【2006年04月20日 00時00分 更新】

広告戦略の成功は 企業の課題分析力に宿る 〜TUGBOAT 代表 岡康道氏インタビュー

日本初のクリエイティブエージェンシー「TUGBOAT(以下:タグボート)」の船出から丸6年。 変化の呼び水たらんとする彼らの跳躍は、広告業界や クライアント企業の姿勢、意識に変革をもたらすことができたのか。 岡康道代表は「人とものを動かす」力を広告に見いだしつつ、「広告だけで、ものは売れない」と語る。 そして、マス媒体からネットへ─広告の流れが逆転の兆しを見せるなか、 クリエイターとして時代をどのようにとらえ、何を目指すのかを聞いた。

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TUGBOAT代表
1956年佐賀県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、電通に入社。営業局を経て、クリエーティブ局へ異動。1999年7月、クリエイティブエージェンシー「TUGBOAT(タグボート)」を設立。
現在、クリエイティブディレクター、CMプランナー、コピーライターとして、タグボートの“舵”をとる。手掛ける企業ブランドキャンペーンは、JR東日本、TBS、ライフ、パイオニア、富士ゼロックス、富士写真フィルム、大和証券、富士重工業など多岐にわたる。 著書に、『ブランド』、『ブランドU』、『CM』(共著、宣伝会議)などがある。

─最近の具体的な活動について、教えていただけますか

岡●テレビCMだと、年間に約50本弱を制作しています。ここ最近では、キリンビバレッジの「アミノサプリ」・「極烏」、富士ゼロックスの「Apeos(アペオス)」や東日本旅客鉄道(JR東日本)の「大人の休日」、大和証券の企業グループ/商品広告。富士通のパソコン「FMV」シリーズも、手掛けてからかなり長い。
ゴールデンアワー(19:00─22:00)の番組を見ていれば、タグボートの作品は非常に高い確率で流れているといった感じですから、仕事量としては限界です。

タグボートの大成功は 業界構造改革を鈍化させた?

─従来からの業界システムは、広告代理店がメディアから広告枠を買い取り(メディアバイイング)、クライアントに売ることで手数料を取る仕組みです。一方、クリエイティブエージェンシーは、アイデアを提案し、それに対しての報酬(以下:フィー)を得ます。 タグボートの設立は、この仕組みを広げ、「広告業界の構造改革」を目指す動きとして注目されたわけですが、現状をどう思われますか

岡●設立から6年がたち、タグボートは順調にフィーを得ています。しかし当初は、僕たちが会社を飛び出したら、同じ電通やほかの代理店からも、同じようなクリエイティブエージェンシーが次々に生まれるだろうと予想していました。 それが五つもあれば、クリエイティブとメディアバイイングをある程度切り離せる、業界構造は簡単に変わると想像していたのですが。残念ながら、そうはなりませんでした。勝手に期待して勝手に裏切られたような気がしています。


─フィー制度を確立し、制作費を上げることで広告の質を高めていくスタイルは、海外では十分成り立っているそうですが、なぜ国内では広がらないのでしょうか

岡●まず一つには、今が広告にとってそれほど良い時代ではないという背景があるでしょう。減少傾向にある制作費の中から、十分なフィーを得られるのかどうか、不安にかられてもおかしくはありません。 もう一つの隠れた理由は、タグボートが成功しすぎたということ。クリエイターたちが「独立しても、どうせあいつらには勝てない」という気持ちを持ってしまって、会社を辞めにくくなったのかもしれません。 クリエイティブエージェンシーが数多く設立されると、広告制作は、本当の実力差を競う戦いになります。僕らは、それが本当の勝負だと思っていますが、一方で「負けたら格好悪い」と思う人もいる。彼らを委縮させてしまったとまでは、言い過ぎだけど。

─クライアントのなかには、売り上げに直結しなければ、広告の意味はないという意見はありませんか

岡●その考え方も、論理的にはよく分かります。でもだったら、どうすれば売れるのかをクライアントは考えるべきだし、戦略を固めてほしい。売りたい商品があるなら、そのポイントを絞ってほしい。そうすれば、僕らはそこを表現できます。 一番困るのは、「とにかく売ってくれ」と言われることです。人がなぜものを買うのかというメカニズムは永久に解明されないでしょうし、現実問題として僕は「広告だけでものが売れるとは限らない」と常に言っています。一方で、広告が人々の心に何らかのものを残すことができれば、今日は売れなくても明日に売れる可能性が残る。そういうものが広告だと思うんですね。

ブランドは企業のDNA 消費者の目線で考える

─ブランドは、広告によって作ることができるのでしょうか

岡●広告だけではできないですよ。ブランドとは、その企業のDNA、「血」のことです。もし、企業に血が流れているとすれば、必ずそれを知らしめたくなるはずです。広告を使って「こんなに魅力的な会社なんだ」「魅力的な商品なんだ」と伝えることもできます。 しかし先ほど話したように、経営者が広告に直接関わらない理由は、彼らには特に主張したいことがないからではないでしょうか。そもそも血がないのだとしたら、それはブランドではないし、広告を打つ意味もないですよね。


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