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  • 2022/04/20 掲載

カーボンフットプリントとは?わかりやすく図解、製品のCO2排出量「見える化」の仕組み

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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世の中にあるすべての商品・サービスは、作られてから廃棄されるまでの間に多くの温室効果ガス(GHG)を排出しています。そうした中、現在注目を集めているのが、商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算し、商品・サービスに表示する「カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products:CFP)」です。今回はこのカーボンフットプリントを解説します。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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カーボンフットプリントのイメージ
(出典:環境省, カーボンフットプリントより作成)


カーボンフットプリント(CFP)とは

 カーボンフットプリント(Carbon Footprint of Products:CFP)とは、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの間に排出される温室効果ガスをCO2に換算し、その商品・サービスに分かりやすく表示する仕組みです。

 あらゆる商品・サービスは、作られてから捨てられるまでの間で、多くの温室効果ガスを排出しています。たとえば、加工食品であれば、原材料となる家畜の飼育過程や原材料を入れる容器の製造、商品加工時の工場での水・電気・燃料の使用、商品輸送時の燃料の使用、廃棄・リサイクル時の焼却・埋立処理など、あらゆる工程で温室効果ガスが排出されています。これらの加工食品のライフサイクル(原材料調達から廃棄・リサイクルまで)で排出された温室効果ガスをCO2に換算し、商品に表示するというのがCFPです。

 このように、あらゆる商品・サービスのCO2排出量を表示することで、「どの商品がCO2排出量が多いのか、どの商品が少ないのか」が可視化され、サプライチェーンを構成する事業者が排出削減に向けた取り組みを進めやすくなります。

 また、消費者が商品・サービスを購入・使用する際に、CO2排出量を知る機会を作ることができ、消費者が低炭素な商品・サービスを選ぶような意識変革を促すことが狙いにあります。

CFPの算定方法は?

 CFPの排出量はどのように算定されているのでしょうか。CFPは、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」と呼ばれる手法がベースとなって算出されています。

 LCAとは、商品のライフサイクルにおける環境負荷を定量的に算出・評価する手法です。LCAの場合は、温室効果ガスの排出量だけでなく、資源枯渇やオゾン層破壊、騒音などあらゆる環境負荷を対象に算出されますが、CFPの場合は温室効果ガスの地球温暖化への影響のみが評価の対象となるという違いがあります。

排出量の算定方法における課題

 製品のCO2排出量の算定については配慮すべき点があります。それは、算定時にLCAで見た時の排出量は小さいものの、製造時の排出量が大きい製品については、メーカーが作りたがらなくなる可能性がある点です。たとえば、省エネ製品など、排出削減効果の高い製品の一部は、使用時の排出削減効果は高いですが、“製造時”の排出量が従来製品より大きくなることがあり、これを製造するメーカーは排出量の点で不利になってしまいます。

 こうした状況に対しては、企業に排出限度を設ける「国内排出量取引制度(キャップアンドトレード制度)」における排出枠の設定時に、製造時の排出量だけではなく“使用時の排出削減”に配慮することが必要との考えが必要になります。

 経済産業省、環境省は、使用段階での排出削減効果が高い製品を中心に、排出削減効果をLCAで評価し、バリューチェーン上で温室効果ガスの削減効果を発揮する製品・部品・素材・サービス(太陽光パネル、省エネ製品、EVなど)を製造する事業者への配慮の方法について検討を開始しています。配慮を行うことの必要性や、どのような製品が該当するのかという製品の特定の考え方、そして配慮の具体的な内容について検討を進めています。

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ライフサイクルアセスメント(LCA)で見た排出量を評価する方向へ
(出典:環境省, 国内外での排出削減に貢献する製品への配慮を元に筆者作成)

CFPが注目を集める理由とは

 カーボンニュートラルの取り組みにおいては、従来からさまざまな機会において産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えることが訴えられてきました。2021年8月にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した第6次評価報告書では、最初に「人間の活動の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化していることは疑う余地がない」と述べられています。

 また、同報告書は今後の気温上昇や異常気象などの極端な気候変化を含めた将来予測も示しています。検討されたどのCO2排出シナリオにおいても、地球の表面温度は今世紀半ばまで上昇し続けることは避けられず、2030年代の初めごろまでに産業革命前と比較して1.5℃を超える可能性があることが述べられています。

 同報告書では今後数十年で地球温暖化ガスの排出量を大幅に削減する必要があることが科学的根拠に基づき示されています。

 また、2021年11月に英国で開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求するとした合意文書を採択しています。温暖化対策の国際ルールである「パリ協定」(2015年にパリで開催されたCOP21で採択)で掲げた、「気温上昇を2.0℃よりかなり低くし、できれば1.5℃に抑える」という努力目標を、COP26では各国が目指す世界目標としてより強く位置づけることになり、この10年間で行動を加速させる必要があるとしています。

 また、1.5℃目標の実現には、世界のCO2排出量を2030年までに2010年比で45%減らし、2050年には世界の二酸化炭素排出量を実質ゼロにする必要があるとしています。

 日本でも、2020年10月に行われた第203回国会において、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」に挑戦し、脱炭素社会の実現を目指すための取り組みを進めることが宣言されています。また、日本政府は2021年4月の地球温暖化対策推進本部および米国主催の気候変動サミットにおいて、2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比46%に削減することを目指し、さらに50%に向けて挑戦を続けていくことを表明しています。


 こういった中で、気候変動の要因の1つとされる温室効果ガスの排出削減が急がれています。今、世界でさまざまな温室効果ガス削減のための取り組みが進められており、その1つがCFPなのです。

【次ページ】CFPの国内外の動向、国内企業のCFP開示の状況とは?まとめて解説

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