コロナ禍で変わった消費者が企業を見る目線
マザーハウスは「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を掲げ、2006年にバングラデシュからスタートした企業だ。ジュートという麻の一種を素材とするカバン工場からスタートし、現在はアパレル、バッグ、レザー小物、ジュエリーなどを扱い、素材開発から店舗運営までを一貫で手掛け、6つの国で生産した商品を4つの国で販売するまでに成長した。
国際機関で開発援助に携わる仕事をしたいと、24歳で単身、アジアの最貧国 バングラデシュに飛び込んだのが、創業者である山口 絵理子氏だ。その創業の物語は、本として出版されるほど波乱万丈なものであったが、現在のマザーハウスは、国内外に約40の直営店を運営する人気のアパレル企業である。
同社の代表取締役であり、チーフデザイナーとしても活躍する山口氏は、新型コロナウイルスがアパレル業界に与えた影響について、次のように述べる。
「お客さまの企業を見る目線が厳しくなったと感じます。プロダクトだけでなく、企業の姿勢や製品の背景にあるメッセージ、そもそも何のために作っているのかというところまで表現することが求められていると思います」(山口氏)
もちろん、直営店に力を入れている同社にも、コロナ禍は大きいインパクトを与えた。緊急事態宣言下では、店舗を閉めざるを得なかったからだ。さらに、世界6カ国に自社工場を持つ同社にとっては、生産現場への影響も大きかった。
「ただし、幸いなことに我々は素材調達から生産までの一連のプロセスが1つの国の中で完結できていました。このため、他の工場のように他国から素材が入ってこないから生産ができない、という事態は避けられました。とはいえ、密は避けなければならないので、工員数を約7割に減らして生産量を落として稼働を続けました」(山口氏)
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・マザーハウスがコロナ禍を新作で乗り切った理由
・コロナ禍で迎えたマザーハウスの「デジタル元年」
・デジタル化がものづくりに与えた影響
・デジタル戦略の2つの柱とデジタルに求められる“手作り感”