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2015年03月31日
パフォーマンス&ビジネスの機動力 ビジネスで本当に使える2in1デバイスはどれ? 主要メーカーによる11番勝負!(前編)

1台でタブレットとしてもノートPCとしても使うことができる「2in1」デバイスが、ビジネスシーンで注目されている。各メーカーも力を入れて2in1デバイスを投入してきているが、導入の際にはどんなことに注目して選ぶべきだろうか。ここではビジネスの現場での有用性をベースに、東芝、日本電気(NEC)、富士通、マイクロソフト、レノボの5機種を比較検証していく。前編では、基本性能を推し量るベンチマークテストやサーモグラフィを使った放熱性能テスト、サイズ・質量やバッテリー駆動時間などを検証する。

(製品比較の機種選定・比較は、ビジネス+IT編集部が実施しています)

ビジネス向け2in1デバイス5台を検証

 ビジネスシーンで2in1 スタイルのタブレットが注目を集めている。2in1とは、変形や合体分離することでタブレットとしてもノートPCとしても使えるいいとこどりのデバイスだ。タブレット スタイルでは、その携帯性と精彩な画面、タッチやペンによるインタラクティブな操作性などで営業、特に渉外業務で大きな成果が期待できる。一方、資料作成、入力事務などにおける生産性を考慮するとキーボード操作が主となる ノートPCスタイルもまた欠かせない。両方を1台で兼ねる2in1デバイスは、導入コストの面でも資産管理の面でも都合が良く、TCO削減効も大いに注目されている。

 タブレットとノートPCのメリットを両立するという発想はシンプルだが、両者の間には相反する要素もあるため、どのようにバランスを取るかは、メーカーや製品ごとに異なる。搭載するCPUや、画面のサイズ、デバイスの重量、インターフェイスなどによりメーカーがターゲットとしているビジネスユーザーも異なってくるし、得意とするシーンも異なる。つまりは、企業にとっては選ぶ製品によって、ビジネスの現場におけるベネフィットが大きく変わってくるわけだ。

 そこで本記事では、この2in1デバイスで、ビジネスで実績のある機種に絞り、@パフォーマンス 〜ビジネスに求められる基本性能〜、Aビジネスの機動力 〜組織に求められる俊敏性〜、Bユーザビリティ 〜仕事での使いやすさと効率〜、Cビジネスの訴求力 〜情報を魅力的に伝えられるか?〜の4つの視点から比較し、どのデバイスがビジネスで最も活躍できそうかを検証する。

 中でも渉外や店舗でもプレゼン効果を発揮する、画面サイズが12型前後のデタッチャブル型2in1デバイスを取り上げ、ビジネスでの活用シーンを想定しながら、比較検証を行なっていく。今回取り上げるモデルは、東芝のdynabook R82、NECのVersaPro タイプVS、富士通のSTYLISTIC Q702/G、マイクロソフトのSurface Pro 3、レノボのThinkPad Helixの5機種だ。NECのVersaProタイプVSとレノボのThinkPad Helixは、タブレット単体部分の見た目が酷似している。両ブランドは事業統合の関係にあるため多くの部分で設計や部品を共通化しているのだろうが、細かい部分まで同じとは限らない点に注意したい。

 なお、本記事では検証結果を基に、各項目について10点満点の採点を行っている。点数はあくまで編集部の主観である点を、ご了承いただきたい。

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今回検証の対象とした、東芝のdynabook R82、NECのVersaPro タイプVS、富士通のSTYLISTIC Q702/G、マイクロソフトのSurface Pro 3、レノボのThinkPad Helix。いずれも2in1のビジネスタブレットとして人気が高いモデルだ。


パフォーマンス 〜ビジネスに求められる基本性能〜


  ビジネスで使用する2in1 デバイスを選ぶ上で、最初に検討すべきはやはり基本項目であろう。どのような CPU か、SSDはどれぐらい搭載しているか、メモリは何MB搭載しているか、などデバイスが持つ基本スペックにより、仕事の効率も大きく変わってくる

 ビジネスで使用するデバイスを選ぶ上で、企画書や報告書も、テキスト要素のみならず、写真や図版をうまく使い、効果的にピーアールすることも必要になる。スマートフォンのカメラやデジタルカメラも高画質化が進み、扱うデータ量も大きくなっている。

 ノートPC、およびそれを置き換えることを期待して導入する2in1デバイスには、そういった高画質化傾向にある写真や動画素材もスムーズに扱い、リッチで訴求力のある文書を作成することが求められる。そのためには基本性能が高いことは重要な条件だ。

 昨年に インテル社が、まさにこの 2in1 デバイスを想定した インテルCore™ Mプロセッサーを市場に投入しており、高い電力効率と高い処理速度を実現し、超薄型でファンレス設計が可能となってきいる。今回比較している2in1デバイスでは、このCPU を搭載したモデルが主流となってきていると言える。

基本スペック

 今回とりあげる5台の基本スペックを、下記の表にまとめた。

 
表1■今回取り上げる2in1デバイス
項目 dynabook R82
東芝
VersaPro タイプVS
NEC
STYLISTIC Q702/G
富士通
Surface Pro 3
マイクロソフト
ThinkPad Helix
レノボ
CPUCore M-5Y71Core M-5Y71 Core i5-3427U Core i5-4300UCore M-5Y71
CPU動作周波数(最大)1.2GHz(2.9GHz)1.2GHz(2.9GHz) 1.8GHz(2.8GHz) 1.9GHz(2.9GHz) 1.2GHz(2.9GHz)
CPU TDP4.5W4.5W 17W 15W 4.5W
メモリLPDDR3-1600デュアルチャンネルLPDDR3-1600デュアルチャンネル DDR3-1600シングルチャンネル DDR3-1600デュアルチャンネル LPDDR3-1600デュアルチャンネル
メモリ容量4GB4GB 4GB 4GB 4GB
グラフィックス機能Intel HD Graphics 5300Intel HD Graphics 5300 Intel HD Graphics 4000 Intel HD Graphics 4400 Intel HD Graphics 5300
液晶ディスプレイ12.5型ノングレア(1920×1080ドット)11.6型グレア(1920×1080ドット) 11.6型ノングレア(1366×768ドット) 12型グレア(2160×1440ドット) 11.6型グレア(1920×1080ドット)
データストレージ128GB SSD128GB SSD 128GB SSD 128GB SSD 128GB SSD
OSWindows 8.1 Pro Update(64bit)Windows 8.1 Pro Update(64bit) Windows 8.1 Pro Update(64bit)
※プリインストール時点ではWindows 8.1 Pro
(64bit)だがアップデートして計測
Windows 8.1 Pro Update(64bit)
※プリインストール時点ではWindows 8.1 Pro
(64bit)だがアップデートして計測
Windows 8.1 Pro Update(64bit)
※プリインストール時点ではWindows 8.1 Pro
(64bit)だがアップデートして計測


 中でも違いが目立つのは、CPUだ。dynabook R82とVersaProタイプVS、ThinkPad Helixは、前述の Core Mプロセッサーを採用している。

 Core Mプロセッサーは、主に2in1デバイスをターゲットに開発された、ノートPC向けのプロセッサーよりも、TDPを大幅に抑えたシリーズだ。Coreプロセッサーの世代でいえば第5世代に相当し、最新の14nmプロセスルールが導入している。

 Surface Pro3は第4世代のCore iプロセッサー、STYLISTIC Q702/Gは第3世代Coreプロセッサー、いずれもノートPCで搭載例の多いプロセッサーを搭載している。ある意味ではCore Mより格上といえるのだが、世代が1〜2世代古いことが性能にどう影響するか。また、バッテリー駆動時間では不利になると予想されるが、具体的にはどの程度なのか、といったところが注目される。実際のところは後に続く検証で明らかにしていこう。

ベンチマーク性能

 ベンチマークテストとしては、PCMark7、PCMark 8(Work)を実施した。いずれもアプリケーションを実際に実行し、レスポンスタイムを元にスコアを出すテストだ。PCMark 8(Work)は特にビジネスシーンを想定したテキスト編集(Writing)、表計算(spreadsheet)、ビデオチャット(Video Chat v2)といった処理が含まれる。

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表2■ベンチマークテスト詳細
PCMark 1.4.0dynabook
R82
VersaPro
タイプVS
STYLISTIC
Q702/G
Surface
Pro 3
ThinkPad Helix
PCMarks45794051396748464184
LightWeight Score31712724281832302644
Productivity Score23552048216523321997
Creativity Score31502741258834902965
Entertainment Score87957818761593667865
Computation Score1442412484122131620513065
System Storage Score53054952508250404970
Raw system Storage Score49693836451837033918
PCMark 8 2.282dynabook
R82
VersaPro
タイプVS
STYLISTIC
Q702/G
Surface
Pro 3
ThinkPad Helix
Work Accelerated 2.0 Score37773581331935783777
Web Browsing - JunglePin(s)0.3410.3440.3420.3610.344
Web Browsing - Amazonia(s)0.1410.1420.1380.1510.142
Writing(s)4.635.063.85.624.47
spreadsheet(s)4.044.297.894.154.05
Video Chat v2 / Video Chat Playback 1 v2(fps)29.930303030
Video Chat v2 / Video Chat encoding v2(ms)107132157.392.7110.7
Benchmark duration28min 54s29min 36s29min 39s29min 39s28min 46s
短評 PCMark8はThinkPad Helixと並び最速。PCMark7でもCore M搭載機の中ではもっとも良いスコア。ストレージ性能、高負荷系のテストとも良い。 ストレージ性能が少し低く、PCMark7では同CPUを搭載するdynabook R82に差を付けられている。 ノートPC向けCPUだが、二世代前だけに内蔵GPUの性能、機能が足を引っ張っている印象。 一世代前とはいえノートPC向けのCPUを搭載しているだけあって、総合的にスコアが高い。 ストレージ性能はVersaProタイプVSと同様に少し低めだが、PCMark7、PCMark8ともVersaProタイプVSより良いスコア。放熱の傾向からしても、電力管理の許容値が高いのだと思われる。
採点1087109

 PCMark7では、Surface Pro 3が最も良いスコアを出している。特に3D描画を含むEntertainment Scoreやエンコード処理などを含むComputation Scoreで強さを見せており、やはりプロセッサのパワーが一段格上であることが感じられる。

 ただ、同じノートPC向けのプロセッサでも2世代前のモデルを搭載するSTYLISTIC Q702/Gは、Core Mを搭載する2台にも及ばない結果となった。IntelのCPUは、世代が進化するたびにCPUコアだけでなく内蔵GPUの描画性能や内蔵ハードウェアエンコーダ(QSV)の性能も進化しており、そのあたりの影響が感じられる。

 Core Mを搭載する3台の中では、dynabook R82のスコアが抜けている。ストレージ性能を示すSystem Storage scoreのほか、Entertainment ScoreやComputation Scoreでもはっきり差を付けている。特にストレージ性能はOSの基本操作の体感的な快適さにも反映するだけに、この高性能は歓迎だろう。ThinkPad HelixとVersaProタイプVSでは前者のほうが全体的によい。

 PCMark8はdynabook R82とThinkPad Helixが双璧だ。VersaProタイプVSは、ビデオチャットのエンコード処理でスコアを落としており、電力管理基準などのチューニングの問題と思われる。Surface Pro3はビデオチャットのエンコード処理ではdynabook R82やThinkPad Helixよりも上で1段階上のパワーを示しているが、Webブラウズやテキスト編集などの軽い処理ではCore M搭載機に劣っている。STYLISTIC Q702/Gはやはり世代の古さが影響しているのだろう。

 採点はdynabook R82とSurface Pro 3が満点、ThinkPad Helix、VersaProタイプVS、STYLISTIC Q702/Gの順で1ポイントずつ差をつけた。

放熱性能

  たとえ処理速度が高速であっても、仕事をしているうちにボディが異常に発熱したり、ファンの音がうるさく回ってしまうようでは、利便性を大きく損なう。特にモバイルで利用する場合には、膝の上でタイピングするようなシーンも想定されるため、放熱性能は重要な要素になる。タブレット用途でも筺体をじかに手にとってプレゼンするために、どれだけ熱を逃がしてくれるかは、気になるポイントだ。ここでは5機種の放熱性能についてチェックした。

 PCMark 8(Work)を実行中にボディの温度を放射温度計で計測し、発熱が比較的高い部分とその温度を表に記載した。

表3■放熱性能
項目 dynabook
R82
VersaPro
タイプVS
STYLISTIC
Q702/G
Surface
Pro 3
ThinkPad Helix
冷却ポリシーファンレスファンレスファン搭載ファン搭載ファンレス
PCMark8実行中発熱が最も高い部分30.5℃
右端裏中央部
29.5℃
上部カメラ付近
35℃
左端表排気口付近
36℃
右裏やや上部
31.5℃
上部カメラ付近
ファンの回転実行後ほぼすぐファン回転13〜14分でファン回転
ファンの騒音なしなし38dB33dBなし
短評 右端がやや暖かくなる程度で、そこを持たなければ問題ない 発熱が高めになる部分も、上部のカメラ付近と使う時にはまず持たない場所。うまく放熱できている。 音自体はかなり近づかないと分からない程度も、排気口からは明らかに熱風が出てきており、扱いにくさを感じる。 ファンの音は通常の環境なら耳を近づけないとわからない程度。ただ発熱は高め。 VersaProタイプVSと発熱の傾向は同じだが温度は少し高い。
採点1010689
  ※位置関係は横位置、キーボード装着時基準
   暗騒音32dB、室温20℃、ファンの音は画面から5cmの距離から測定

 優秀なのは、Core Mプロセッサーを搭載するdynabook R82とVersaProタイプVSだ。室温約20℃の環境でもっとも高い部分でも30.5℃、29.5℃と低い水準で、しかもこれらはファンレスである。同じCPUを搭載するThinkPad Helixは、発熱の傾向は同型のVersaProタイプVSに似ているが、ピーク温度が31.5℃とわずかに高かった。温度管理の許容値が高めに設定されていると考えると、前出の性能テストでVersaProタイプVSよりもスコアが良かったことと辻褄が合う。

 Surface Pro 3は、テスト中盤まではファンが回らず、音も意識しないとわからないレベルで悪くない。ただ、発熱はCore M搭載機に比べて高く、これから気温が高くなる季節を考えるとやや不安もある。

 STYLISTIC Q702/Gは、はっきりファンに放熱を依存している。うるさいというほどの音ではないが、側面の排気口から出てくる熱風は気になり、使用感が明らかに見劣る。

 別掲したサーモグラフは、室温約20℃の環境で、ベンチマークテストを実行した際のボディの温度を赤外線サーモグラフィー「TI160」で計測したものだ。ここでもPCMark8実行中の放射温度計での計測結果と似た傾向が出ている。

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液晶面と本体裏側のサーモグラフ。dynabook R82の発熱は右側に集中しており、ピーク温度は39.7℃。VersaProタイプVSはベゼル上部のカメラ付近が中心だが、ピーク温度は37.7℃と比較的低い。STYLISTIC Q702/Gは排気口付近を中心に高い発熱が見られる。ピーク温度は41.3℃だ。Surface Pro 3は温度の高い領域が画面右側全体に広がっている。ピーク温度は41.5℃だ。ThinkPad Helixは、同型のVersaProタイプVSに似た傾向だが、ピーク温度がわずかに高かった。


 採点は、Core Mプロセッサーを搭載した2台が満点、温度がやや高いThinkPad Helixはマイナス1ポイント、Surface Pro3はファンがあることからさらにマイナス1ポイント、STYLISTIC Q702/Gは比較的低負荷でも排気の風が気になる点と音が大き目であることでさらにマイナス1ポイントとした。

【次ページ】ビジネスに求められる機動力は? サイズと質量、バッテリー駆動時間、堅牢性、通信機能について評価

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