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  • 2021/09/03 掲載

メタバース(仮想空間)ビジネスを10分で理解、参入メリット、法的論点、事例も

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巣ごもり需要が急増する中、インターネット上に構築され、参加者同士の交流が可能な3次元の「仮想空間」の利用が浸透している。ときに「メタバース」とも称され、代表的な例では、『あつまれ どうぶつの森』が挙げられる。本稿では、経済産業省が2021年7月に発表した「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」の実施結果を取りまとめた報告書および、調査分析業務を担当したKPMGコンサルティングがメディア向けに説明した内容をもとに、今新たなトレンドとして来ている「仮想空間ビジネス」の可能性と現状の課題などをまとめた。

執筆:フリーライター 翁長 潤

執筆:フリーライター 翁長 潤

ライター。2010年、IT製品・サービスに関する情報提供を目的とするWebサイトにて医療チャンネルの立ち上げに参画し、担当記者として医療分野のIT推進の動向を取材して記事を制作。2011年、日本医療情報学会認定の医療情報技師資格を取得後、病院・診療所向け合わせて30社以上の電子カルテベンダーを取材した実績がある。医療関連システムの製品情報や導入事例、医療IT政策・市場動向に関する取材を行ってきた。

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仮想空間ビジネスの今後の可能性を知るきっかけにしてほしい
(Photo/Getty Images)

仮想空間とは? 定義と市場規模を解説

 経済産業省の「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」は、2020年12月から2021年3月にかけて実施された。仮想空間ビジネスにおける経済圏の拡大に向けた業界が抱える政治的課題を主対象とし、xRやデジタルコンテンツ領域に造詣が深い弁護士や学識者、仮想空間ビジネスを展開する事業者などの有識者へのヒアリングを行った。それらを基にビジネス展開における課題の整理やその解消に向けて実施可能な取り組みが検討された。

 同調査では、VR(Virtual Reality)/MR(Mixed Reality)、AR(Augment Reality)などを総称するxR技術の内、VRの範囲に含まれる「多人数が参加可能で、参加者がアバターを操作して自由に行動でき、他の参加者と交流できるインターネット上に構築される仮想の三次元空間」を仮想空間と定義する。一般の消費者にも有名な仮想空間といえば、『あつまれ どうぶつの森』やバーチャルSNS「cluster」を活用したバーチャルイベントなどが挙げられる。

 KPMGコンサルティング Technology Media Telecom セクター担当Managerである岩田 理史氏によると「仮想空間の活用ビジネスは今後の成長が見込まれている。そこに存在する課題を整理することは、産業推進の観点でも非常に重要になる」と述べている。

 仮想空間の市場規模について、具体的な数値は示されていない。しかし、IDC Japanが2019年に発表した「AR/VR関連の世界市場予測」では、ハードウェアとソフトウエア、関連サービスを合計した支出額は2018年の89億ドルから2019年は168.5億ドルに急伸し、2023年に1,606.5億ドル(約17兆3,000億円)に達すると予測。「仮想空間はVRに包含されるので、その市場規模は今後も拡大すると見込まれる」と岩田氏。

仮想空間の活用ビジネスに参入するメリット

 事業者が仮想空間の活用ビジネスに参入するメリットとは何か?まず、岩田氏は仮想空間を利用するメリットとして「場所・空間、人数等の物理的な制約がない」「非現実的・非日常的な体験」「他者と気軽に交流できるコミュニティ」の3点を挙げた。その上で、仮想空間を活用する目的として「新規事業」「マーケティング」「生産性向上」があると説明する。

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仮想空間のメリット・活用目的
(出典:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書」)

 また、現状における仮想空間内のビジネス活用は「仮想空間内で自社サービスを提供する」「仮想空間をプラットフォームとして提供する」の2種類に分類できるという。特に仮想空間を提供するプラットフォームの登場によって、ゲーム以外の事業者も仮想空間の活用が容易になってきたと説明。

 そこから発展したビジネス形態に位置づけられるのが「メタバース」だ。KPMGコンサルティングでは「プラットフォームとして提供された仮想空間で、医療や教育などのさまざまなサービス・コンテンツを提供できる」形態をメタバースの定義としている。

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仮想空間のビジネス分類
(出典:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書」)

仮想空間ビジネスに存在する多様なステークホルダーたち

 仮想空間のビジネス利用では、さまざまなステークホルダーが登場する。

 たとえば、消費者に直接サービスやコンテンツを提供する「サービス提供者」、サービス提供者に仮想空間を提供する「アプリケーションプラットフォーマー」(Unity)、さらにアプリケーションの開発環境を提供する「インフラプラットフォーマー」(Amazon、Google)などの仮想空間を利用する直接的なステークホルダーがいる。

 その他にも仮想空間の構築を支援する間接的なステークホルダーとしては「デバイスメーカー」、提供コンテンツの「企画者」「IPホルダー」などが存在する構造となっている。

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仮想空間プラットフォームビジネス構造と関連ステークホルダー
(出典:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書)

仮想空間ビジネスの実施時に留意すべき法的論点

 調査分析事業の報告書では、仮想空間ビジネスにおいて、各ステークホルダー間で発生する問題と法的リスクを明らかにし、その対応方針を整理。また、事業者が仮想空間ビジネスに参入する際の留意点がまとめられている。

 ここからは、仮想空間を活用したビジネス実施時に留意すべき法的論点について触れていこう。

 まず、仮想空間を活用したビジネスにおいては「仮想空間内に適用されるルールは、ステークホルダー間で締結した契約に原則基づく」ことが基本的な考えとなる。ただ、岩田氏は「契約に記載がなくても発生する債務、契約に記載されていても法律の情報が優先される強行法規が存在する」と説明。その具体例として「独占禁止法」「消費者保護法」などを挙げ、事業者が仮想空間のルールを設計する際は、これらの点を留意すべきと述べた。

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仮想空間内に適用されるルールと事業者が負う法的リスク
(出典:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書」)

 また、今回の調査事業の有識者のヒアリングを通じて、契約に基づかない又は制限が発生する債務の主要な法的論点は5つに集約した。たとえば、個人間取引プラットフォームにおける債務や仮想空間プラットフォームビジネスに適用される各業法は、既存のITビジネスでも議論されているような論点だという。

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契約に基づかない又は制限が発生する債務の主要な法的論点
(出典:「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業 報告書」)

【次ページ】仮想空間ビジネスで事業者が直面し得る「12の問題点」

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