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  • 2024/04/25 掲載

SuicaやPASMOがあるのに? 鉄道の「キャッシュレス・チケットレス」が複雑化するワケ

連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線

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交通系ICカードは、キャッシュレス・チケットレスの王者として鉄道のみならず、さまざまな支払いシーンにおいて君臨している。しかし、現在、鉄道の自動改札機では複数の決済手段に対応しようとする動きが進みつつある。QRコード決済やクレジットカードのタッチ決済といった決済手段が、新たに取り入れられつつあるのだ。日本人にとって交通系ICカードの利用が不便に感じる場面は少ないが、なぜほかの決済手段も増えてきているのだろうか? QRコードやクレジットカードなどの「タッチ決済」を改札機に導入するメリットとは。

執筆:鉄道ライター 小林拓矢

執筆:鉄道ライター 小林拓矢

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。「東洋経済オンライン」「ITmedia」「マイナビニュース」などに執筆。Yahoo!ニュースエキスパート。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)など。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)などがある。

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交通系ICカード以外の「タッチ決済」が普及し始めている
(Photo/Shutterstock.com)

キャッシュレスの王者「交通系ICカード」

 鉄道におけるチケットレスを推進しているのは、交通系ICカードである。近年では、スマートフォンに内蔵された交通系ICカードを使用する人も増えており、関東圏では改札機にスマートフォンをタッチする人も多く見られる。

1ページ目を1分でまとめた動画
 SuicaやPASMOといった交通系ICカードは、スマートフォンという「小型コンピューター」と連動することでさまざまな機能を持つようになった。

 たとえば、アプリから使用した金額や乗車した区間を確認でき、定期券も券売機に並ばずに購入できる。さらに、Suicaなら普通列車グリーン車の券も手元で入手可能となり、JR東日本を中心とした新幹線のチケットレスサービスとの相性もいい。

 また、交通系ICカードは、市中のさまざまな商店で取り扱うことができる決済手段だ。コンビニチェーンではどこでも使え、安めの飲食チェーンでもほとんどで導入されている。少なくとも、1円玉を使用するようなチェーン店でキャッシュレス決済に対応していないところは珍しいのではないだろうか。

 交通系ICカードは、日本のキャッシュレスをけん引し、公共交通のチケットレス化を一気に推し進めた。しかしそれでも、キャッシュレス・チケットレスの手段を複数にしようという動きは進んでいる。

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“交通系ICカードにはない”、新たな決済方法のメリットとは
(Photo/Shutterstock.com)

乗車券・クーポン一体型に便利な「QRコード」

 QRコードは交通系ICカードのように改札機で入出場を記録し、料金を引き去るということはできない。さらに、QRコード決済の処理速度は、交通系ICカードよりもずっと遅く、混雑時の改札機で人が滞留することは容易に想像できる。

 それでも、鉄道会社はあえてQRコードを導入しようとしているのだが、どんな場合に「鉄道」と「QRコード」が容易に結びつくのだろうか。

 南海電気鉄道では、QRコードを利用した乗車券「南海デジタルきっぷ」を発売している。スマートフォンにインストールしたアプリにQRコードを表示させ、専用の改札機にかざすことで、鉄道に乗ることが可能だ。

 そのほかにも、往復乗車券やフリー乗車券、クーポンなどを一体にして商品を発売している場合もある。東急電鉄では、デジタルチケットサービス「Q SKIP」で「東急線ワンデーパス」などの乗り放題きっぷを発売している。

 乗り放題のパスなどに、QRコードが使用される傾向がある。鉄道の場合、QRコードでは「決済」をするのではなく、あらかじめ別手段で購入した上で、チケットとして「表示」させることで、紙のチケットをなくすという方向でいるのだ。

 私鉄などの改札では、QRコード読み取り部が目につくようになった。JR東日本でも、自動改札機の更新が進み、QRコード読み取り部を備えた改札機がさまざまなところに並んでいる。

 2024年度以降、JR東日本はSuicaを利用していない人でも駅の券売機や窓口を経由しないで乗車できるように、QRコードを使用したサービスを順次開始するという。この年度の下期に東北エリアに導入、その後エリアを拡大する予定だ。

 さらに、JR東日本では、「えきねっと」で乗車券類を予約・購入する際にQRコードで乗車することを選択できるようになり、えきねっとアプリに表示させたQRコードを自動改札機にかざし、新幹線も在来線もシームレスに利用できるようにするという。

 自動改札機のある駅では改札機にQRコードをかざし、ない駅ではアプリ上で自ら入出場の処理をする。無人駅から乗って、途中に新幹線や特急、無人駅で降りるという際には、活躍しそうなシステムである。

 JR東日本は、「みどりの窓口」を減らす一方、こういったチケットレスを充実させようとしている。ほかにも、改札機やSuicaをセンターサーバのシステムに置き換えることを進めており、そのシステムの中でQRコードが一種の「鍵」のようなものになるのだろう。

 スマートフォンにQRコードを表示させ、それを「鍵」のようなものにする。自動改札機で交通系ICカードのように決済はできないけれども、状況によっては使い勝手のいいものになる。それが、鉄道でのQRコード決済の最適な使用法といえる。 【次ページ】インバウンド対策に必須? クレカ「タッチ決済」

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