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  • 2014/11/20 掲載

チームラボ 猪子 寿之氏が語るメディアアート 東京五輪を鑑賞から体験するイベントへ

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新しいメディアやテクノロジーを用いて表現するアートはメディアアートと呼ばれ、今や美術館を飛び出して、新たな可能性を見せている。特に都市空間は、その恰好の媒体となりつつある。10月8日に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催されたInnovation City Forumのスペシャルセッションでは、チームラボ 猪子 寿之氏が2020年に開催予定の東京オリンピック開会式や演出のアイディアを紹介したほか、ミシガン大学 グナラン・ナダラヤン氏、森美術館館長 南條史生氏、慶應義塾大学大学院 特任教授 水口 哲也氏らとともに、都市とメディアアートの可能性について展望を語った。

執筆:フリーランスライター 吉田育代

執筆:フリーランスライター 吉田育代

企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。

アジアに続々出現している斬新なメディアアート

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ミシガン大学
ペニー・W・スタンプス アート&デザイン校 学長
グナラン・ナダラヤン氏
 グナラン・ナダラヤン氏は、ミシガン大学ペニー・W・スタンプス アート&デザイン校の学長である。過去には、芸術、科学、技術を通じた多様な文化活動を促進する国際非営利団体 ISEAの年次シンポジウムでアートディレクターを務めたこともあり、世界のメディアアート活動の動向に詳しい。

 同氏は講演の中で、メディアアートをテクノロジーやアイデアを駆使したアートワークと定義したうえで、近年めざましい活躍を続けているアジアのアートグループを多数紹介した。

 「Sarai Media Lab」は、インドのニューデリーに拠点を置くアーティスト集団だ。この集団は過去10年間にわたり、都市、情報、社会、技術の間におけるインタフェースのあり方を提起し続けている。そのなかにCity as Studioというまさに都市全体をスタジオと捉えようという試みがあり、見慣れた風景にアートな仕掛けを施した意欲的な作品を発表した。

 香港、台湾をベースに活動する「Dimention+」は、街の中に大きな箱を置いた。箱にはタッチセンサーが仕込まれており、人々が箱を抱きしめるとふたが開き、中に仕込まれたカメラが顔をのぞかせ、人々の表情を撮影する。彼らはこれをhugging arts(抱きしめる芸術)と名付けた。


 また、ニューデリーのアーティスト集団である「CAMP」は、ロショナラという産業化の波に大きな変貌を遂げつつある街のツーリストマップを制作。それとともに自転車タクシーであるリクシャのドライバーを訓練して、彼らが走りながら街の物語を語れるようにした。目的は、街の再生である。

 こうしたメディアアートを紹介したのち、同氏は「テクノロジーを使うというと、作品はどんどん複雑になる傾向があるが、メディアアートにとってそれは重要なことではない。テクノロジーはツールにすぎない。あくまで焦点は人やコミュニティに置くべきだ」とセッションを締めくくった。

日本の“ウルトラテクノロジスト集団”チームラボ

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チームラボ代表
猪子 寿之氏
 次に登壇したのは、チームラボの猪子 寿之氏だ。

 チームラボは、東京大学・東京工業大学の大学院生・学部生が集まって立ち上げたウルトラテクノロジスト集団で、サイエンス、テクノロジー、デザイン、アートの専門家がそれぞれの境界を曖昧にしながら「実験と革新」をテーマにものづくりをしている。その領域はプロダクト、イベントプロデュース、アート、建築と非常に幅広く、その全容と正確な社員数は、代表の猪子氏ですら把握できていないという。

 同氏も、チームラボが手掛けてきた多数の作品を紹介した。2014年7月から8月にかけて香川で行われた「香川ウォーターフロント・フェスティバル」では、アートワークの一環で「ぐるぐるリール」イベントを行った。これはスマートフォンを釣り竿のリールに見立ててグルグルまわし、ほんとうの瀬戸内海からデジタルの魚を釣り上げる参加型の釣りゲーム。夏休み、多くの子供たちが熱狂したという。


 また、チームラボは次元の高いアート作品にも挑戦している。2014年8月、東京都現代美術館20周年を記念して行われたナイトミュージアムでは、デジタルインスタレーションとして滝水の流れをLEDで精巧に再現した。


 さらに都市のメディアアートの代表として、同氏はハウステンボスの事例を挙げた。LEDで木々をライトアップしたプロムナードなのだが、その色は人がそばを通ると変わり、ある木の色が変わるとその隣の木の色も変わる仕掛けが施されている。もともとそばに街灯があったのだが、この作品の設置をきっかけに撤去された。猪子氏は「デジタルが必要な機能を担保することで、街全体でアートを体現することができる」と語った。

 この考え方を持ってすれば、2020年の東京オリンピックも「ただ鑑賞するイベントから参加・体験するイベントへと進めることができる」と同氏は訴える。スマートフォンに聖火アプリをインストールし、本物の聖火リレーが近づいてくると点火する、競技中の選手をフォログラムとして街の中に出現させ、そのレベルの高さをみんなで実感するなどといったアイデアを紹介した。

【次ページ】アートとエンターテインメントの間で、どうバランスを取るか

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