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  • 2020/10/08 掲載

10年後に劇的変化、商用車市場で起きる「超重要」な7つのトレンド

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商用車市場は、乗用車業界と同様に、自動運転、コネクテッドカー、電動化などの多岐にわたる課題に取り組んでいます。商用車と乗用車、似たイメージを持つこともある2つの市場ですが、実はまったく異なる側面を持つ市場です。私たちは、商用車市場が目指しているビジネスモデル、あるいは商用車固有の自動運転への期待と逆風など、商用車市場の未来を明確に理解しているのでしょうか。商用車の電動化に関する調査を行っているInteract Analysis社の市場調査レポート「ハイブリッド/電動トラックおよびバス:2020年」に基づいて、同社が予測する商用車の未来に起こるトレンドの7つを紹介します。

編集協力:グローバルインフォメーション

編集協力:グローバルインフォメーション

世界の主要調査会社250社以上とパートナー契約を結び、日本をはじめとする世界各所で市場調査レポートを提供している。パートナーが発行するレポートは複数産業の約10万点におよび、毎月2000点超の新刊が発行されている。レポートの販売のほか、提携先への委託調査の仲介も実施している。
企業URL:https://www.gii.co.jp/

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EVやシェアリングの台頭で、商用車市場には劇的な変化が訪れる
(Photo/Getty Images)

1.コネクティビティを軸にした統合

 商用車市場の多くの課題は、その市場規模の大きさに起因します。商用車の販売台数は乗用車と比べてかなり少なく、乗用車の「脇役」的存在となってしまっています。乗用車で開発された技術やソリューションがそのまま横展開されることもよく起こり、その結果として、商用車市場は全体としてのまとまりを欠き、自動車産業の中では重要度も低く、そのポテンシャルを最大化できずにいます。

 すべての商用車メーカーや、多くのサプライヤーは、それぞれが独自のテレマティクスを提供しています。加えて、テレマティクス・ソリューション開発企業やソフトウェア開発企業も非純正のデータ管理アプリやプラットフォームの提供を行っています。

 車両管理者にとっては、豊富すぎるともいえるテレマティクス・ソリューションの中から一つを選ぶことになります。しかし、幅広い車種や車齢の商用車を有する車両管理者が苦労して一つのソリューションを選んだとしても、各車両を十分に統合できない場合もあります。さらに、こうしたソリューションの多くは有償であり、導入するにしても、管理車両そのものが複数のツールを導入するには装備不足という場合もあります。

 商用車の市場にとっては、全世界で利用できる高品質なソリューションをシンプルに提供するプラットフォームが開発され、商用車テレマティクス市場全体の統合が進み、より便利な決済方法の普及と相まって、業界全体に恩恵がもたらされることが理想的です。テレマティクスの恩恵は車両管理者にまで広がり、結果として、商用車市場のポテンシャルは真の意味で最大化されることになるでしょう。

 商用車市場では、さらに完璧なソリューションの開発へと動いている兆候も見られます。たとえば、Geotabは異なる開発業者のアプリやサービスを統合するテレマティクス・プラットフォームを提供しています。また、今年5月に、Daimler Trucks North Americaが、複数のアプリを統合できるテレマティクス・プラットフォームの開発企業であるPlatform Scienceへの投資を発表しました。


2.自動運転化

 すべての乗用車メーカーやそのサプライヤーも、自動運転車の未来へと突き進んでいます。短期的なメリットとしては、より便利で、より安全な車が生まれることです。長期的な視点では、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の普及を通じて、交通事故をゼロにすることが目標として挙げられています。MaaSの社会では、車両の所有者が誰なのか、またはそのドライバーに運転能力があるかどうかに関わらず、自動運転車がオンデマンドでモビリティを提供するようになります。

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 商用車の自動運転化の未来は、乗用車ほど明確ではありません。さまざまな運転アシスト機能により、ドライバーと車両の安全性の向上が可能になり、安全性は常に向上されるべきでもあります。一方で、自動運転車に置き換わると、多くの職業ドライバーの雇用機会が危機を迎えることになり、経済的にも受け入れがたい事態になります。

 あらゆる条件下、そしてすべての状況における完全自動運転の実現は難しいのが現状です。それに加え、多くの雇用が失われることで、政治的な逆風を受ける可能性もあります。それらを考えると、商用車における完全自動運転は、非常に限定的であると当時に、高価値を生むユースケースでのみ実現するものと考えられます。

 短・中期的には、港湾地域やトラックヤードなどのオフロードでの活用が商用車の自動運転で最も適したユースケースとなりえます。これには3つの理由があります。1つには、これらの場所では、商用車は単純な構造の道路を繰り返し通るため、自動運転を展開しやすい状況であるということです。2つ目は、これらの場所では歩行者や他の車両などの道路利用者とは完全に分離されており、自動運転の展開にあたり、危険度は低くなる点です。3つ目は、これらの場所での雇用者数は通常多くはないので、雇用喪失によるマイナスイメージはさほどなく、むしろ、雇用者の再配置や、危険な箇所での業務を回避する可能性が生まれることがメリットとして挙げられます。

3.車両構造 - 慣習の打破

 この数十年間、トラックのシャシー構造は従来の基本形からほとんど変化していません。また、あらゆる業種に合わせるため、メーカーが基本設計を大きくカスタマイズすることもありませんでした。この業界では、カスタマイズを行うと生産に遅延が生じたり、生産コストが高くなる傾向があります。しかし、それゆえに大変革が起こる可能性もあります。

 完全電気自動車のトラックが誕生しようとする中、ここ数十年間見られなかったパワートレインに革新が起こる可能性も生まれつつあります。エンジンを電気モーター、バッテリー等の部品へ置き換えなければならないという明白な理由はもとより、シャシーの設計やソフトウェア制御レイヤーが大きく変わる可能性があります。

 Interact Analysisが注目し、期待を寄せるトレンドのひとつに、モジュラー式「スケートボード」アーキテクチャーの採用があります。これは乗用車で使われている設計に近いものです。

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モジュラー式「スケートボード」シャシーは商用車で採用を急増させるのか
(出典:Interact Analysis)

 商用車向けのスケートボード型プラットフォームは、スタートアップ企業の間で盛んに開発が行われていますが、小型商用車向けが大半です。しかし、大型車向けへの導入を目的としたREE社と日野自動車の提携のような動きも見られます。標準化されたプラットフォームは、乗用車の部品を活用するものであるため、その販売規模のおかげで、高額なものにはなりません。さらには、モジュラー化またはソフトウェア制御を通じて複数のアプリケーションへのカスタマイズをより簡単にできるようになります。スケートボード・アーキテクチャーは、商用自動車市場を変革させることができる、技術面からのソリューションとなり得るのです。

【次ページ】電動化やMaaSなど、今後のトレンド4~7

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