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  • 2021/12/09 掲載

「人のOSがアップデートされた」、とあるベンチャーが完全別業態へピボットできたワケ

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「コロナ禍なので…」、この一年強、こうしたネガティブな発言はビジネスパーソンなら一度は聞いたことがあるかもしれない。しかし、コロナ禍を受けて、月商2,000~3,000万円と順調に成長していたウエディング事業から撤退、新事業に乗り出して急成長を遂げている企業がある。全国80カ所のリゾートホテルに宿泊・リモートワークできるサービスを展開しているリゾートワークスだ。同社はなぜウエディング業界からワーケーション業界に一気に舵を切ったのか。「コロナ以降のピボットは恥ずかしいことではない」と語る代表取締役CEOの高木紀和氏に話を聞いた。

執筆:編集者・ライター 鈴木俊之

執筆:編集者・ライター 鈴木俊之

1985年福島県いわき市生まれ。2012年法政大学卒業、出版社入社。月刊誌編集部を経て15年独立。ビジネス紙を中心に執筆。専門分野は起業、不動産、自動車、美容など。

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リゾートワークス 代表取締役CEOの高木紀和氏

ピボット(路線変更)はコロナ初期に即断即決

 高木氏はコロナ前、ウエディング事業を展開しており、現在はまったく別分野(ワーケーション)への進出を果たした。

 通常、ピボットには長い準備期間が想定されるが、いつピボットを決めたのか。

「2020年の4月にはすでに動き始めていました。最初の緊急事態宣言が出て解除されるまでのころですね。そのころは世間的にはまだコロナの影響がいつまで続くのか分からなかった時期です。そんな時期でしたが、私はこれから誰も体験したことがない世界に突入するのではないかとワクワクしていました」

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前職時代からワーケーションに取り組んでいた高木氏

 高木氏のいう「誰も突入したことがない世界」とは具体的にはどういうことか。

「人生に一度あるかないかの地殻変動が起きるということです。人々の行動様式が変わり、遊び方や働き方、住み方が変わる世界のことです」

 そんな地殻変動を感じる中で、ワーケーション分野に進出することに決めた理由は何か。

「働き方のOMO(Online Merges with Offline)が進むのではないかと考えました。これまでは会社に行って働く(=オフライン)がメインで、リモートワーク(オンライン)はオフラインを補完するものでした。しかし、今後はこの構造が変わっていくだろうと予測し、その変化の先に見えたのがワーケーション事業でした」

 政府がワーケーションの推進の考えを示したのは2020年7月のこと。高木氏はそれよりも早くにワーケーションビジネスに乗り出していたのだ。

 なぜここまで先見の明を持てたのか?

「これにはいくつか理由があります。一つは、コロナ前から自身でワーケーション的な働き方をしていて、よく沖縄でリモートワークをしていたこと。リゾート地はリゾート特有の豊かな時間が流れています。そこに身を置くことでリフレッシュするし、仕事も効率化されます。ただ、コロナ前は『沖縄で仕事している』と言うと遊んでいると思われそうで、こそこそとやっている部分がありました」

 それがコロナ以降、状況が変わった。

「コロナ以降は世間の雰囲気が変わり、ワーケーションが必要だと堂々と人にプレゼンができるようになりました。そのため、一気にワーケーションの魅力を広げることができたのです」

「2点目はビジネスの勝ち筋が見えたことです。これまでは働く場所で住む場所を決めなければいけなかったのですが、これからはどういった生活をしたいか、自分がどんな人でいたいかで住む場所を決める人が増えます。これは進むことはあっても、過去に戻ることはありません。コロナで人のOSがアップデートされたんです」

 「もちろんヤマを張りにいった面もある」と言うが、こうした世間の変化に対して思い切った決断をしたことが今の同社の成長を支えていることは間違いないだろう。

コロナ以降の方針転換は恥ずかしいことではない

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会社のメンバーとワーケーションすることも

 ここまで、コロナ以降の高木氏の決断力の強さを紹介する文脈になっているが、すべてのビジネスパーソンがこうした決断を下せるわけではない。

 また、仮にピボットを決めたとしても、まったく新しい事業を軌道に乗せることは簡単なことではない。新規事業は集客からプロモーションまで課題が山積する。こうした点に懸念はなかったのだろうか。

「新規事業を軌道に乗せるコツはいくつかあります。一つは、新たに進出するエリアのローカルネットワークの入口を見つけること。リゾートワークスは沖縄に本社を置いており、はじめに沖縄で開催されているアクセラレータプログラムやスタートアッププログラムに参加してつながりを作りました。そこで琉球銀行さんとご縁をいただき、事業の成長をサポートしていただくことができました」

 さらに、リクルート出身という高木氏の出自も大きな強みとなっている。

「リクルートOBは全国各地で起業していて、ネットワークがあります。リクルートの沖縄ネットワークからキーパーソンを紹介してもらうということもできました」

 頼れる人脈は、頼るというのが新規事業スタート時のポイントだ。

「さらに、リクルートネットワーク以外にも、ピボットしたことをFacebookで公表して知ってもらったり、新規事業でキーパーソンになりそうな気になる人に直接DMを送るなどして助けてくれる人と出会うように心がけていました」

 だが、一部事業家の中にはピボットすることに抵抗を持つ者も少なくない。「それまでの事業がうまくいかなかったのでは?」と人に思われることに対し、経営者としてプライドとぶつかることはなかったのだろうか。

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社員もワーケーションを積極的に実践している

「そういう人もいるかもしれませんね(笑)。が、私自身はピボットすることへの抵抗や、恥ずかしいという気持ちを持ったことはありません。そもそも、多くの人はそこまで他人に興味がないのかな、と。芸能人のスキャンダルも大体1週間で忘れますよね。ピボットも芸能人のスキャンダルと一緒です(笑)」

 高木氏は、「事業やサービスをローンチした調子がよいときだけ大々的に公表するのではなく、ピボットも抵抗を持たずに公表したほうが応援してくれる人も増え、結果的なメリットは大きい」と話す。

【次ページ】ワーケーション人口は1%。しかし…

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