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  • 2023/06/05 掲載

IT部門最大の課題は組織的学習、「ゲーム・デー」などDevOpsやSREに最適な4つの手法とは

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ITエンジニアの永遠の課題が「学習」だ。知識とスキル/能力はほぼ一体であり、中でもアジャイル開発に向けたDevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)などの実践では新たな知識が不可欠となる。ただし、IT部門の組織的な学習が一筋縄ではないことは周知の通り。そうした中、ガートナーは過去8年にわたり、企業がエンジニアの学習支援のために「実践したこと」とともに、「成功したこと」「成功しなかったこと」のデータを収集し分析した。ガートナー バイス プレジデント,アナリストのマンジュナス・バット氏が、その結果を基に、DevOpsやSRE へ取り組むうえで重要なIT部門における組織的な学習方法について、「ゲーム・デー」や「ペアリング」など4つの具体的な方法を解説する。

執筆:フリーライター 岡崎勝己

執筆:フリーライター 岡崎勝己

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組織的な学習法はいくつも存在する。それぞれの良しあしを理解し、自社に合ったものを選択することが大切
(出典:Gartner(2022年12月))

エンジニアを悩ませる“最大の課題”

 企業のITインフラストラクチャ&オペレーション(I&O)チームのリーダーを長年、悩ませている課題の1つが「チームメンバーのスキル不足」だ。ガートナーが22年に実施した調査でも、56%がこの項目を課題に挙げ、「プロセスの成熟度の欠如」「技術的な負債の管理」を抑えて、現状においても一番の頭痛の種であることが明らかになっている。

 ガートナー バイス プレジデント,アナリストのマンジュナス・バット氏は、「IT部門にとって学習は非常に重要な問題です。DXが進む中でのインフラ運用の効率化の策としてDevOpsやSREへの関心は高まり続けていますが、それらの実践にも新たな知識習得が欠かせません。エンジニアにとって知識とスキル/能力はまさに一体であり、それが不足した状況では与えられたミッションの達成は不可能です」と強調する。

 「学習する組織とは、未来を創造する能力を継続的に拡大する組織である」「競争相手より早く学ぶ能力こそが、持続可能な競争優位性である」とはピーター・センゲ氏の著書『The Fifth Discipline(邦題:学習する組織)』からの引用だが、この論に従えば、学習は企業の成長にも欠くことはできない。

 マンジュナス氏によると、エンジニアの学習を促す組織づくりのためには考慮すべきことがいくつかあるが、中でも個人の「学習意欲」と「相互学習のためのコミュニティ」、「学習のワークフローへの組み込み」の3つが効果を高めるうえで鍵を握るというという。

組織的学習に効果的な「4つ」の施策

 では、組織的な学習に向け企業はどんな施策を実施しているのか。この点については、「DevOps道場」(45%)、「社内プレゼンテーション」(41%)、「社内技術コンファレンス」(39%)「実践コミュニティ」(35%)、「ランチタイム勉強会」(25%)の順に実施率が高かった。

 ただし、「実施率が高いほど効果的だとは限りません」(マンジュナス氏)。

 その点を踏まえ、個々の学習施策の効果について7段階評価で尋ねたところ、今度は「ゲーム・デー」(6.3)を筆頭に、「ジョブ・ローテーション」(6.2)、「ペアリング」(6.1)、「DevOps道場」(5.9)などが高い評価を受けていた。

画像
組織的な学習法の実施率と効果は必ずしも比例するわけではない
(出典:Gartner(2022年12月))

 それら活動の中身を見ると、まずゲーム・デーとは、本番環境での障害や例外イベントを仮想的に体験し、参加者の自信を養うシミュレーションだ。チームやメンバーが万一の際に、各システムでどこまで対応できるかの確認と見極めに役立つ。

「ゲームを通じて学びが生まれ、隠れた弱みも発見できます。クラウド移行によりインフラ管理の自動化が進むことで、ゲーム・デーをより活用できるようになり、マイクロサービスなどを用いるアプリの近代化に大いに役立つはずです」(マンジュナス氏)

 次のジョブ・ローテーションとは異部署のメンバー2名が1組となり、役割の入れ替えを継続して幅広い知識を移転させる学習法だ。メリットは、各メンバーの好むタスクなどを判断できること。また、役割が入れ替わることで、日常業務の単調さも解消できる。アプリ開発メンバーとオペレーションメンバーなどが入れ替わることで、従来とはまったく異なるスキルと考え方、ひいてはより広い視野での判断力も養える。

「ただ、実施に際して恣意的なローテーションは厳禁です。これを守らなくては参加者の学習意欲が大幅に低下しかねず、その観点からも、ローテーションのプロセスは明確化すべきです。当然、参加者の途中でのオプトアウトも認めるべきです」(マンジュナス氏) 【次ページ】効果の高い学習プログラムのある共通項とは?

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