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  • 2020/11/26

資金調達手法「グラント」とは? “ディープテック”領域で採用が増えているワケ

「Software is eating the world」。世界的に著名な投資ファンドのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz:a16z)による言葉だ。文字通り、ソフトウェアそしてインターネットがあらゆるものを侵食する世界において、もはや国境は消滅しつつある。今後は特定の国に閉じたサービスは成長に限界がくると予想され、嫌でもグローバル化を意識しなければならなくなるだろう。そこで重要になるのが資金調達だ。本稿では、テクノロジー先進国で主流になりつつある新たな資金調達手法「グラント(Grant)」について解説する。なお、筆者は一般的な株式による調達に加え、この手法を使って海外からの調達を実施している。机上の空論ではなく、実体験に基づいた考察を述べていきたい。

techtec 代表取締役 田上 智裕

techtec 代表取締役 田上 智裕

株式会社techtec 代表取締役t。チームラボでのアプリ開発やリクルートホールディングスでの全社ブロックチェーンR&Dを経験後、2018年に株式会社techtecを創業。内閣官房「ブロックチェーンに関する関係府省庁連絡会議」、内閣官房・新経済連盟共催「ブロックチェーンに関する官民推進会合」のオブザーバー。

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資金調達手法「グラント」とは何か?
(Photo/Getty Images)

グラントとは何か?

 グラントとは、日本語に置き換えると「競争的資金」「助成金」に相当する言葉であり、海外では、テクノロジー系の研究開発の文脈で利用されている資金調達方法だが、海外では企業にとっても一般的な資金調達手法である。

 グラントはOSS(オープンソース)の文化、つまり、オープンソースのプロダクトを開発・保守することで社会にITの力を還元し、その活動をキャリアとしても認めるようなカルチャーを背景に誕生した。OSSのプロジェクトをいかに収益化したりスケールするかというところで生まれた資金調達方法である。

 OSS発なので、研究者も企業もあまり関係なく、プロジェクトに手を挙げて承認された人が資金を調達できるのだ。調達可能金額は日本円で100万円超~1億円超とプロジェクトごとにかなり幅がある。

 グラントの特徴は、株式による調達と違って議決権に影響を与えない点だ。会社法の枠組みによる「資金調達」からは外れ、法律の影響を受けることもないため、資金を調達する際にスムーズな意思決定が可能になる。しかしながら、日本企業の多くは国内を主戦場としておりOSSの文化もあまり根付いておらず知名度が低いため、海外からのグラントによる資金調達事例はほとんど生まれていない。

グラントの進め方

 グラントは、基本的には公募制である。フォームに申し込み後、書類審査が行われ、通過したら資金提供元とWeb面談が実施されるというのが通常のスキームだ。

 そして、グラントを使って資金調達する場合、基本的に資金を提供する側と受け取る側とでマイルストーンを設定するのが普通だ。このマイルストーンに従って一定の資金が支払われる仕組みである。資金の提供側は、「自社のサービスを使って何かプロダクトを開発すること」といった内容をマイルストーンに設定する。

 このようにして、提供側の事業を拡大させることにつなげる算段だ。OSSの文脈から誕生したのもうなずけるだろう。

 なお、先述の通り議決権に影響を与えないため、グラントの提供側は基本的に企業やプロジェクトに限られる。金銭リターンを求める独立系ファンドは、IPOやM&Aといった出口戦略を必要とするためグラントの手法は使えないと言える。

グラントが流行る背景、資金調達の現状と課題

 大企業の新規事業でもない限り、何か新しい事業を立ち上げ拡大させていくには外部からの資金が必要だ。これはどんな事業にも共通のことで、最近は資金調達に関する報道も多い。

 株式会社の場合、株式や融資による調達が一般的であり、非営利団体の場合は寄付による調達も考えられる。以下ではまず昨今の資金調達における課題について触れていく。なお、ここでは立場を株式会社に限定し、海外からの資金調達手法「グラント」との比較観点で言及していく。

●着金まで時間がかかる
 外部から資金を調達する場合、金額が大きくなるほど着金までの時間も長くなる。これは、どの手法を使っても同じといえるだろう。 特に、「ディープテック」と呼ばれる最先端テクノロジーを扱う専門性の高い領域の場合、前提となる投資家への説明コストが高く、本質的な話に入るまでに更に時間がかかってしまう。

 おおよその目安として、シード期の調達で着金までに数カ月~半年、シリーズA以降で半年~1年以上といった期間が必要になってくる。そのため、経営陣は常に資金調達の必要性に迫られる状態にあるのだ。

 これは、創業期のベンチャー企業において非常に大きな問題だと言える。数人しかメンバーがいない状態で経営陣が常に資金調達に追われていては、プロダクト開発に注力できないからだ。

 グラントの場合、この「説明コスト」をかける必要がない点で時間短縮が可能である。

●当局への届け出など膨大な事務作業が発生する
 資金調達に時間がかかる原因の1つは、「膨大な事務作業が発生する」ことだ。資金調達に際しては、投資契約書や登記申請書、定款の変更、割当通知書といった膨大な量の書類を作成しなければならない。

 そしてそのほとんどに印鑑が必要であり、ステークホルダーが増えるほどに時間も費用も多分にかかってしまう。実際に経験した身としては、「無駄」と感じてしまう類の作業だ。なお、昨今の行政改革の流れの中で印鑑の廃止が進んでいるが、これは資金調達プロセスにおいても非常に前向きな効果を発揮することが期待できるだろう。

 グラントの場合、この事務作業と提出書類の数が相対的に少ない。ただし、英語での書類提出が必要だ。

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次ページで資金調達方法ごとのメリット/デメリットを解説

【次ページ】「グラント」のメリットとデメリットを解説

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