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  • 2022/03/03 掲載

パナやホンダら8社で協会も発足、配送ロボットの普及本格化と今後の課題

森山和道の「ロボット」基礎講座

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海外では積極的な活用が始まっている公道を走行する自律配送ロボット。中には直接決済を組み合わせた、動く自動販売機のような活用例もある一方、配送ロボット自体の渋滞が起きている例も伝えられている。日本国内ではまだまだの段階にあるものの、業界団体「一般社団法人ロボットデリバリー協会」も立ち上がり、ルール作成や安全認証などの基準作りも本格化し始めている。だがルール作りだけでは、もともとグレーゾーンの多い公道を走行するには不十分だ。ビジネス面での課題も多い。改めて配送ロボットの今後に必要なものを考えてみよう。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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8社による「ロボットデリバリー協会」が発足

 遅ればせながら、日本国内でも屋外での配送ロボットを使った取り組みが本格化しようとしている。2月18日には「一般社団法人ロボットデリバリー協会」の立ち上げが発表された。設立年月日は2022年1月20日、発起人は川崎重工業、ZMP、TIS、ティアフォー、日本郵便、パナソニック、ホンダ、楽天グループの8社(五十音順)。参加企業は今後拡大予定とのこと。

 活動内容は、ロボットデリバリーサービスの安全基準の制定と改訂、安全基準に基づく認証などの仕組みづくり、行政機関や団体などとの連携、そして情報の収集と発信となっている。配送の担い手不足を解決するための手段として、時速6km程度の低速で公道を走行する小型の自動配送ロボットを用いることで、社会課題の解決を目指す。そのために2022年を「ロボットデリバリー元年」と位置付けて、各社が蓄積した知見を生かして、行政機関とも連携して、自動配送ロボットが公道を走行するためのルールや自主的な安全基準の制定、認証の仕組みづくりに新たに取り組んでいくという。

 配信されたリリースを見ると、発足式には各社が実験に使っている配送ロボットがズラリと並べられて登場したようだ。各社それぞれデザインも違う一方、顔のような意匠を用いてるところが多いといった共通点もある。人と共存するロボットの場合、右へ行きたいのか左へ行きたいのかといった「ロボットの意図」が外から見てわかりやすいようにするための工夫は必要不可欠である。この機会に見比べてみてもいいだろう。もちろん、ビジネスモデルや実証実験もそれぞれ違う。

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ロボットデリバリー協会が発足

5Gを活用した自動配送

 今回の協会に参加している法人を中心に、最近の試みをざっと振り返ってみよう。まず、ティアフォーや川崎重工業は、KDDI、損害保険ジャパン、小田急電鉄、ホテル小田急、公園財団と、2022年1月22日から2022年2月10日まで西新宿エリアで自動配送ロボットが5Gを活用して公道を走行し、ラストワンマイルの配送を行う実証実験を実施した。川崎重工製の自動配送ロボットにはティアフォーが開発する自動運転ソフトウエア「Autoware」が使われている。

 走行技術、運行管理技術、5Gを活用した遠隔監視システムによる見守りサービス、自動配送ロボットにおけるPPP-RTK方式の高精度位置測位サービスの有用性検証のほか、自動運転のリスクアセスメント、自動配送ロボット専用保険、災害発生時などを想定したトラブルサポートや情報配信サービスの提供などを検討し、サポートサービスの検証を行ったという。なお、ティアフォーによれば「5G を活用し、公道での遠隔監視も含めた自動配送ロボットの実証実験実施は国内初」とのこと。

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ティアフォーや川崎重工業の取り組み
(出典:川崎重工のリリースより)

ENEOSはガソリンスタンドをロボット拠点として活用

 ZMPは無人宅配ロボ「DeliRo(デリロ)」を使って日本郵便や、ENEOSと実証実験を行っている。ENEOSとは、デリバリーのシェアリングプラットフォームを運営するエニキャリとの3社で、2022年2月に佃・月島・勝どきエリアで近隣のスーパーやファミレスなどの飲食店などから自動配送ロボットによる実験を行っている。


 2021年2月に行った技術実証に継ぐ第2弾の実験で、今回は事業実証が目的とされており、人手が確保しづらいとされている夜間での検証も実施した。遠隔監視による複数事業者参加型デリバリー実証実験はこれが国内初だという。

 配送料は330円だが先着200名には一定の条件を満たせば2,000円のクーポンが配布されるかたちで運用されている。特徴は、ロボットの充電や待機に用いる拠点にはENEOSのサービスステーション(ガソリンスタンド)を用いていることだろう。月島での実験では2拠点を設けてエリアをカバーしている。ENEOSとしては2040年くらいを1つの将来として描いており、サービスステーションがロボットデリバリーの拠点となるような世界観で検証を進めているという。

 なお、近隣地域に配布されているチラシは、こちらのプレスリリースの末尾にある。これを見るとけっこう現実的で、一般ユーザーとしての実感が湧きやすい。ちなみにこれまでの実証実験の結果では、弁当のほか、ベーカリーやスイーツなどのニーズが高かったとのことだった。

パナソニックはスマートタウンで配送ノウハウを蓄積

 パナソニックは2000年11月から、神奈川県藤沢市の同社工場跡地につくられた「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」などで、住宅街向け配送サービスの実証実験を実施している。2021年3月にはアイン薬局と一緒に、オンライン診療・服薬指導と組み合わせて、処方箋医薬品を運ぶという実証実験を行った。ロボットは自社開発している「X-Area Robo」で、それを遠隔から監視しながら運用する。このほか、チルド弁当の配送などを行ったという。


【次ページ】三菱地所は屋内外の連続配送を実験

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