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  • 2021/04/20 掲載

バブル期に日本企業が大成功できたワケ、日本的雇用と取引はどう機能していたのか? 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第133回)

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「デジタル敗戦」の根因を突き留めるには、かつて称賛された「日本型システム」とは何だったのかを理解しておくことが重要だ。その手がかりは、バブル経済のピークに公表された『平成2年版経済白書』にある。「対面的情報交換と柔軟な組織構造を形作る日本的雇用」や「企業間の安定した緊密な情報共有を可能にする長期継続取引」など、当時成功していた日本経済の「強み」に焦点を当てた分析がなされている。富を生み出す源泉がシフトする中で、これらの「強み」が「弱み」に転化し、DXが求められている。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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日本の「デジタル敗戦」の理由とは…?その手がかかりは、バブル経済のピーク時に公表された『平成2年版経済白書』にある
(写真:毎日新聞社/アフロ)

バブル経済のピークに公表された「経済白書」

連載一覧
 コロナ禍で露呈した「デジタル敗戦」の根因には、かつて称賛された「日本型システム」が関わっている。それは一体どのようなメカニズムなのだろうか。手がかりは『平成2年度年次経済報告(経済白書)』(以下「白書」)にありそうだ。

 「白書」では、1980年代までの日本経済の「構造、体質、システム」を包括的に検討し、ジャパン・アズ・ナンバーワンの「好成績」を生んだ要因が分析されている。公表されたのは、バブル経済のピークにあった1990年8月だ。

 全3章立てのうち第2章が「日本型システム」の分析に割かれている(本文のページ数で392ページ中113ページの分量)。それによると、日本経済が2度の石油危機を乗り切り、プラザ合意後の大幅な円高にもうまく適応できた要因は、新しい技術体系を速やかに取り入れることが可能な日本の企業・経済システムにあったとされる。

 つまり、当時の日本は「技術革新が得意」だったと評価されていたのだ。

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『平成2年度年次経済報告(経済白書)』では、1980年代までの日本経済の「構造、体質、システム」を包括的に検討し、ジャパン・アズ・ナンバーワンの「好成績」を生んだ要因が分析されている
(Photo/Getty Images)

日本経済が成長した3つの理由

 長期にわたり途切れることなく刊行されてきた各種の白書は「不易と流行」を凝縮した貴重な資料だ。その意義は、(1)継続的な視点で過去から現在への動向が追えること(不易)と、(2)その時々で注目された出来事を、後知恵でなく、その当時の実感と熱量で読み取れること(流行)だ。

 「白書」の分析がなされた時代背景をみておくと、株式市場では1989年12月に日経平均株価が過去最高値をつけた直後で、1986年11月の谷から上昇していた景気循環が1991年2月にピークを迎える直前だ。

 当時は、それまで戦後最長だった高度成長期(1960年代後半)の「いざなぎ景気」を超えると期待されていた。長期拡大の絶頂期に公表された白書のため、日本経済の特徴をやや楽観的に過大評価しているきらいもある。

 逆にみると、1990年代以降の低迷を踏まえた「後講釈」の修正が加わっておらず、「成功する日本経済の特徴」について、それまで蓄積された研究成果や多面的議論が強調的に抽出(=ハイライト)された1つの典型と言える。

 「技術開発と日本経済の対応力」と題された第2章では、日本経済の好成績について、景気拡大が長期化したという短期的成果、高い技術水準の達成という成果、石油危機や円高に柔軟に適応したという長期的成果の3点に整理している。

 その上で、この好成績は(1)技術開発力に負うところが大きく、(2)技術開発力の源泉は、日本の企業・経済システムにあり、(3)それは合理性と普遍性を有する、と論理展開され、企業内と企業間のシステムに整理して、その特徴が分析されている。

【次ページ】企業内の「日本的雇用」はどう機能していたのか

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