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  • 2019/08/07 掲載

迫るアンチマネーロンダリング対応、金融庁が期待するRBA実装の勘所 

大野博堂の金融最前線(1)

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マネーロンダリングに関する金融活動作業部会、いわゆるFATF(ファトフ)による第4次対日審査が10月に迫る中、金融機関にはさまざまなプレッシャーがかかっている。とりわけ、外国為替対応やシステム整備が先行し、本来は優先されるべき内国為替対応に割くべき時間が限定的となってしまったことが今となっては悔やまれるところだ。審査対応まで残りわずかとなったとはいえ、残された期間をいかに有効に活用するか、といった点に着目し、現状の問題点や抜け漏れがちなポイントについて取り上げてみたい。
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国内金融機関に、国際的な資金洗浄・テロ資金供与対策の遵守の改善が求められている
(Photo/Getty Images)

金融庁FATFガイドラインの読みこなしが不足

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金融庁は2019年2月に「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(FATFガイドライン)を発表した
 かつての対日第3次審査では我が国における法令の未整備が主たる指摘事項とされたものの、今次審査は令和1年10月より我が国金融機関の実態調査を中心に実施される。

 これに向け、平成30年2月、金融庁は金融機関が参考とすべき情報として「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」、いわゆる「FATFガイドライン」を公表した。同ガイドラインでは、リスクの特定・評価・低減といったRBA(リスクベースアプローチ)の枠組みを解説するとともに、金融機関が点検すべきポイントを例示している。

 金融庁は、現状と求められる水準とのギャップ分析および審査対応までを見据えた改善計画(FIT&GAP分析結果)を金融機関から徴求することで、これらをインプット情報としてモニタリングに活用してきた。

 それもあり、多くの金融機関が、「FATFガイドラインに従えば対応としては十分」といった受け止め方をしている様子がうかがえた。

 このFIT&GAP分析に際し、多くの金融機関がコンサルティングファームなどの支援を受け、ガイドラインに記載の要件を定義し、現況との差分を導出する作業を実施してきた。

 ところが、ガイドラインの読みこなしが不足していたためか、要件定義が十分ではないと思われる箇所が散見されている。結果として、現況との差分を特定するまでに至らず、「やるべきこと」を整理できずにいる金融機関が続出することとなった。

金融庁が期待するRBAの事務への実装

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 金融庁ではRBA、すなわち「リスクの特定」「リスクの評価」「リスクの低減」といった3つの枠組みを定義し、事務手続きに組み込むことを要請している。

 「リスクの特定」については、金融機関を取り巻く地政学的因子や顧客属性などを勘案し、相対的にリスクが大きい対象物を特定していく作業だ。

 たとえば、輸出入の起点となる港湾を地盤とする金融機関で、かつ、顧客にも倉庫業や輸出業が多い、というケースでは、「○○業はリスクが総じて高そうだ」「▲▲の属性の顧客が自行庫には多い」といった判定が可能である。

 このリスクの特定作業は、地盤とする地域の特性のほか、地域住民の特性といった観点での評価が必要となる。つまり、金融機関ごとに特定されるリスクが異なることとなる。

 この過程において作成される書面の一つが前述のリスク評価書になり、この評価作業自体が「リスクの評価」作業に該当する。

 金融機関の多くが上流のこれら「リスクの特定」「リスクの評価」を中心に金融庁から指摘を受けてしまっており、とりわけ重要な「リスクの低減」の検討にまで至っていない様子がうかがえる。

 リスクの低減とは、すなわち、本部や営業店での事務手続きにおける顧客管理や顧客対応そのものの改善にある。

【次ページ】FATF対応と犯収法対応は別物?
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