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  • 2024/02/01 掲載

PEファンドとは何か?なぜ「年収1億円」「コンサルの次のキャリア」なのか

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主に非公開企業に投資する投資ファンド「PEファンド」への注目が集まっている。コンサル、外資金融、商社など、一流のプロフェッショナル人材は昨今、最終的に「PEファンド」を目指す動きをとっているという。PEファンドは特にコンサルとよく比較されるが、業務は似ている一方、その収益源が大きく異なる。本記事ではあまり知られていないPEファンドの業務に加えて、破格の報酬が得られる仕組みについてわかりやすく解説する。

執筆:アンテロープキャリアコンサルティング 代表取締役 小倉 基弘、取締役 山本 恵亮

執筆:アンテロープキャリアコンサルティング 代表取締役 小倉 基弘、取締役 山本 恵亮

小倉基弘(おぐら・もとひろ)
アンテロープキャリアコンサルティング 代表取締役。
上智大学法学部卒。日興證券(現SMBC日興証券)を経て1990年、建築関連のビジネスを起業。約7年のベンチャー経営後、プロフェッショナルのキャリアデザインに関連するビジネス創造を目指して、人材エージェントにてコンサルタントを4年間経験。2002年、「野心と向上心を持ったプロフェッショナル」に対してチャレンジングな機会提供を行う目的でアンテロープキャリアコンサルティングを設立。同社は投資銀行、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アセットマネジメント、不動産ファンドおよびコンサルティングファームのフロント人材の長期的なキャリアデザインを支援している。2007年、アンテロープの共同創業者・増井慎二郎氏とオープンワーク(旧ヴォーカーズ)設立にも関わる。

山本恵亮(やまもと・けいすけ)
アンテロープキャリアコンサルティング 取締役。
同志社大学商学部卒。大手人材サービスにて金融とテクノロジー業界を担当後、渡米。在米のコンサルティング会社で、人事採用支援、人事コンサルティング、そして新規事業であるBPO事業の立ち上げを事業開発マネージャーとして推進し、北米での事業拡大に貢献。2004年4月アンテロープ参画。翌年同社取締役。PEファンド、ベンチャーキャピタル、エンゲージメントファンドなどのフロント人材、ファンド投資先企業の経営人材ポジションなどを中心に、コンサルティングファームや投資銀行なども含め、プロフェッショナル人材の転職支援、人材紹介を行っている。組織立ち上げ期におけるコアメンバー採用の支援も強み。1級キャリアコンサルティング技能士。

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PEファンドとは何者なのか?
(Photo/Shutterstock.com)
※本記事は『コンサルが「次に目指す」PEファンドの世界』を再構成したものです。

PEファンドとは何か?

 最初にそもそもPEファンドとは何なのか、まずはその定義から見ていきましょう。

 PEとはプライベートエクイティ(Private Equity)の略で、未公開株式を意味します。PEファンド(プライベートエクイティファンド)は未公開(非上場)企業の株式に投資するか、もしくは上場企業を非公開化する投資を行います。そして、投資先企業が企業価値向上を果たした後に売却(エグジット)し、売却益(キャピタルゲイン)を得ることを目的としています。

 PEファンドは未公開株に投資しているところから、広義のPEファンドにはベンチャーキャピタルとバイアウトファンドが含まれることになります。

 ベンチャーキャピタルは、いわゆるスタートアップと呼ばれる創業期から急成長期の企業に対して、経営権は取らない数%レベルにとどまるマイノリティ投資の資金提供を行うファンドです。

 バイアウトファンドは、既存の企業の株式の過半数(51%以上)を取得して、マジョリティを取る。すなわち、経営権を獲得するファンドです。ここでは、未公開株への投資ファンドを狭義の「PEファンド(バイアウトファンド)」と位置付けます。

 なお、ベンチャーキャピタルの場合、創業者が上場後のキャピタルゲインを狙っているところもあるため、ファンドが株式の過半数を押さえて経営権を取るようなことは一般的にはありません。スタートアップに対するベンチャーキャピタルの出資は、5%から多くても10%程度というのが通常です。これがベンチャーキャピタルとバイアウトファンドの大きな違いです。

物量よりもクオリティ

 PEファンドの仕事は、やりがいも大変さも普通の仕事の何倍にも上るといわれます。しかし、それは勤務時間や仕事量といった「物量」の感覚ではなく、複雑さや成し遂げるべき「クオリティ」が何倍にもなるという感覚です。

 PEプロフェッショナルは、株主の立場に立ち、かつ投資先企業の経営陣と議論してトップの視点からいかに企業価値を上げるかを決めていく役割です。このため、自分の労働力を会社に売って報酬を受け取る労働者の役回りとは違います。

 たとえば、会社の緊急事態に対処し、自ら変革できるような社員はなかなかいません。そこで、最初は投資先企業の役職員に寄り添って一緒に改革プロジェクトを進め、同時にプロジェクトに参加する社員の育成にも取り組みます。このように難易度は高く労力もかかりますが、不眠不休で作業し続けるタイプの仕事ではありません。

 その道のプロである投資先企業の人々が考えても、何が問題かわからない複雑な状況の中で本質的な課題を見抜き、やるべきことを決め、しかも対象企業の経営陣や社員に納得してもらった上で合意形成しながら改革を進めていくのは大変な仕事です。

 プロジェクトをいくつも立ち上げて、リーダーを社員から選び、その人々を通じてすべてのプロジェクトを同時に動かしていくことは、マネジメント力などハイレベルな技量が必要で、なかなか簡単にできることではありません。

 投資後の間もない時期には、対象企業には会話をしようとしても「ファンドの人なんて嫌い」「話の意味がわからない」などと言って、露骨な態度で抵抗を見せる社員の方々がいることもあります。投資先企業に常駐しているファンドのメンバーが議長を務めるミーティングの場で、意見を求めても沈黙して無視されるようなことが繰り返されたりもします。

 こうした状況下で、会社をよくするために、ファンドと対象企業が同じ方向を向いて頑張っていくように持っていくというのは、想像するだけでも大変なことだとわかるでしょう。

 こうした背景があって、PEプロフェッショナルの仕事は、仕事の物量というよりも、クオリティや胆力を要求される仕事であるということができるのです。

第一の報酬は「ベース年俸と賞与」

 PEファンドの報酬(年収)は、二つの体系に分けて考えるのがわかりやすいでしょう。

 常に支払われるサラリーとして、ベース年俸と賞与があり、これとは別に、ファンドがクローズしてリターンが出たときに配分される「キャリー」があります。

 まずは、PEファンドの標準的な年俸と賞与を、ミッドキャップからミッド・スモールキャップのPEファンドで見てみましょう(以下図)。

画像
PEファンドのベース年俸と賞与

 ベース年俸では、アナリスト(またはアソシエイト)で700万~1,000万円、アソシエイト(またはシニア・アソシエイト)では1,000万~1,300万円、VP(ヴァイス・プレジデント、またはマネージャー)で1,400万~1,700万円、ディレクター(またはプリンシパル)では2,000万~2,500万円、パートナー(またはMD)ともなると、2,500万円以上となっています。

 賞与については、それぞれのベース年俸を100%としたときの割合です。なお、上位に行くほど高い比率が設定されている場合もあります。

 外資系ラージキャップでは、ジュニアであってもさらに高い水準が設定され、アナリストで1,000万~1,100万円+賞与(ベース年俸の50~100%)、アソシエイトで1,500万~1,700万円+賞与(50~100%)からのスタートとなっています。

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『コンサルが「次に目指す」PEファンドの世界』
画像をクリックすると購入ページに移動します
 ベース年俸と賞与だけでいうと、コンサルや投資銀行とさほど変わらないのでは? と思われるかもしれません。しかし実態は、深夜・土日もなくハードな環境で精力的に働いている彼らこそが、PEファンドを志望して移ってくる人々なのです。

 コンサルも投資銀行のバンカーも、いうなればやはり労働者。会社に雇われて定められた職務を行う労働者の立場と、労働者を雇用して事業を行う株主側、資本家側にいるPEファンドとは立場が違うのです。

 労働者として使われる立場から、資本家として人を使って事業を行う立場へと、自分が所属する階級を上げたいという気持ちは自然なものかもしれません。立場を変えることによって得られる経済的なメリットについて、これから述べたいと思います。 【次ページ】第二の報酬「キャリー」に大きな期待ができるワケ

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