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  • 2022/07/27 掲載

営業店事務を30%削減、南都銀行「営業店端末全廃の改革」が凄すぎる理由

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奈良県の地域金融機関である南都銀行が2020年6月に対外的に打ち出した「営業店端末全廃」という店舗改革は、金融業界にとてもインパクトのあるものであった。それは、銀行の店舗のあり方に大きく影響を与える大胆な施策だからだ。2023年度中にミッションを完了するとのスケジュールも発表されている営業店端末全廃の取り組みの狙いや進行状況、課題について、南都銀行事務サポート部長の田原久義執行役員に話を聞いた。

解説:南都銀行 執行役員 事務サポート部長 田原久義

解説:南都銀行 執行役員 事務サポート部長 田原久義

画像
金融機関の営業店窓口で使用されている端末を全廃すると…どのようなメリットがあるのだろうか。図表は営業店端末全廃後のイメージ
(後ほど詳しく解説します)

「営業店端末全廃」を決めた狙い

 南都銀行の「営業店端末全廃」という店舗改革が対外的に発表されたのは2020年6月だった。銀行店舗の業務に欠かせない営業店端末をすべて廃止するのは、大胆な施策と言えるだろう。

 この決断の背景には金融機関を取り巻く環境の急激な変化がある。人口減少・少子高齢化・地域社会の構造変化・低金利政策の長期化・ITインフラの進化など、さまざまな要因により、多くの地方銀行が業務改革を迫られていたのだ。「営業店端末全廃」という方針を決めたきっかけについて、南都銀行執行役員で事務サポート部長の田原久義氏はこう説明している。

photo
南都銀行
執行役員 事務サポート部長
田原久義氏
「営業店端末全廃を考えたのは、『伝統的な銀行のビジネスモデルの延長線のままでは、持続的な成長を描けないのではないか』との危機感が行内全体で共有されていた時期でした。事務サポート部としても、事務手続きに関する抜本的な改革に着手していたことが、『SBT(Super Banking Terminal:金融機関の営業店窓口や後方などで使用されている端末)』全廃の背景です。当行のSBTは通帳や依頼書といった紙媒体を必要とする仕組みになっており、SBTを使っている限り、ペーパレス化のは難しいとの判断がありました」(田原氏)

 SBTとは南都銀行が使っている営業店端末の名称だ。営業店において入出金や振込、各種引き落としの設定といった銀行の業務を網羅する機能を備えている多機能な端末だが、通帳や入金依頼書などの紙の読み取りの作業が必要になる。田原氏はSBTの課題をこう説明する。

「紙から脱却できないと、印鑑からも脱却できないなど、業務改革が進みません。また、SBTの操作が難しいことも課題となっていました。実際に、『SBTの操作がこんなに難しいとは思いませんでした』との理由で、辞めるパートタイマー行員が少なくはない状況にありました」(田原氏)

 もう1つ、SBT全廃の大きなきっかけとなったのは、2023年度末にSBT更改のタイミングが訪れることだった。田原氏はこのタイミングについて、こう語っている。

「これまでに当行では何度かSBTを刷新してきていますが、2023年が更改期限だったことも大きかったです。このタイミングで全廃すると、開発費やイニシャル費などのコスト削減にもつながります。全廃を考え始めたのが2017年頃からで、全廃を打ち出したのが2019年です。SBTの更改の折り返し地点だったので、これがギリギリのタイミングだなと考えました」(田原氏)

「営業端末全廃」、どうやって行内を説得したのか?

 SBTを全廃する代わりに、窓口ATMとタブレットを活用する方法へ移行するというビジョンの下、準備を進めていったと田原氏は言う。

「SBTを廃止する代わりにタブレットを使用して、スキルが不要なフローを構築しようということ考えたのです。従来の営業店では、受付対応する前にお客さまに各種申込書に必要事項を記入してもらう形をとっていました。その際、記帳台の近くに担当者が立ち、お客さまに記入方法などをアドバイスするような体制でした。しかし、そのプロセスを短縮し、受付でお客さまに直接タブレットに入力してもらう仕組みを考えました。これまでSBTは行員専用機ということで、どの機械も受付担当者だけが見えるよう窓口の中に設置されていましたが、窓口をお客さまが向いている方向に変えようよというのが大きなポイントです」(田原氏)

 しかし、これまで長い期間続いてきたSBTを廃止するには、行内に明確な根拠とビジョンを示すことが必要になる。データ集めからスタートしたと田原氏は語っている。

「計画を進めるうえで、データに基づく資料を制作することに力を入れました。苦労したのは、SBTを使用してきた期間に業務に関わる数値的なデータを蓄積しておらず、何もファクトを示せなかったため、データ集めから始めなければならなかったことです」(田原氏)

 直近の3年間のSBTの使用データを調査していった結果、次のような数字が出てきたと田原氏は言う。

「どのような場面でSBTを使っているのかをすべて数値で整理したところ、使用するSBT上の画面は約2000種類あることが分かりました。その2000画面には使う頻度の差がかなりあるのではないかという仮説のもと、さらに調べると、『全体のうち約200画面だけで97%使っている』という実態が見えました。200画面ならば、5年間で改良可能ではないかとのメドが立ったことが、SBT全廃を後押しした理由の1つでもあります」(田原氏)

 こうして2000種類ではなく200種類の事務に絞り、SBTから窓口ATMやタブレットへの置き換えに着手したのだ。

【次ページ】SBT全廃はコスト削減につながるのか?

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