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  • 2019/10/11 掲載

「銀行員は今すぐ辞めたほうがいい」と言える、これだけの理由

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ビジネスモデルの崩壊によって銀行の9割、銀行員の99%は「消える」と記した『もう銀行はいらない』。著者の上念 司氏は、銀行に務める「個」についてもスポットをあて、「今すぐ、それも若いうちに辞めるべき」と提言する。銀行員のスキルがなぜ「何の役にも立たない」のか。上念氏に聞いた。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:井上健語

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:井上健語

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経済評論家 上念 司 氏


学生の就職ランキングほど「逆神」的なものはない

 『もう銀行はいらない』では、銀行に勤める行員も99%消えると書きました。しかし、学生の就職人気ランキングを見ても、銀行の人気は意外と衰えていません。

 私は学生の就職先の人気ランキングほど逆神的なものはないと思っています。私が入行したのは1993年で、すでにバブル経済は崩壊していたにもかかわらず、当時も銀行の人気は高かったです。

 今の私なら、就職するに際して、その会社の過去5年分の決算書は絶対見ます。現在は、ネットを通じて決算書類やIR情報を入手することは容易ですし、それを読み解くための知識も得られます。

 しかし、当時はそうしたものを取り寄せることは大変で、結局、周囲の評判を聞いたり、「やりがい」「働きがい」といった漠然としたものしか頼りにできませんでした。我ながら恐ろしい就職活動をしていたなと思います。

 そもそも、貸借対照表と損益計算書を過去5年分、連結決算でチェックする前に、その業界自体が衰退基調にあるのであれば、候補から外すような判断をしてほしいです。石炭産業自体が衰退しているのに、その業界のトップに行っても意味ないです。個の力だけでは業界を変えることも難しいですから。

 銀行員のキャリアについて考えるとき、結局、銀行でしか身に付かないスキルとは何なのかということに思い至ります。

 私は日本長期信用銀行に在籍していた当時、それをほとんど見つけられませんでした。あえていうなら──、これは冗談みたいな話ですが、今ではコンプライアンスでNGのマネーロンダリングまがいの行為を学びました。

 他人から預かった他行の金融債を償還して、現金で持ち帰ることは、まだコンプライアンスの緩かった当時はとがめられることがなかったんですね。

 たとえば、長銀新宿支店の窓口に興銀のワリコーを持ち込んだお客さまがいたとします。「これを興銀で償還して現金持って帰ってきてくれたら、ワリチョーに乗り換えます」といわれたら、私が呼ばれるんです。「上念君、これ償還をお願いします」とワリコーの5000万円券を渡されるんです。

 そして、私は新宿駅西口にある興銀の支店に行きます。5,000万円のワリコーを出して「これは私のものです。現金で償還お願いします。」とやるわけですよ。他人から預かった金融債を現金化するなんて、今なら完全にアウトです。23、4歳くらいの若者が5,000万円の金融債を持ち込むなんて、見るからに不自然ですから。

 でも当時は大丈夫でした。そうやって償還した現金を長銀に持ち帰って、出納に「入金をお願いします」と渡すと、5,000万円のワリコーが、当時は3%くらいの金利がついたので、150万円のキャッシュと5,000万円のワリチョーに変わるわけです。しかも、持ち込んだ人は銀行の監視カメラにも映らず、ワリコーからワリチョーに乗り換えて見事に資金洗浄に成功です。銀行で身についたスキルといえば、私の場合はその程度のものです。


銀行員のスキルがなぜ「何の役にも立たない」のか

 では、すでに銀行に在籍している人はどうしたらいいのか? 銀行員のスキルなんて、外では何の役にも立ちません。他行に転職するならまだしも、他の業界や、新興系のスタートアップなどに転職すると、緊張感という点で、1つも2つもギアが下にある感じがしますね。

 縄文アソシエイツという人材派遣会社の創業者である古田英明さんが昔面白いことを言ってました。「私はキャッシュフローが読めますといって転職してくる人がいるが、あれは腹立たしい」という話です。

 キャッシュフローというのは、見なければ会社が潰れてしまう状況で初めて見れるようになるものなんです。机上の勉強で分かるわけがない。実際に経営者としてお金の流れを見ている人が「キャッシュフローが読める人」だということですね。

 銀行に務めていて、自分ごととして、キャッシュフローを見てないと会社が潰れるといった経験をしたという行員なんていないでしょう?

 キャッシュフローというのは難しくて、会社が儲かっていても潰れることはあるんです。たとえば、節税目的で加入した保険の保険料を払うためのキャッシュが足りなくて経営が行き詰まるなんて、笑えない話もあるのです。

 銀行では基本的に、そういう緊張感で仕事していないですよ。銀行員は「絶対、自分たちの銀行はつぶれない」と思って勤めているわけですから。

銀行員で唯一役立つのが「殴られ役」

 あえて他分野で通用するスキルだといえるのが、いわゆる金融庁などの検査業務に対応するスキルです。特に、これから金融庁などの役所と付き合っていかなければならない新興企業などでは、こうしたスキルを生かせる余地があります。

 役所との交渉業務などは、創業者は絶対やりたがらないですから、いわゆる「殴られ役」として、粘り強く交渉する担当者は一定のニーズがあるでしょう。

 あるいは、交渉や折衝だけでなく、検査業務にあわせて発生する検査マニュアル作成や業務フローの点検、見直しといった実務なども、営業店で検査の実務に実際に携わった人でないと分からないことが多い。

 ですから、監督官庁との窓口役として、検査業務に強い人というのはスキルとして一定のニーズがあると思います。営業店での検査対応とかマネーロンダリング、金融犯罪防止といったコンプライアンス系に強い人材、加えて、FATF(Financial Action Task Force:マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)などのグローバルの動向にも詳しい人であれば、即戦力でしょう。

 新たな領域で金融サービスを提供しようと考える新興企業であっても、監督官庁との付き合いは必須ですから、そこの部分に銀行員としてのスキルが生かせる可能性がある。

 逆に言うと、それくらいしか「使える」スキルというのは思いつかないです。

【次ページ】今は変革に至る「過渡期」、時機を逃さないために何をすべきか

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