SaaSの活用と「モバイルトランスフォーメーション」
デジタルトランスフォーメーション(DX)やOMOを実現するには、企業にデジタル文化を根付かせることが重要だ。もちろんそれは簡単ではないが、その第一歩となるのが、システム変革のために「クラウド」を活用し、どんどん「モバイル」で仕事をすることだ。長谷川氏は、まず、自社の業務をSaaS(業務システム領域でのクラウドサービス)の導入によって推進することを勧める。
「ネット系企業のベンチャーは、会計、人事、勤怠管理……などなど、基本的にすべてSaaSでシステムを運用しています。個人的には、基本的にすべてSaaSでよいと思っています。バックエンドの非競争領域に重厚長大なシステムを採用したら、開発コストとスピードの点で足を引っ張ってしまうからです」(長谷川氏)
こうした考えは、生産性や売り上げに直接寄与する、モバイルアプリの開発にも当てはまる点がある。たとえば小売業なら、店舗や業務で利用する独自アプリは、自社で開発し、なるべく早く顧客に対応できるよう、内製できる体制があったほうがいいだろう。ただし、情報システム部門はモバイルアプリ開発など、“スマホ周り”に必ずしも強くない。
一方、外部に委託するとコストがかかる。開発コストを抑えつつ、さまざまな施策をクイックに反映するなら、開発基盤とパートナー選びが重要になる。
「アプリ開発で重要なことは、簡単であることです。スクラッチで開発する領域はあっていいと思いますが、一般的な企業がアプリを作るなら、SaaSを活用してクイックに開発できるほうが絶対にいいはずです。SaaSではどうしても対応できないところは部分的に開発する、という考え方がよいと思います」(長谷川氏)
ヤプリの島袋氏が指摘するのは、企業の業務におけるスマートフォンなどモバイルデバイスに対する認識の違いだ。
「現在は、一般的に生活しているとPCを開いている時間よりスマートフォンを使っている時間のほうが圧倒的に長いでしょう。コンシューマーはスマホファーストなのに、なぜか企業はいまだにPCにこだわっている。仕事中にスマホを見ていたら怒られる企業もあるかもしれません。我々は、『モバイルトランスフォーメーション』を打ち出して、モバイルテクノロジーの民主化を実現したいと考えています」(島袋氏)
もちろん、すべてがモバイルに置き換わるわけではないが、モバイルアプリが活躍する領域や、その環境についてどのように考えればよいのだろうか?
この記事の続き >>
・モバイルアプリが活躍する領域は?
・アプリで実現する「薄く、なめらかなコミュニケーション」
・モバイルアプリでネットとリアルの垣根を取り払う