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2016年01月19日

現代のビジネスに「孫子の兵法」を活かす(前編)

マッキンゼーの「7S」と孫子の「五字七計」を比較 古典からビジネスを読むポイント

数多くの経営指南書において指摘されているとおり、孫子兵法は現代における企業経営にあてはめることが可能である。しかし問題は、これが直感に馴染み過ぎて、細かい部分の検討をせぬまま飲み込まれてしまいがちである、ということだ。あえて細部にこだわって読み進めることによって、その精神や骨法に迫らなければ、皮相的な理解に留まってしまい、「生兵法は大怪我のもと」にもなりかねない。今回は、現代のビジネスに「孫子の兵法」を活かすための方法を前・中・後編にわたって考えてみたい。

執筆:人材・組織コラムニスト 後藤洋平

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人々は孫子の何に痺れ、憧れてきたのか

 「五事七計によって敵国と自国を比較すると、実際に戦わなくても勝敗を予言することができる」という内容は、少し孫子をかじったことのある人であれば、誰もが聞いたことがある話である。

 孫子といえば、いかなる解説書でも必ず冒頭で取り上げるのが「五事七計」だ。孫子を解説する書のなかで、これを取り上げないものは存在しない。また、これの解説を後回しにするものも見たことがない。

 孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。ゆえにこれを経るに五事をもってし、これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。

(計篇)

 これこそ名著「孫子」の冒頭である。戦争とは、国の存亡にかかわる一大事なので、「道、天、地、将、法」の五つによって分析をしなければならない、ということが語られる。

 すべての解説書が「五事七計」を必ず最初に取り上げるのは、ただこれが原文の冒頭にあるからというだけではない。これぞまさしく「ザ・孫子・オブ・孫子」といってもいいような、この思想の骨格を成しているということこそが、あらゆる解説書でこれが最初に取り上げられる真の理由である。

 第一のポイントは、「フレームワークによって考えよ」という発想を提供しているという点だ。

 「道、天、地、将、法」によって国を分析せよ、というこの発想、マーケティング用語の「3つのC」や経営分析用語の「7つのS」を髣髴とさせないだろうか。

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マッキンゼーの「7S」と孫子の「五字七計」を比較した場合、その違いと共通点はどこにあるのか?


 髣髴とさせるどころか、「現実のなかから物事を抽象化させて、一般的に通用するものの見方を見出す」という意味において、今日の国家運営、企業経営において繰り広げられている思考の方法とこれは、まったく違いがない。二千五百も前の時代に書かれた書物のなかに、こうした内容を見出した瞬間、その新鮮さに驚くのである。

 もうひとつのポイントは、「実際に戦わなくても勝敗を予言することができる」というところである。これぞ頭脳派、計算派の面目躍如たる言葉だ。このフレーズが意味するものとは、思考の勝利、マネジメントの勝利である。歴史上の孫子愛読者はそこに痺れ、憧れてきたのである。

【次ページ】安易な「孫子=MBA経営学論」に意味はなし

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