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  • 2021/08/12 掲載

Windows 11アップグレード狂奏曲、企業の「乗り換えできない」問題はどうなるのか?

山市良のマイクロソフトEYE

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「Windowsの最後のバージョン」として登場したWindows 10の2015年7月リリースから6年、マイクロソフトは2021年6月24日、次のWindowsバージョン「Windows 11」を2021年後半にリリースすることを突然発表しました。

執筆:フリーライター 山市 良

執筆:フリーライター 山市 良

IT 専門誌、Web 媒体を中心に執筆活動を行っているテクニカルライター。システムインテグレーター、IT 専門誌の編集者、地方の中堅企業のシステム管理者を経て、2008年にフリーランスに。雑誌やWebメディアに多数の記事を寄稿するほか、ITベンダー数社の技術文書 (ホワイトペーパー) の制作やユーザー事例取材なども行う。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ:Hyper-V)を毎年受賞。岩手県花巻市在住。
主な著書・訳書
『インサイドWindows 第7版 上』(訳書、日経BP社、2018年)
『Windows Sysinternals徹底解説 改定新版』(訳書、日経BP社、2017年)
『Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版』(日経BP社、2016年)
『Windows Server 2012 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2014年)
『Windows Server 2012テクノロジ入門』(日経BP社、2012年)
『Windows Server仮想化テクノロジ入門』(日経BP社、2011年)
『Windows Server 2008 R2テクノロジ入門』(日経BP社、2009年)
など

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画面1 Windows 10ユーザーの中には、このお知らせ通知でWindows 11のニュースに初めて触れたという人もいるだろう

古いPCではWindows 11の波に乗ることはできない

 Windows 11の突然の発表は、少し前から出所のはっきりしないスクリーンショットのリークなどもあり、あまり驚きはありませんでした。Windows 10のアクションセンターにも「Windows 11近日公開」というおすすめの通知が来たので、近い将来、Windows 11が登場するというニュースはすでに広く知れ渡ったことと思います(画面1)。

 筆者がショックだったのは、Windows 11の最小システム要件の厳格化です。2コア以上の64ビットCPUで、CPUの世代が限定されることになること、そしてUEFIセキュアブートとトラステッドプラットフォームモジュール(TPM)2.0が必須になることです。Windows 10においても最新のCPUが備える仮想化機能やセキュリティ機能、セキュアブート、TPM 2.0を利用できる場合、高度なセキュリティ機能が利用可能になります。数年前、ソフトウェアでの修正が困難なCPUの脆弱性が問題になりました。Windows 11で要件を厳格化するのは、パフォーマンスと安定性、そしてセキュリティを強化するためなのでしょう。

 Windows 11のシステム要件について詳しくは、最新情報を含めて以下のサイトで確認してください。筆者が所有する複数台のノートPCとデスクトップPCのうち、Windows 11にアップグレードできるのは昨年購入したデスクトップPC1台だけです。


 Windows 11が発表されたその日、マイクロソフトは使用中のPCがWindows 11に対応しているかどうかを確認できる「PC正常性チェックアプリ」をダウンロード提供しました。このアプリはアップグレードできない理由が説明不足という声が多く、数日後に提供が停止されました(画面2)。アプリの提供は正式リリースが近くなれば再開される予定です。再開されたときに上記のサイトから入手できるはずです。

 現在利用中のPCがWindows 11にアップグレードできるかどうか気になると思いますが、今できることはありません。もしWindows 11完成前にPCの買い替えを予定しているのであれば、Windows 11対応のメーカーによるお墨付きのあるモデルを選択すればよいでしょう。

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画面2 今はもう幻となってしまった「PC正常性チェックアプリ」。確かにアップグレードできない理由が説明不足

Windows 11の“早期”プレビュービルドを公開

 マイクロソフトは発表から数日後に、Windows Insider ProgramのDevチャネル向けにWindows 11の“早期”プレビュービルドを公開しました。7月末にはBetaチャネル(旧称、Slowリング)向けにもリリースしています。出どころの確かなこのプレビュービルドのスクリーンショットや機能をブログやニュース記事でご覧になった方も多いと思います。そして、初めての“早期”プレビュービルドではCPUモデルやTPM要件が必須とされなかったことを、Windows 11のシステム要件が緩和されたと勘違いしている方もいると思います。

 Devチャネル(旧称、Fastリング)は開発サイクルの最も初期のビルドを受け取ることができるチャネルであり、粗削りな部分や安定性に欠ける部分が含まれる可能性があるものです。さらに開発が進みリリースが近くなれば、どこかの時点で厳しいシステム要件が適用されることになるでしょう。CPUの対応モデルは現在公開されているリストよりも多少拡大されるかもしれませんが、UEFIセキュアブートとTPM 2.0は必須になるはずです。

 Windows 11のプレビュービルド公開以降、IT系のニュースやユーザーのブログ記事などでWindows 11の新機能や操作方法、削除された機能、スタートメニューなどのカスタマイズ、ハードウェア制限をバイパスする方法など、さまざまな情報があふれています。「死のブルースクリーン(Blue Screen of Death)」と呼ばれるWindowsの停止エラーが黒ベースに顔文字[:(]になるといった不確かな情報もあります(日本語版にはそもそも顔文字はありませんが)。少なくとも、Devチャネルの現在のビルドは、以前と同様にプレビュービルド用の緑色です。不確かな情報に振り回されることなく、公式の最新情報だけに注目しましょう。“早期”プレビュービルドに搭載された機能についても、正式リリースまでにどうなるのか分かりません(画面3)。

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画面3 Devチャネル向けに提供された“早期”プレビュービルドのデスクトップ。現状はWindows 10の上に新しい(そして使い慣れない)スタートや新機能を乗せただけのような印象。LinuxのGUIアプリを簡単に動かせるようになった。技術的には面白いが、ほとんどのユーザーにとっては使い道がないものだ

 Windows 11について、これまでところの筆者の印象はこうです。Windows 10の将来の機能更新に向けて開発されてきたものを、2021年後半というタイミングで「Windows 11」にリブランディングし、同時に新しいモダンライフサイクルポリシーの下でWindowsの次の波(ウェーブ)を作り出したいという意図を感じました。Windows 11の現在のプレビュービルドのビルド情報に含まれるビルドブランチ「co_release」は、2021年後半のリリースに向けて開発されてきたWindows 10のコードネーム「コバルト(Cobalt)」に由来するものであり、1年ほど前の多くの記事では将来のWindows 10として紹介されてきたものです。

【次ページ】乗り換えできない企業クライアントは?

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