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  • 2025/11/04 掲載

SBIとの提携で激変…? 伸びる福島銀行の「DXなのに…対面重視の戦略」がすごい理由

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福島銀行は、2019年11月にSBIホールディングスと資本業務提携を結び、DXを活用したサービスの導入や、次世代バンキングシステムの構築など、さまざまな取り組みを推進している金融機関である。『「デジタル」のチカラで「リアル」の力を最大化』という中期経営計画の基本方針を掲げ、その実現に向けた中期経営計画を2024年4月から実行中だ。本記事では、業務提携に至った背景や現時点での成果について、福島銀行総合企画部の小野寺氏に話を聞いた。
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福島銀行の2023年度の数値目標の状況
(後ほど詳しく解説します)

福島県の現状と福島銀行の前中期計画の実績は?

 福島銀行は、福島県福島市に本店を置く第二地方銀行で、地域密着型の金融機関として、福島県内を中心に事業を展開中だ。福島県は、2011年に起こった東日本大震災による被害が特に大きかった地域である。震災後、復興に向けた動きが活発化し、国の支援のもと、産業構造も大きく変化しつつある。福島県の経済と産業の現状について、福島銀行総合企画部の小野寺氏は、こう説明する。

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福島銀行
総合企画部 部長
小野寺 好孝 氏

「東日本大震災から10数年が経過し、福島県は国を挙げた支援を受けながら、立ち直る方向で進んでいます。被災3県としてくくられることも多いですが、福島県は原発事故後の処理も大きな問題です。除染作業は継続しているものの、終わりの見えない被害が続いており、故郷に帰れない人々が依然残っています。そのような状況下ですが、復興が着実に進み、経済活動は充実してきています」(小野寺氏)

 国の支援の内容は、環境再生や生活環境の整備に加えて、新たな産業の創造、企業立地や雇用創出の支援などだ。当行も、事業者に対する本業支援・再生支援・資金繰り支援などを行っている。

「大きなメーカーではありませんが、福島県郡山市に日本大学工学部があることもあり、 医療用機器や映像関連の産業が目立っています。製造業を中心とした産業が成長しつつあるのが、福島県の現在の特徴です」(小野寺氏)

 経済は回復基調にあるものの、人手不足という課題が深刻化している。少子高齢化による人口減少に加えて、原発事故による人口流出が主要因だ。ピーク時の2000年前後から見ると、全体の2割にあたる約40万人が減少しており、2050年には30%程度の減少が見込まれている。

「人口減少は福島県にとっても大きな問題として捉えており、歯止めをかける対策として『福島県人口ビジョン』を掲げ、県全体で取り組んでいます。人口減少と合わせて、中小企業や零細企業の後継者不足という課題もかなり深刻です。約45%の企業が後継者不在の課題に直面しており、我々も銀行としてどのようにサポートすべきかを考え、多様な施策に取り組んでいます」(小野寺氏)

 福島県を取り巻く環境は厳しい状況が続いているが、当行ではDX戦略の中にある次世代バンキングシステムの活用によって経営体制の強化を図っており、その成果が着実に現れてきた。中期経営計画の現状について、小野寺氏はこう説明する。

「『ふくぎん福島創生プロジェクト』を掲げて、中期経営計画を実行し、2023年度までの時点で、本業収益(目標10億円に対し実績16億円)、OHR(経費率:目標4%改善に対し実績7.88%改善)、事業性融資先数(目標6000先に対し6071先)という3つの数値目標は達成できたと自負しています。2024年度からは5カ年計画の新中期経営計画を進めているところです」(小野寺氏)

次世代バンキングシステムが福島銀行に“もたらしたもの”

 中期経営計画は3年が一般的だが、当行が5年としたのは、次世代バンキングシステムの運用開始という大きな柱があったからだという。システム導入に1年、体制整備に1年、お客さまサービスの充実および収益力向上に3年という期間を設けたのだ。

「2024年7月に新バンキングシステムの運用を開始しました。抜本的なシステムの入れ替えとなったため、2024年度は新システムの安定稼働に注力し、2025年度はそのシステムに合わせて、組織体制の見直しを行っているところです。その一環として、2025年4月からエリア営業体制を開始しました。従来の40店舗体制から、各地域を12のエリアに分け、エリア内で業務を行う体制を整えています」(小野寺氏)

 新たなバンキングシステムの導入は、単なる技術的な進化だけでなく、組織体制の見直しをもたらしたのである。エリア営業体制を導入して人的資本を再配置することによって、運営の効率化とともに、顧客とのリアルでの接点増加、専門的・継続的なサポートの充実を目指している。

「現在は体制変革の過渡期であり、助走段階と位置付けています。そのため、効果が明確に現れるのは2026年度からとの予測を立てています。具体的な数字としては、2028年度にかけて、本業収益で20億円、純利益13億円という目標に掲げて計画を進めている状況です」(小野寺氏)

 福島銀行が掲げているのは、「『デジタル』のチカラで『リアル』の力を最大化」という中期経営計画の基本方針である。地域の課題解決に向けて、どのようなサポートを行っているのだろうか。

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「デジタル」のチカラで「リアル」の力を最大化
(出典:福島銀行)

「人手不足、後継者不足といった課題に対して、いかに支援していくのかを考えた場合、人的な部分だけでの解決は難しいところがあります。デジタルを活用して、業務の効率化を図り、対面営業に人員を投入して対応するというのが、我々の基本的な考え方です。現在、対面営業を充実させるための人材開発にも取り組んでいます」(小野寺氏) 【次ページ】実は珍しい? 福島銀行がSBIとの提携を決めた“2つの理由”
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