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  • 2022/08/24 掲載

なぜ百五銀行の「デジタル研修」は予想の7倍の参加人数を達成できたのか

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市場環境のデジタルニーズの拡大に伴い、銀行員のデジタルリテラシー向上の必要性が高まっている。三重県の地方銀行である百五銀行は、全行員のデジタル化への意識と知識の向上を目指して、2021年度より「デジタルリテラシー向上研修」を始めた。同研修は一般的なデジタル研修と大きく異なり、ノーコードによるアプリ開発まで踏み込んでいる。一般的な研修では、研修後日常生活に戻ると意識はすぐに戻ってしまうことが多い。一方で百五銀行は研修内容の充実度はさることながら、一部任意参加にもかかわらず高い参加率と全行員の意識の変化を達成できた。ではその成功の秘訣とはいったい何なのだろうか。百五銀行人事部 人材開発課 課長の若林夏樹氏、経営企画部 IT戦略課 課長の諸岡仁司氏に話を聞いた。

解説:百五銀行 人事部 人材開発課 課長 若林夏樹、経営企画部 IT戦略課 課長 諸岡仁司

解説:百五銀行 人事部 人材開発課 課長 若林夏樹、経営企画部 IT戦略課 課長 諸岡仁司

画像
百五銀行全体のDXの意識改革
(後ほど詳しく解説します)

「デジタル&コンサルティングバンク」ビジョンを踏まえた研修計画

 百五銀行は、三重県でトップシェアの銀行として圧倒的な存在感を誇るトップクラスの地方銀行である。同行が2021年度からスタートした「デジタルリテラシー向上研修」は、その名前のとおり、行員のデジタルリテラシーの向上を目的として行われている研修である。3部構成で、パート1は「eラーニング」、パート2は「ノーコード/ローコードでのアプリ開発」、パート3は「オリジナルアプリの考案・開発」という内容になっている。

 同研修を立ち上げるきっかけは、百五銀行の前・中期経営計画で提示された『デジタル&コンサルティングバンク』というビジョンだった。これはデジタルとコンサルティングを経営の2本柱に据えていく方針を示したものと言えるだろう。百五銀行人事部人材開発課課長の若林夏樹氏は次のように説明する。

photo
百五銀行
人事部人材開発課課長
若林夏樹氏
「私たちがお客さまと接する中で感じていたのは、デジタル化に対するお客さまのニーズが大きいということでした。たとえば、お客さまとの接点が店頭およびATMに偏ったままだとそれだけ不便を強いることになるでしょう。お客さまのニーズに応え続けるためにはどんな人材が必要なのか、地方銀行としてどうデジタル化と向き合うべきなのか、『デジタル&コンサルティングバンク』というビジョンを踏まえながら議論を始めたことが、デジタルリテラシー向上研修につながりました」(若林氏)

 しかしすぐにデジタルリテラシー向上研修の構想が固まったわけではない。

「デジタル化を進めなければいけないという意識はあるけれど、具体的に『何をどうすべきなのか?』『どのような人材を育てるべきなのか?』という問いに対して、明確かつ簡潔に一言で答えることが難しいという課題がありました。おそらくこの課題は私たちだけではなく、多くの地方銀行に共通するものなのではないかと考えています」(若林氏)

 抽象的な課題を具体的で実行可能な計画へと落とし込んでいくのは、簡単な作業ではない。2020年の段階でまず出てきたのが、階層別の人材構想だった。

「当初は階層別に切り分けて考えていました。経営陣に求められる人材、中間管理職に求められる人材、一般層に求められる人材、若手に求められる人材というように、階層別にイメージしつつ、同時に銀行全体のデジタルリテラシーも向上させていくという構想でした。しかし、デジタルに長けた人材という共通項はありましたが、まだまだ具体的ではありませんでした。」(若林氏)

全行員が自発的に参加する研修のために重ねた試行錯誤

 階層別のイメージを経て、新たに設定されたのは4つの出口というイメージだ。1つ目は「ICTのコンサルティングをお客さまに提案できる人材」、2つ目は「アプリの開発・支援の人材」、3つ目は「システム開発の人材」、4つ目は「データ利活用をできる人材」である。この4つの出口は、百五銀行の今後の経営戦略とも密接に結びついているものといえるだろう。

「人材開発という観点では、必要とされる専門的な人材を各部署で育成していくことが出口につながっていくと考えています。研修は、4つの出口への橋渡しといったイメージです。その出口に向かう前の段階で、まず行員全員のデジタルリテラシーの底上げをしたいという思いがありました」(若林氏)

 デジタルリテラシー向上研修のパート1のeラーニングは、役員から新入行員まで全員参加の研修として設計されている。しかし、ただ強制的に参加させるだけの研修では意味がない。全員が自発的に参加できる内容にするために、さまざまな試行錯誤を重ねたと若林氏は語る。

「自発的な参加ということで最初に思い浮かんだのは、『お子さま向けのプログラム開発』のようなものでした。ゲーム感覚で体験しながら学べるイメージです。実際にいくつか考えたのですが、ゲームと銀行が求めるものとが結びつかないと感じました。こうした中、他の業務で関わりのあった、クラウド型学習システムの構築支援サービスを行っているFIXER様から『ビデオ視聴での学習』『アプリ開発』というアイデアをいただき、これをベースにしたデジタルリテラシー向上研修がスタートしました」(若林氏)

 こうしてFIXER社とコラボレーションすることにより、デジタルリテラシー向上研修の構想が固まった。

「FIXER様から『銀行の業務との関連性の高い動画を作成できます』『業務に結びつくアプリ開発ができます』という2つの提案をいただいたことが大きかったですね。私たちが目指していた、『体験できる』『銀行の業務と結びついている』という条件とも合致しました」(若林氏)

【次ページ】デジタルリテラシー向上研修が大きな成果を上げられた理由は?“自分事”にすることがカギ

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