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  • 2020/09/09 掲載

尾原和啓氏と「ペアドク」で考える!「意味のある存在になるための方法」

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コロナ渦により、社会に対する価値観も大きく変容しつつある。そんな変化の時代には、表面的な数字や肩書でなく、自分と一緒に仕事をする「意味」が求められる。「なぜ相手は自分とパートナーになりたいのか?」「そのとき自分は何者になれるのか?」。そういう視点で仕事を見つめ直す必要があるだろう。先ごろ開催されたオンライン・イベント「尾原和啓と考える!意味のある存在になる方法」では、同氏の著書『あえて数字からおりる働き方』をテーマに、ペアドクというユニークな手法を用いて、ニューノーマル時代における新たな思考と行動に関する考察がなされた。
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尾原 和啓氏
京都大学大学院 工学研究科 応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、NTTドコモ、リクルート、ケイ・ラボラトリー、リクルート、オプト、グーグルGoogle、楽天など、数多くの仕事に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーも歴任。『あえて数字からおりる働き方』を7月8日に出版した。

その場で本を読んで語りあい、著者に直接質問できるペアドク

 今回のイベントは、オンラインで開催されたが、「ペアドク」と呼ばれるユニークなアプローチで進められた。この方法は、テーマとなる著者の作品を30分ぐらいでざっと目を通し、自分がハッとした文章などを書き留める。さらにグループごとに感想を出し合い、そのあとに参加者が著者にじかに質問するというものだ。

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本イベントで採用された「ペアドク」の流れ。最初の約30分間で本を流し読みして、そのあと30分間でグループでの対話、さらに著者への質問という流れで進んでいく

 この流れに沿って、後半から尾原和啓氏が登場し、『あえて数字からおりる働き方』を世に出した理由について簡単に説明した。

 この本は「本来ならば手段である数字に人々がとらわれ、それが目的化してしまうことで、数字の奴隷になっていないか?」という疑問から生まれてきたという。実際に売上や、Twitterのフォロアー、Facebookの「いいね」、YouTubeの再生回数などを気にしたり、人の肩書を気にかける人も多いだろう。

 とはいえ尾原氏は「もし数字が手段であるとして、あなた自身の目的は何ですか? と問いかけられたとき、自身が何者になりたいのか? という根本的な問題にたどり着くことになると思います。そこに自分が突き当たることが大切なのです」と強調する。


数字のオバケに負けず「自分の物差し」を育てるには?

 近代資本主義において、日本が成功した理由は、工業・製造業が発展したからだろう。かつての日本の勝ちパターンは、明確な問題を可能な限り早く解決して、安く、高品質に提供することだった。企業のために多くの人々がパーツとなり、同じ方向を進んでいた。

 しかし現在のように企業の寿命が個人の寿命より短くなって、不安定で変化の激しい時代になると、誰もが同じ方向を見ても生き残れない。個人の仕事に対する目的をもう一度じっくりと考え直す必要が出てきた。

「昔は、会社が自分を決めてくれた時代でした。たとえば江戸時代は、親の職業によって、自分の道も決まってしまいました。昭和の時代も、大学や最初に入社した会社で自分の道がエスカレータ式に決まっていました。しかし、いま大事なことは、自由が増えて自分で何かを決めていけることでしょう。逆に言えば、我々は“選択の自由という不幸”と向き合わなければならないのです」(尾原氏)

 実際に「自身の仕事の目的は何か?」と問われて、すぐに返答できる人は少ないだろう。尾原氏も転職3回目ぐらいで、ようやく自身の目的が定まってきたそうだ。最初にマッキンゼーに入社したのも、自分が何者になるのか分からなかったので、とりあえず選択肢を増やしたいという思いがあったという。

 インターネットに代表されるテクノロジーが進展していくなかで、同氏は「自分らしさや人々の笑顔を増やせると信じて、プラットフォームを作りたいという思いが固まってきました。NTTドコモでiモード事業の立ち上げ支援に携わったり、リクルートで事業企画をしていた当時のことです。誰かに価値を提供し、しっかりと受け取ってもらえる実感が湧いてきました」と振り返る。

 日常の仕事では、人々はどうしても目先の数字だけを追いがちになる。今回の著作では、どんなときに仕事に対して「有り難う」と感謝してもらえるのかを考え、その先を見つめて、自分自身が何者かを再認識することが大事だというメッセージをこめた。本書の中で特に重要なポイントを引用すると次の通りになる。

 我々は、有り難うの意味を忘れ、「数字のオバケ」にとりつかれやすくなってしまうのです。では「数字のオバケ」に負けずに「自分の物差し」を育てるにはどうすればいいのか? その答えは

  1. 自分が誰かから「有り難う」と言ってもらえるGIVE(ギブ)を繰り返すこと
  2. ギブを繰り返すことによって、特定の誰かにとっての「意味のある」存在になること
  3. 特定の誰かにとって「意味のある」存在になることを重ねていくこと

 これらの行為によって「何者かになっていく」、つまり本のタイトルのように、あえて数字からおりて「意味のある自分」を見出していくという点が論旨になる。以下、この本を読んだ参加者の対話から生まれた質問と、尾原氏の回答をご紹介しよう。

どんな仕事も考え方次第。仕事の意味を作り出すほうが圧倒的にお得

チームA:みんなにとっての何者かになる、意味のある存在になるというアプローチは、スモールステップの積み重ねが大切になると理解しています。小さなステップを踏んでいるときに「最初から大きな成果を出せ」と会社から求められることもあります。そのジレンマをどう解決すべきでしょうか?

尾原氏:まず「大きな成果を出せれば、お客さまから意味のある存在になれる」という大前提のもとに、あなた自身による仕事の付加価値が何かを、常に自問自答し続けることが大切だと思います。

 正直にいうと僕がグーグルで働いていたときは、それほど付加価値を出せませんでした。というのもグーグル自体のサービスが素晴らしかったからです。適切なタイミングで、適切な相手にモノを提供すれば買ってくれる。僕でなくてもよかったわけです。

 それでも多くのクライアントから僕が選ばれた理由は、お客さまに必要な情報をGIVEして、彼らにとって意味のある存在になれたからでしょう。商いというものは本来、何かの価値の交換から生まれるはずです。そのなかで会社が提供する価値(製品やサービスなど)だけでなく、あなた自身が提供できる価値を広げていくことが重要になります。

 お客さまから、ひとたび自分が意味のある存在だと認められると、交渉時間やコストが激減します。僕自身は、相手の悩みのひとつ上から入っていくので、クライアント側も尾原と根切り交渉するより、売上を増やしたり未来の話をしたほうがよいと感じてくれます。つまり「成果がある」と「意味がある」は、本質的には相反する話ではないのです。

 本のなかで、成果と意味をそろえると、自分が幸せになれるという話があります。これは「ジョブ・クラフティング」と呼ばれるものです。たとえば城の石垣を積む職人がいて、ある人は「毎日つらい思いで働いても完成は自分の死後。何のために仕事をしているのか」と疑問に思う。一方は「石を積み上げることで、子供や孫が安全に暮らせるようになる。何て大事な仕事をしているのか」と感謝する。

この2者では、後者のほうが明らかに幸せだし、圧倒的に成長できます。どんな仕事でも、成果に加えて、意味を作り出すほうが良いし、自分にとってもお得になるのです。

【次ページ】本来の目的に戻り、マクロ視点でジョブ・クラフティングを捉える

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