現在、「会社は誰のものか?」と問われれば多くの人は「株主のものだ」と答えられるでしょう。
しかしながら、15年くらい前は違ったのです。下の図にあるように1995年のイギリス、アメリカ、ドイツ、日本の経営者に対するアンケート調査結果を見ると「ほとんどの日本の経営者はステークホルダー(企業関係者)のものである」と答えているのです。
 | 会社は誰のものか? |
|
一方、2005年3月に日経新聞が経営者と証券市場関係者に実施したアンケートでは、約9割が「株主のもの」と回答したそうです。調査の対象や方法が違うため一概に比較はできませんが、日本の経営者の意識が大きく変わったと推測することはできると思います。
数字だけを見ると「日本の経営者の意識もアングロサクソン経営者と同じになった」といえます。
次に「株主への配当のためにリストラ(解雇)を行うか」との問いに対して、1995年の調査においては、日本の経営者がほぼ全員、「リストラはしない」と答えています。一方、英米の経営者のほとんどが「リストラする」と、つまり「社員よりも株主の利益を重視する」と答えているのです。
ただ、現在の派遣労働者切りや正規社員の解雇などを見ていると、もはや日本の経営者が株主利益よりも社員を優先するという状況は終わっているのではないかと多くの方が感じているのではないでしょうか。
 | 配当のためにリストラまでする? |
|
このように経営者のマインドが変わった大きな理由として、「会社制度の変更」が挙げられます。例えば、M&A(企業の合併・買収)の規制が変わり、会社がいつ買収されるかわからなくなると経営者は株価を気にせざるを得なくなります。また、配当にかかわる法制が大きく自由化されることで株主への配当も急激に増えているのです。
実際に2003年から2008年にかけて東証一部上場企業の配当金は2兆円から6兆円へと3倍に増えているのです。
 | 日本企業の配当額の推移 |
|
そして自社株買いも増えています。自己株式、いわゆる「金庫株」の取得が行われると何が起こるのか?
それは「株価の上昇」です。市場に出回る株数が減るので、当然株価は上がります。つまり自社株買いは、株価を上げるためで、株価が上がると喜ぶのは株主です。ある意味、株主のために行われるということもできます(色々な意義があることは承知していますが、ここでは話しをわかりやすくするためこの点を強調します)。
自社株買いの額を見るとこちらも2003年から2008年にかけて2倍以上になっているのです。アメリカでは、2006年に60兆円程度の自社株買いがあったとのデータを見たことがあります。日本の経済規模にすると約20兆円となります。私はこのままアメリカの会社・会計制度を導入し続ければこのくらいの金額になるのではないかと見ています。
ちなみにこれも2001年の商法改正で可能となったものです。
 | 自己株式の取得額の推移 |
|
このように2003年から2008年にかけて株主配当、株価を上げるための自社株買いは急激に増えています。一方で利益などが人件費に使われる割合である「労働分配率」を見ると、2002年ころから下落傾向にあるのです。
株主の利益は配当や自社株買いで増える一方、働く社員への配分率は減っているのです。実際の平均所得額を見ると2000年代に入って減少傾向にあるのです。
 | わが国の労働分配率の推移 |
|