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- 2023/07/03 掲載
「Vision Pro」は値段高すぎ?アップル「MR/ARビジネス」が商業的に成功する確率とは
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
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Vision Proの次の打ち手とは?
アップルが公式発表したMRヘッドセット「Vision Pro」は、すでにさまざまなメディアで実体験レビューが実施されているが、その評価はおおむねポジティブなものとなっており、消費者の期待も高まっているようだ。しかし、価格が3,499ドル(約50万円、6月27日時点)とかなり高価であるため、実際に購入する人の数は限定されると見られる。Vision Proが出荷されるのは2024年の予定だ。アップルのVision Proが公式発表されたのは2023年6月6日だが、その存在は以前から知られており、2023年1月時点では、かなり具体的な情報がThe Informationやブルームバーグなどのメディアで報じられるようになっていた。関係筋の話によると、アップルはまず今年中にMRヘッドセット(Vision Pro)を発表し、その後早ければ2024年、または2025年に低価格MRヘッドセットの販売を開始する予定という。
一方、ブルームバーグはこの時点で、アップルが計画を大きく変更したとも伝えている。当初の計画では、MRヘッドセットの発売後に、ARグラスをリリースする予定であったが、ARグラスの開発を延期することになったという。
アップルは、MRヘッドセットの先の技術として、1日中着用できる軽量なARグラスの開発を目指しているが、技術的な課題に直面、計画を変更せざるを得ない状況になったようだ。アップルはARグラスの開発を進め、どのような展開を考えているのだろうか。
アップルが買収したAR企業「Mira」とは
Vision Proが発表された翌日2023年6月7日に、興味深いニュースが報じられた。The Vergeが報じたところでは、アップルはこのほどロサンゼルス拠点のARデバイス開発スタートアップMiraを買収した。この買収は、MiraのCEOのインスタグラムプライベートアカウントによる投稿と関係筋の情報から明らかになった。また、アップルもこの買収について認めている。Miraの買収額は公表されていないが、同社はこれまでに約1,700万ドルの資金調達を行っていたと報じられている。また、かつてアップルのデザイン責任者であったジョニー・アイブ氏が、Miraのアドバイザーの1人だったことを、Miraの元従業員が明らかにしている。
アップルが買収したMiraとはどのような企業なのだろうか。同社は、エンターテインメントと産業向けのARソリューションを開発するスタートアップだ。エンタメ向けには、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある「スーパー・ニンテンドー・ワールド」やロサンゼルスのユニバーサル・スタジオで展開されているアトラクション「マリオカート」向けのARヘッドセットを提供している。
一方、産業向けでは、米軍との約70万ドルの契約により、トラビス空軍基地向けに同社の「Prism Pro」ヘッドセットを提供している。基地の整備士は、このARヘッドセットを着用することで、各地の専門家と直接通信しつつ、ハンズフリーで整備を行うことが可能になった。
これらは事例の一部でしかない。アップルが買収したMiraの提供ソリューションや導入先の企業を知ると、アップルの買収の狙いが見えてくるかもしれない。 【次ページ】なぜアップルはMiraを買収した? ARビジネスに懸ける理由
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