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  • 2022/11/11 掲載

日銀の「超」緩和的政策は終了? 日本の賃金上昇が「十分にある」と言えるワケ

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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消費者物価は輸入物価上昇を主因に3%を超える状況が続くものの、国内景気の回復が不十分なため、直近の日銀会合では金融政策の現状維持が決定された。一方で、インフレを取り巻く状況に変化の兆しがみられている。インフレ率を決める最重要要素である賃金について深掘りしながら、今後のシナリオを考えたい。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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依然金融政策は現状維持。インフレ、賃金の行方は
(Photo/Getty Images)

高まるインフレへの警戒

 直近の日銀の金融政策決定会合(10月28日に結果発表)では、大方の予想どおり主要な金融政策の現状維持が決定された。消費者物価は輸入物価上昇を主因に3%を超える状況が続くものの、国内景気の回復が不十分であるとの認識から金融環境を引き締める必要性は乏しい、というこれまでの判断が維持された形だ。

 為替については政府の為替介入とFed(連邦準備制度)の利上げ幅縮小観測が相まって円安が一服しているため、それを理由に金融政策を修正する必要性は一段と乏しくなっている。

 同時に発表された経済・物価の展望レポート(以下、展望レポート)によると2022年度の消費者物価(除く生鮮食品)は前年度比プラス2.9%へと0.6%ポイント上方修正され、2023~24年度は共にプラス1.6%とされた。

 7月時点の見通しでは2023年度にプラス1.4%へと鈍化し、2024年度はプラス1.3%へとさらに鈍化すると予想されていたので、日銀内部でインフレの持続性が高まるとの認識が芽生え始めたことがうかがえる。依然として2%の物価目標達成は「一時的」であるとの見通しは維持された格好だが、一方で想定外のインフレに直面することを徐々に警戒し始めているようにもみえる。

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日銀内部でインフレの持続性が高まるとの認識が芽生え始めた?
(Photo/Getty Images)

インフレを取り巻く状況に変化の兆し

 実際、インフレを取り巻く状況はここへ来て変化の兆しがある。筆者が注目しているのは賃金動向。現時点で黒田総裁は賃金上昇率が十分に高まっていないことを金融緩和継続の理由にしているが、人手不足感が強まる下で企業収益が高水準を維持している現状に鑑みると、2023年度に向けて賃金が加速度的に上昇し、日銀の想定を上回る可能性はある。

 その場合、消費者物価はエネルギー要因を抜きにしても1%を上回って推移するだろう。10月の展望レポートによれば生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀型コアCPI)は2023~24年度が共にプラス1.6%とされている。

 仮に日銀型コアCPIのプラス1.6%という見通しに日銀自身が自信を深めるなら、現在の「超」緩和的な金融政策の修正を模索する可能性は十分にある。


【次ページ】賃金は高い伸びを実現、今後はどうなる?

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