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  • 2022/12/09 掲載

ストルターマン教授x荒瀬氏:日本が「デジタル後進国」抜け出す、たった一つの方法

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デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を世界で初めて提唱したインディアナ大学のエリック・ストルターマン教授が、世界全体でDXへの警鐘を鳴らした前編。これに対して、日本はさらに深刻な状況だ。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が9月に発表した「世界デジタル競争力ランキング(2022年)」によれば、ランキングの対象となった63カ国・地域のうち、日本は29位と2017年の調査以来、過去最低となった。DXへの取り組みで、日本企業の取り組み現場を見てきたデジタルトランスフォーメーション研究所の荒瀬光宏代表も危機感をあらわにする。DXの危機を聞いた前編に続き、後編の今回は、ストルターマン教授と荒瀬氏に、日本企業が抱える課題と、その解決策について提言してもらった。

構成:ビジネス+IT 編集部 松尾慎司

構成:ビジネス+IT 編集部 松尾慎司

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インディアナ大学 副学部長 エリック・ストルターマン氏

デジタル後進国となった最大の理由

──前回、ストルターマン教授のお話の中で、多くの企業が「真のDX」を理解しておらず、正しく実装できていないという指摘がありました。荒瀬さんは日本企業の最大の課題とは一体、何だと思いますか。

荒瀬光宏氏(以下、荒瀬氏):私もエリックの見解と同じく、日本企業の8割は、「言葉だけ」のデジタルトランスフォーメーション(DX)に終わっているというのが実感です。実際、9月に発表されたIMDの世界デジタル競争力ランキングを見ると、日本は2021年に比べ、さらに順位を下げて29位へと落ち込んでいます。

 かつて、日本は「Japan as No.1」とまで謳われるほどの経済大国でした。にもかかわらず、先進国の中でも最低のデジタル貧国に陥っている現状を見ると、子どもたちや孫たち世代の将来が非常に案じられます。

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デジタルトランスフォーメーション研究所 代表取締役 DXエバンジェリスト 荒瀬 光宏氏

──荒瀬さんは、日本のデジタル化が進まない理由をどう見ていますか。

荒瀬氏:このランキングの中で、日本が特に評価が低かった指標は、大きく分けて3つあります。1つ目は、国民1人ひとりのデジタルスキルが低いこと。2つ目は、法規制が厳しくて、新しいビジネスや技術が生まれにくいこと。そして3つ目が、変化についていく企業の動きが鈍いことです。

 特に日本企業の変化が遅い点について、私はその根本的原因を「経営者の高齢化」だと見ています。東京商工リサーチの調査 によると、日本の社長の平均年齢は62.77歳でした(2021年12月時点)。対して少し古い調査ですが、PwCによれば、世界の新任CEOは53歳だそうです。日本の社長の年齢は世界的に見てもかなり高いほうだと思います。

 またIMDの調査では、次のようにも指摘しています。
「2021年の社長の年齢分布は、70代以上の構成比が32.7%(前年31.8%)で、2019年以降、3年連続で構成比が最も高かった」

「社長の高齢化に伴い、業績悪化が進む傾向がみられる。直近決算で減収企業は、60代で57.6%、70代以上で56.8%だった。また、赤字企業も70代以上が24.0%で最も高く、60代も23.2%だった」

「高齢の社長は、一般的に進取の取り組みが弱く、成功体験に捉われやすい。また、長期ビジョンを描きにくく、設備投資や経営改善に消極的になる傾向がある。この結果、事業承継や後継者育成も遅れ、事業発展の芽を自ら失うケースも少なくない」
 つまり、日本にはデジタルネイティブではない、アナログネイティブの経営者が多いということです。

 もちろん、すべての高齢の経営者に当てはまるというわけではありませんが、こうした世代間ギャップが日本のデジタルトランスフォーメーションを阻んでいる恐れがあります。

 経営者自身が市場競争の原理が変わってきていることに気付かなくては、日本全体が変わることは難しいでしょう。だから経営者やリーダーの方には、もっとデジタルに興味を持っていただいて、デジタル思考の経営戦略やビジネスモデルについて学んでいただきたいと願っています。

経営者が変わらなければ、日本のデジタル化は進まない

──高齢化が進む日本企業に、意識改革が必要ということは分かりました。しかし、どうしてこれからの経営にデジタル思考が求められるのでしょうか。

荒瀬氏:デジタルの世界では他社を模倣することは、アナログ世界に比べてずっと楽になったからです。どんなに優れたプロダクトを作ってもすぐに真似されてしまうので、競争力を維持することがますます厳しくなっています。

 模倣を防ぐ唯一の方法は、顧客のエンゲージメントを高めることしかありません。顧客体験の満足度を高めることができれば、たとえ競合があらわれたとしても、顧客は自分たちのサービスを選んでくれるでしょう。顧客が離れたくないと思うほど、選ばれるために最適なサービス設計をする必要があります。

エリック・ストルターマン氏(以下、ストルターマン氏):デジタル社会では、どの企業も多かれ少なかれ同じ機能を提供できます。このため、どこでも激しい競争が繰り返されていて、優れたユーザーエクスペリエンス(顧客体験)がなければ、事業はすぐに立ち行かなくなるでしょう。ユーザーエクスペリエンスの重要性は、いくら強調してもよいくらいです。

【次ページ】デジタルはもはやビジネスパーソンの「教養」だ

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