• 会員限定
  • 2012/07/18 掲載

中国自動車保険の開放を勝ち抜く、3つの課題と3つのチャネル戦略

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
2012年5月、中国はそれまで自国資本の保険会社にしか認めていなかった自動車の強制保険業務(日本でいうところの自賠責保険)を、外国資本の保険会社にも開放した。失速も伝えられる中国経済だが、国民の自動車保有台数は飛躍的に伸びており、今回の市場開放は日本の損保会社にとっても大きなチャンスと言える。しかし同国の損保市場には日本と大きく異なる事情もあり、参入して必ず儲けが出るような構造にはなっていない。これから進出を考える日本の損保会社には、どのような取り組みが必要となってくるのだろうか。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

大きな成長を続ける中国の損害保険市場

 中国の損害保険は19世紀初頭、まだ清朝の時代に英国商人が海上保険を専門とする損保会社を設立したのが始まりと言われる。しかし20世紀半ば以降の大躍進政策(1958~1960年)や文化大革命(1966~1976年)といった国の大転換期にその機能がほぼ停止、その後、1979年に損害保険の作用と効果が確認され、再スタートを切ることになった。

 元々中国の損保市場の規模は非常に小さかったが、近年の経済成長を受けて、2000年以降の10年で5倍以上の伸びを示しており、収入保険料は日本円換算で5兆円近くにまで達している。

「日本の損保市場は7兆円。GDPだけでなく、損保規模でも拮抗するようになってきている。」(野村総合研究所 未来創発センター 金融・社会システム研究室長 広瀬真人氏)

画像
中国の収入保険料の推移とその構成
(出典:野村総合研究所,2012)


 また中国の損保の中で最も収入保険料が多いのが自動車保険で、全体の約8割を占めている。その背景にあるのが自動車保有台数の急増で、2010年の時点で自家用車・商用車を併せて1億3700万台以上、将来的には米国の保有台数(約2億8500万台)を抜く可能性も秘めているという。一方の日本は約7800万台で、ここ10年ほぼ横ばいだ。「中国はまさにこれから自動車保険の伸びが大きく期待できる環境下にある」(広瀬氏)というわけだ。

画像
中国の自動車保有台数の推移
(出典:中華人民共和国国家統計局編「中国統計年鑑」2011年および
自動車検査登録情報協会「自動車保有台数の推移」よりNRI作成)


 周知のように日本の自動車保険は、自動車の運転者すべてに加入が義務付けられる自賠責保険と任意保険の2本立てだが、これは中国でも同様で、このうち自賠責保険に相当するのが強制保険だ。

 中国ではこの強制保険の運用を2006年から始めたが、当初取り扱うことができたのは中国資本で、中国保険監督管理委員会(保監会)の許可を得た損保会社のみだった。日系あるいは外資は独資で損保会社を設立することは可能だったものの、支店の設立には制限があり、また取り扱うことができる自動車保険は任意保険だけだった。

 また日本には、任意保険の引受保険会社が自賠責保険も含めて保険金を支払う一括請求制度があるが、中国にはこれがなく、そのため自動車保険の契約者の多くは、保険金請求時の利便性を考慮して、任意保険と強制保険を同じ損保会社で加入しているという現状もあった。

「こうした状況の中で強制保険の外資開放が決定した。日本の各損保会社は、中国での本格的な事業展開に向けて準備を進めている。」(広瀬氏)

 強制保険の外資開放は、2012年3月30日の国務院令618号において、2006年7月1日に施工された強制保険に関する条例が改定され、2012年5月1日から施行となったものだ。これにより、中国資本以外の企業でも、保監会の認可を得て、強制保険が取り扱えるようになった。

【次ページ】日本とは異なる事情を持つ中国の強制保険市場

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます