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  • 2021/05/26 掲載

TSMCとはいかなる企業か?「インテル・サムスン超え」半導体企業の正体

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TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company:台湾積体電路製造)は台湾で創業された半導体製造企業だ。その時価総額は世界第11位に達し、同様に半導体製造を手掛けるインテルやサムスンといった大手を上回る。全世界での半導体不足が報じられる昨今、世界の経済や政治に関わる企業として注目されるようになったTSMCの強みを解説する。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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世界の半導体市場の行方を左右するTSMCの最大の強みとは
(写真:ロイター/アフロ)

今、世界的な半導体不足が起きている理由

 世界的な半導体不足が続いている。半導体の生産がボトルネックとなり、モバイル機器や家庭用ゲーム機から自動車まで、生産計画の変更を余儀なくされている。今やさまざまなモノにコンピューターチップが組み込まれているので、半導体不足は大きな影響をもたらしている。

 半導体不足には複数の要因がある。需要面に目を向けると、コロナ禍によるテレワークに対応するためノートPCが必要になったり、家庭用ゲーム機が売り上げを伸ばしたりしている。また、電気自動車(EV)及びコネクテッドカーの開発が進む自動車業界でも半導体が必要となってきた。今後は、自動運転、人工知能、5G、IoT(Internet of Things)といった技術の発展が見込まれるため、半導体の需要が増加する要因が重なっているのだ。

 Motor Intelligence社の調査によると、全世界における半導体製造の市場規模は2020年の420億ドルから年率6.75%で成長し、2026年には622億ドルに達すると予測されている。

 供給面を考えると、コロナ禍によって工場の生産が止められた点や、火災・寒波・停電等で工場が稼働できなくなった点などが影響し、高まる需要への対応が難しくなった。

TSMCは市場シェア50%以上を占める

 さらに、半導体製造業界は、より構造的な問題が指摘されている。半導体製造は研究開発への大規模な投資が必要となるため、設計に特化して製造は他社へ委託する「ファブレス(fabless)」(注1)メーカーが多い。そのため、高性能な半導体製造は、いくつかの「ファウンドリー(foundry)」(注2)メーカーに依存するようになってしまったのだ。半導体不足が解消されるかどうかは、この製造業者の生産能力にかかっていると言える。

注1:生産工場を所有しない製造業
注2:工場を所有し、他社からの委託による生産を専門にする製造業

 ファウンドリーメーカーの中でも重要な役割を果たしているのがTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)だ。Statistica社の調べでは、2021年第一四半期における半導体製造市場の、実に56%のシェアを獲得している。その高い技術に定評があるため、高性能な機器に搭載する場合には、TSMCに委託するしかないと言われるほどだ。

 TSMCに半導体製造を委託している企業として、売り上げに占める比率の順に、アップル(25.4%)、AMD(9.2%)、メディアテック(8.2%)、ブロードコム(8.1%)、クアルコム(7.6%)、インテル(7.2%)、エヌヴィディア(5.8%)と続く。

 主要なファブレスの半導体メーカーやモバイル機器メーカーが名を連ねているところから分かる通り、全世界の半導体製造がTSMCに依存するようになっている。

TSMCとはいかなる企業か、ビジネスモデルは?

 TSMCは、1987年にMorris Chang氏によって台湾で創業された。台湾政府、フィリップス社が設立に関わり、半導体製造技術の革新を続け世界最大のファウンドリー企業となっている。ニューヨーク証券取引所(NYSE)と台湾証券取引所(TWSE)に上場している同社は、時価総額が5597億ドルを超え、世界第11位に達している(CompaniesMarketCap.com調べ、2021年5月時点)。半導体製造を手掛けるサムスンやインテルを上回るまでに成長しているのだ。

 2020年の売り上げは455億ドルに達し、前年比31.4%の増加であった。半導体市場全体が前年比10%で拡大しているのと比べても、その成長は大きい。売り上げ構成で見ると、モバイル機器や、データセンターやゲーム機に搭載されるようなハイパフォーマンス・コンピューティング向けが約8割を占めている。売り上げ比は小さいが成長している分野としては、自動車・デジタル家電・IoT分野が含まれる。

 約5万人の従業員が所属し、全世界における500社以上の顧客企業に製造した半導体を提供している。工場は主に台湾にあるが、一部は中国や米国でも生産を行っている。

 TSMCのビジネスモデルは「ピュアプレイ・ファウンドリー(Pure-play foundry)」と呼ばれる。他社との契約の下で製造を行い、自社ブランドで製品を提供しないのが特徴だ。製造を委託するファブレスの半導体メーカーにとっては、設計に特化できるため、製造にかかわるコストを最適化できるのが利点だ。

 一方、ピュアプレイに対比されるのが、製造から生産まで一貫して手掛ける統合デバイスメーカー(Integrated device manufacturer:IDM)であり、インテルやサムスンが代表的である。

【次ページ】TSMCの最大の強みとは?最大顧客アップルとの協業の行方は
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TSMCとアップル、インテルらとの関係を次ページで図解

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