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  • 2020/05/07 掲載

コロナ禍でさらなる変革を迫られる銀行、“デジタルバンク化”成功事例の共通点とは

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海外の主要銀行は現在、どのようにしてデジタルバンクへの道筋を歩もうとしているのか。金融テクノロジーやフィンテック分野の著作や論評活動で世界的に広く知られるクリス・スキナー氏が語るデジタルの取り組みがうまく行っている金融機関の共通点とは。コロナ禍が迫る、金融機関に迫るさらなる変革を、どのように推進すればいいのだろうか。

執筆:フリーライター 吉村 哲樹

執筆:フリーライター 吉村 哲樹

システムインテグレーター(SIer)とパッケージソフトウェアベンダーでエンジニアとして働いた後、IT系Webメディアで編集記者を務める。現在は独立して、フリーライターとして活動中。

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金融機関はコロナ禍でさらなる変革を迫られている
(Photo/Getty Images)
※本記事は、FINOLABが2020年3月に開催したイベント「『4F(Future Frontier Fes by FINOLAB)』2020~REBOOT」における「4F Keynote Presentation: Doing Digital」の講演内容をもとに再構成したものです。



デジタルバンクへの進化に必要な4つの取り組み

 現在、新興フィンテック企業が金融の世界で急速に台頭しつつあり、従来型の金融機関の存在感を脅かすほどの存在感を放っている。こうした状況を見て「銀行は近く消滅する運命にある」と主張する人もいるが、スキナー氏は「こうした見方は早計だ」と述べる。

「確かに銀行は現在、テクノロジーを武器に急成長するフィンテック企業からの挑戦を受けていますが、絶滅させられるようなことはないでしょう。銀行は今やフィンテック企業に対抗するというよりは、互いに連携やコラボレーションを図ることで自らもデジタルバンクへと脱皮しようと試みています」(スキナー氏)

 では世界の主要銀行は現在、どのようにしてデジタルバンクへの道筋を歩もうとしているのか。スキナー氏は過去数年間に渡って著書執筆のための取材で、デジタルの取り組みがうまく行っている銀行のキーマンに直接会い、インタビューを重ねてきた。

 この内容から同氏は、銀行のデジタライゼーションに役立つ「30の教訓」を導き出したという。それらは大きく分けると「WHAT TO DO?(何をするべきか)」「HOW TO DO IT?(いかにやるべきか)」「DO IT!(実行する)」「DO IT BETTER……FOREVER!(永遠に、より良くやっていく)」の4つのフェイズに分類できると同氏は説明する。

「これら4つは一見しただけではどれも簡単そうに見えますが、実際に銀行組織でこれらを実行するとなると個々のフェイズの実行だけで恐らく数年間を要し、4つのフェイズすべてを完了するのに10年程度を要するかもしれません。銀行がデジタルバンクへと進化を遂げるためには、10年サイクルの長期に渡る変革に取り組む覚悟が必要なのです」(スキナー氏)

デジタル化を加速したい金融機関がまず何をすべきか

 銀行がデジタルバンクへの第一歩を踏み出すには、まず「何をすべきか」を明確化する必要がある。では一体どうすれば、自分たちがなすべきことを明確化できるのか。興味深いことに、スキナー氏がインタビューした先進的な銀行のキーマンたちは皆、まずは自分たちが最も尊敬するデジタルリーダーに直接会いに行き、そこで聞いた話を基に自分たちが何を変えるべきかを見極めるところから始めたという。

 具体的にテスラ(Tesla)やネットフリックス(Netflix)、スポティファイ(Spotify)、中国平安保険(Ping An)、バイドゥ(Baidu)、アリババ(Alibaba)といった先進デジタル企業のリーダーたちに会いに行き、ビジネス戦略や組織戦略、人材面での施策について直接話を聞く。そして、これらの企業の戦略や施策をベンチマークにしながら、自社の戦略や事情に合わせて自分たちがやるべきことを明確化していく。

 ほとんどの場合、こうした先進デジタル企業の組織やカルチャーは、従来型の銀行とはまったく異なる。一例を挙げれば、アマゾン(Amazon)では1つのチームの適正な規模を測るために「Two Pizza Team」という基準を設けている。チーム全員で一緒にランチを取る際、ピザ2枚で足りないようであれば、「そのチームの人数は多すぎる」というわけだ。このように数多くの小規模チームが横並びでフラットに存在する組織形態は、巨大なピラミッド型の組織を長らく運営してきた銀行と比べると極めて対照的だ。

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「チーム全員でランチを取る際ピザ2枚で足りないようであれば人数が多すぎる」
(出典: FINOLAB CHANNEL掲載資料)

 このような異文化を積極的に社内に取り込んでいるとある銀行では、何らかの意思決定をする際に必ず「ジェフ(Amazon共同創設者のジェフ・ベゾス)ならどうするだろう?」と問うようにしているのだという。このように何らか新たな決断を迫られたときには、「こんなとき、Amazonならどうするだろう」「Alibabaならば?」と問うことで、デジタルリーダーをベンチマークにしながら正しい道を選択できるようになるという。

金融機関のDX推進は「いかにやるべきか」

 何をするべきかがはっきりしたら、次はそれをどんな方法で実行に移すかを検討する必要がある。その際に大事にすべきポイントとして、スキナー氏は「変革のマインドをいかに組織に内面化して取り込むか」という点を挙げる。

「まずは、従業員が変革に向けて情熱を持って取り組めるよう、何らかの仕掛けを講じる必要があります。私がインタビューした銀行ではほぼ例外なく、CEOと会長が率先して社内に対して『これからの時代は、今までのやり方では通用しない。違ったやり方が必要だ』ということを繰り返しアナウンスしていました」(スキナー氏)

 ただし、単に「変わらなければならない!」と連呼するだけでは、従業員を不安に陥れるだけだ。従業員に変化の意識を喚起すると同時に、「何を目指して変わっていくのか?」「どのように取り組むのか」という将来のビジョンを提示することが重要だという。

【次ページ】デジタルバンクへの進化に必要な4つの取り組み、残り2つ

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