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  • 2022/10/14 掲載

なぜ、みずほFGは楽天証券に出資した?知られざるウラの事情とは

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みずほフィナンシャルグループ(FG)が楽天証券の株式を取得することになった。金融業界ではメガバンクとネット証券の資本提携が進んでおり、若年層を中心にした、新しい顧客層の獲得競争が激化している。今回の資本提携もその一環とみなすことができる一方、楽天グループが抱える資金不足という問題も見え隠れする。

執筆:経済評論家 加谷珪一

執筆:経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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なぜ、みずほFGは楽天証券に出資したのか?ウラの事情とは
(写真:アフロ)

みずほFGは楽天証券の顧客層が狙い

 みずほFGは、子会社のみずほ証券を通じ、楽天証券の株式19.99%を取得する。取得金額は800億円になる見通し。みずほは若年層に強いPayPay証券の株式を保有しているが、同社の口座数は32.3万(2022年3月31日現在)と少なく、ネット証券分野において十分なビジネス基盤を持っているとは言えなかった。

 楽天証券の口座数は800万を突破しており、ネット証券大手のSBI証券とトップ争いをしている。楽天証券にはグループが運営するECサイト利用者など、幅広い潜在顧客層があり、外部からは魅力的に映る。

 これまで日本人の資産運用は著しく銀行預金に偏っており、株式投資を行う人は少数派だった。だが近年、日本経済の状況が悪化していることから、若年層を中心に投資に対する考え方が変化している。日本の公的年金は制度的に限界に達しており、今後2割から3割の減額は確実と言われる。政府もこうした事情を背景に、投資の活性化を政策として掲げており、NISA(少額投資非課税制度)の拡充など、貯蓄から投資への流れを加速させたい意向だ。

 この話は、日本経済の低迷と表裏一体なので、必ずしも喜べるものではないが、少なくとも若年層は自身の老後について真剣に考えており、中高年層と比較すると株式投資にかなり積極的と言われる。

 若年層の多くはすでにデジタル世代であり、従来の対面型証券会社では十分なアプローチができない。このためメガバンク各行は、ネット証券との資本提携を進めており、今回の楽天証券との提携もその一環と位置づけることができる。

 だが、資本提携というのは、双方の利害が一致しないと成立しない。両社の立ち位置次第では、資本提携をきっかけに、企業グループとしての勝ち負けがはっきりしてしまうこともしばしばである。

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もともと、みずほは若年層に強いPayPay証券の株式を保有していたが、同社の口座数は32.3万(2022年3月31日現在)と少なく、ネット証券分野において十分なビジネス基盤を持っているとは言えなかった
(Photo/Getty Images)

劣勢みずほFGの置かれた状況

 みずほFGは、メガバンクの一角を占めているものの、3行の中では不良債権処理に最も手間取った銀行であり、その後も、システム統合に失敗するなど、内部の問題に翻弄され続けてきた。このためライバル2行と比較すると収益力が低く、明らかに劣勢となっている。

 三菱UFJフィナンシャル・グループはメガバンクではトップであり、すでにauカブコム証券を通じて若年層獲得の窓口としている。一方、三井住友フィナンシャルグループは、ネット証券最大手のSBIホールディングスに出資している。SBIホールディングスは、新生銀行を傘下に収めており、今後、同行を通じて全国の地銀をグループ化する戦略を描いていると言われる。


 こうした状況を考えると、楽天証券とみずほFGが十分なシナジー効果が発揮し、金融グループ内での立ち位置を大きく変えられるのかは微妙なところだ。ではなぜ、両者は提携に踏み込んだのだろうか。今回の提携には、楽天側の事情が大きく関係していると思われる。

【次ページ】なぜ、みずほFGと楽天証券は提携に踏み込んだ?

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「ChatGPTで株価予測」が実現? 金融分野の生成AI最新動向

リラ教授とタン准教授がシミュレートしたのは、ニュース報道翌日の株価パフォーマンス。決算発表を考えてもらえれば分かるようにこれはいわゆる株価予測とは違うのですが(決算前に、どんな決算になるかを考えるのが予測ですね)、こんなクルードな方式でも15ヶ月間リターンが+250%も出たとのことで(取引コスト10bps)、しかもシャープレシオが3以上と、ちょっと驚きを通り越してしまいます。

おそらくは、時価総額のごく小さな銘柄にはいかにミスプライシングが残されているかということが発見なのでしょう。

想像に難くありませんが、そのパフォーマンスは時価総額下位10%の銘柄に集中しています。NYSEの時価総額下位10%といえば$100m以下。その多くはペニーストックで出来高のない日も多く、取引金額は多くて$1m。

さて、この手の計算と現実の間には、常に流動性の制約があります。寄りオンリーの売買で実際にいくら張れるかについて簡単な試算をしてみましょう。

日次取引額の25%が寄りでの約定と仮定し、その20%までならティックアップしないとすると、張れるのは日次取引額の5%です。対象銘柄全体で平均日次取引額が$300kあるならトレード可能額は$15k。そして時価総額下位10%に属する300銘柄のうち、出来高がありかつその日にニュースが存在するのが150銘柄だとすると、合計$2m強しか張れないことに。

ちなみに上記の150銘柄という前提は、論文に使われている観察サンプル数の15ヶ月間46402件にマッチしますが、実際にはマイクロキャップ銘柄についてニュースが存在する日が全体の半数もあるとはとても思えず、さらに制約がある可能性は高そうです。(時価総額100億円以下の会社では、決算すらほとんど報道されませんよね)

投資とは、良い会社を安く買うこと。このシミュレーションは「ニュースがポジティブかネガティブか」だけを見ていて「株価が安いか高いか」は無視していますから、バリュエーションを組み合わせたストラテジーに仕立て上げたときにどうなるかに興味がひかれます。そのうえで、日計りではなくせめて数ヶ月スパンで、かつ大型株でパフォーマンスが出せるようなものが出てきたときには必ずや実用化されるでしょう。

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