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  • 2022/11/17 掲載

銀行系リース会社と商社の「統合・再編」がシナジーを生みやすい納得の理由

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ここ数年、リース業界の取扱高は減少傾向が続いている。世界的な金利上昇、景気の停滞、競争激化など、リース業界を取り巻く環境はきわめて厳しい。銀行融資との差別化が難しいファイナンスリース事業だけでは将来の展望が見えてこないのだ。近年、現状を打破すべく、海外進出、業界再編の動きが活発になってきた。リース会社はどのような経営戦略を選択すべきなのか。大手銀行系と地銀系のリース会社の動向について、日本格付研究所金融格付部の杉浦輝一氏に話を聞いた。

解説:日本格付研究所 金融格付部 杉浦輝一氏

解説:日本格付研究所 金融格付部 杉浦輝一氏

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金利上昇、景気の停滞、競争過多など、リース業界を取り巻く環境はきわめて厳しい。リース会社は、この逆境をどう乗り越えていけば良いのだろうか
(Photo/Getty Images)

なぜ、銀行系リース会社の再編が進んでいるのか?

 リース業界を取り巻く厳しい環境を見据えて、リース会社の海外進出と業界再編の動きが活発化している。業界再編の中でも特に目立っているのは、大手銀行系リース会社を中心とした再編である。

 ここ数年の三井住友ファイナンス&リースと住友商事、三菱UFJリースと日立キャピタル、みずほフィナンシャルグループと丸紅の再編について、日本格付研究所金融格付部の杉浦輝一氏はこう解説する。

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日本格付研究所
金融格付部
杉浦輝一氏
「大手銀行系リース会社の特徴は、大手銀行グループから『グループの収益を最大化する』というミッションを求められていることです。銀行自体は銀行法でビジネスのやり方が規制されています。大手銀行系リース会社にとって、銀行法の制約を回避しながら、顧客基盤の強さや資金調達基盤の安定性など銀行系としてのメリットをいかに活用できるかが重要なテーマと言えるでしょう」(杉浦氏)

 銀行系リース会社にとって、商社は協業する相手として適していると杉浦氏は指摘している。

「銀行系リース会社としては、商社の持っている国内外のネットワークを活用して、さまざまな投資機会にアクセスできます。商社としては、あるプロジェクトを開発した後に、長期の安定的なビジネスとして投下資本を固定するよりも、プロジェクトを売却して開発者利益を実現し、資金を新たなプロジェクトに投資するほうが資本の効率が高まります。銀行系リース会社と組むことによって、長期の安定的なビジネスを銀行系リース会社に任せられ、強みを発揮できる領域に注力できるようになります」(杉浦氏)

 たとえば、風力発電プロジェクトが立ち上げられたとすると、最初に資本を投入して、開発の先頭に立つのは主に商社の役割となる。風力発電が安定稼働に入った場合には、何十年単位の長期的なビジネスになってくるため、銀行系リース会社がビジネスを展開し、商社は次なる開発プロジェクトに投資するという役割分担が可能になるのだ。

「商社は開発利益を回収して、次の開発に向かうことがよくあります。インフラ系のビジネスとしては水道事業も同様です。海外の水道事業に参画してネットワークを作り、安定稼働に入ったものに関しては、リース会社に任せるわけです。商社が保有したままにしておくと、投下資本の回収期間が長くなりすぎます。もともと長期的なビジネスを展開しているリース会社にとって、インフラ事業は安定した収益が挙がることもあり、ビジネスとしても十分なメリットがあるのです。ビジネスの構造という点でも、リース会社と商社は相性が良いと考えています」(杉浦氏)

再編を進める地銀系リース会社、苦しい理由とは

 近年、地銀系リース会社では「里帰り」と呼ばれる再編の動きが顕著になっている。

 具体的には、福井銀行・ 群馬銀行・きらやか銀行・ ひろぎんHD・ 第四北越FGなどで、「リース子会社の安定した利益を100%グループ内に取り込む動き」が活発化しているのだ。この背景には、人口減少、地域の資金需要の低下、競合する金融機関との競争などの構造的な問題による地銀の業績停滞が関係している。

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図表1:地域金融機関系リース会社の「里帰り」と限界
(出典:日本格付研究所)

「地銀系リース会社の業績は親銀行の商圏のリース需要を取り込むことで安定しています。しかし、親会社である地銀を取り巻く状況は急速に変化しています。銀行本体において利ざやが縮小し、収益基盤が弱体化する傾向がみられます。かつては地銀が所有していたリース会社に、ほかの大手リース会社の資本を入れることによって、ノウハウの強化を図った時期もありました。しかし、本業の業績低迷から、現在はほかの株主の出資分を買い戻し、リース会社の業績を100%グループ内に取り込もうとする動きがみられます」(杉浦氏)

 このように、リース会社を買い戻して完全子会社化を進める動きには、地銀グループとしての総合力を上げる目的があるとのことだ。

「つまり、銀行本体の業績が低迷する中でグループの収益を維持、強化するために、リース会社の安定した収益を取り込んでいるのです。もっとも、ただ単にリース会社を完全子会社化して取り込むだけでは、グループの業績を向上させるための抜本的な解決策とは言えません。地銀系のリース会社自体が、単なる親銀行の商圏のリース需要を取り込むだけのビジネスモデルから変わっていく必要があると考えます。地銀系リース会社に求められるのは、地域に根ざした強みを生かし、大手リース会社では気付かないようなリースの需要を掘り起こすことです。地域経済の活性化につなげるような、付加価値のあるリースサービスの開発できれば、真に銀行グループの総合力発揮に貢献できると言えるでしょう」(杉浦氏)

 今後、グループとしての総合力を発揮しながら、リース会社として競争力のある商品を育てられるかがポイントだと杉浦氏は強調する。

 付加価値のあるリースサービスとは、貸すだけでなく、貸すことに付随したビジネスチャンスを見つけていくことである。杉浦氏はパソコンのリースを例にとって、付加価値について以下のように説明した。

「パソコンをリースするだけでなく、リース先の会社の要求に合わせて仕様を作り、設定まで完了させて、すぐに使える状態にする『キッティングサービス』『メンテナンス』『リースが終了したパソコンのデータ消去とその後の中古販売』などがあります。こうしたサービスは顧客の手間・負担の軽減を訴求できることから、リース料に金利とは別の手数料を上乗せすることが可能となります。リースの始まりから終わりまで、こうした収益の機会を見つけていくことが重要です。リースという形態を通じて、プラスするサービスをどれだけ取り込めるかが生き残っていく上で必要です」(杉浦氏)

【次ページ】何を変えるべき? リース会社の変革「5つのポイント」

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