての理解の不足が主な障壁となっていることが分かる。

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人々はAIに「代行」よりも「支援」を求めている

 では逆に、どのような企業がAIに取り組むべきなのか。つまり、AIをうまく採用できている企業はどのようなユースケースで、どのようにして明らかなメリットを生み出せているのだろうか。

 ガートナーが一般の消費者に対して行ったAIに関する調査で、AIを何のために使いたいか、具体的には「AIに自分の代わりをどの程度行ってほしいか?」という質問をしたところ、「支援してほしい」と「全部行ってほしい」の比率がおよそ3:1という結果になった。

 たとえば、自動車を運転する際の経路案内、健康管理、ホーム・セキュリティ、よりよい買い物や食品選びの支援など、人々は、それはもうさまざまな形でAIに期待をかけている。しかし、人々はAIに対して「自分の代わりをしてほしい」という気持ちよりは、「自分の能力を拡張してほしい」「よりよく物事を遂行できるようにしてほしい」という期待のほうが大きいということなのだ。

 アンドリュース氏は、「この点は、私たちがAIを企業の中でどのように実装するかを考える際に押さえておくべき重要なポイントになる」と指摘する。そしてこのこと、つまりAIには「支援」をより期待しているという事実は、「企業が求めることと合致しているだろうか」と問いかけた。

経営陣が考えるAI導入目的と、働く人がAIを使いたい用途

 ガートナーが企業に対して行った調査によると、企業がAIを導入する目的として最も大きいのは、断トツで「カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善」である。「CXは、CIOだけではなく、CEOにとっても重要。カスタマーエクスペリエンスはとにかく常に向上させたいと思っている」とアンドリュース氏は補足した。

 このほか、AI導入の目的の上位には、「反復的/手動タスクの自動化」「コストの削減」「複雑なタスクの補完」など、従業員の働き方に関わるものが挙がっている。これに対して、企業で「働く人」のほうは、AIを何に使いたいと考えているのだろうか。

 ガートナーが従業員に対して行った調査では、「ミスを減らす」「情報を見つける」「定型業務を支援する」「大容量のデータを処理する」などの用途が上位に挙がった。ここでもやはり、AIには「自分に置き換わる」のではなく、自分の作業あるいは仕事がよりよく、よりうまくできるように支援してくれることを期待している。

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AIが従業員の支援役になると考えられる分野
(出典:ガートナー)

 「ただ、世代によって、AIに対する期待に違いが見られる」とアンドリュース氏は指摘する。たとえば65~74歳のキャリアの終盤を迎えた層では、「情報を見つける」ことの支援を期待している人が多いのに対し、Z世代は「創造性とアイデアをサポートしてほしい」、さらにその下の18~24歳の層では、自分の「仲間」として使いたい、そう考えている割合が多いようだ。

 そうした違いはありつつも、消費者のAIに対する期待、企業とそこで働く人のAIへの期待には一貫性があると見てよいだろう。人はAIの支援を受け、人が長けていることにもっと時間を費やせるようになりたいのである。

【次ページ】企業はAI導入に当たって何をすればよいのか?起点は「COE」

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