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2016年02月15日

引越大手4社を比較、なぜ日通はサカイにもアートにも負けたのか

2月になり、春の引越シーズンも間近。引越サービスのトップ企業と言えば、運送業大手が兼業する日本通運、ヤマトHD(ホームコンビニエンス事業)と、引越専業のサカイ引越センター、アート引越センター(アートコーポレーション)の4社。トレードマークで言えば「ペリカン」「クロネコ」「パンダ」「0123」だ。引越業界はかつてのサービス競争のアイデアが出尽くした感があり、大手は品質、見積り、営業戦略などでしのぎを削る勝負になっている。それに伴って、主戦場も利益率の高い法人営業や成長性の高いネット販売などに広がりを見せている。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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そろそろ引っ越しシーズン。2015年は12年ぶりに増加したが…


日本通運はサカイ引越センターに「売上ナンバーワン」の座を譲った

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 引越の市場規模は現在、年間4,500〜5,000億円と推定されている。大きそうに見えて、宅配便の市場規模約2兆円の4分の1程度に過ぎない。

 総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、国内の人の移動(市区町村間移動者数)は高度経済成長時代の1973年の853万人がピークで、当時の引越市場の規模は6,000億円以上あったと推定されているが、2015年は504万人で約4割減っている。2015年に12年ぶりに増加に転じたというから、引越市場は長期低落傾向が続いてきたことになる。

 その間に、引越業界は大手による寡占化が進んだ。最大手の4社(日本通運、ヤマトHD、サカイ引越センター、アート引越センター)の2014年度の引越部門の売上高を合計すると2,413億円で、市場規模のほぼ半分のシェアを占めている。4位と5位の間は売上高で約200億円の大きな開きがある。

 その大手の業界地図は最近、大きく変動した。2010年度は日本通運が頭一つ抜けてトップで、テレビCMで上戸彩さんが言っていた通り「売上ナンバーワン」だったが、サカイ引越センターが躍進して2013年度にそれにトップを譲った。さらに、引越取扱実績が5.0%減で600億円を割り込んだ2014年度はアート引越センターにも抜かれて3位に後退した。

 その間、ヤマトHD(ホームコンビニエンス事業)はずっと4位につけている。日本通運は2015年度の引越の売上目標を650億円に定めてこの春、巻き返しを図っている。

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引越大手4社の売上高の推移(単位:億円)


 利益率でも、日本通運は引越専業の2社にリードされている。引越部門が属する国内複合事業セグメントの売上高営業利益率は2014年度は2.45%で、2015年度の見通しは2.9%。日本通運では目標を3%に定めているが、サカイ引越センターの2014年度実績はその約3倍の8.9%もある。

 アート引越センター(売上高経常利益率)は6.8%で、これも2倍以上。ヤマトHDのホームコンビニエンス事業は、2012年度までは営業赤字だったこともあり、売上高営業利益率は1.2%と少ない。日本通運も、まだ「売上ナンバーワン」の座にあった2012年度の売上高営業利益率は1.0%しかなかったが、企業努力によってその約2.5倍に伸ばした。それでも専業2社の高収益体質には遠く及ばない。

 過去4年間の引越業界大手の競争は、サカイが躍進してアートもそれを追いかけ、その専業2社の攻勢に日通が売上トップから追い落とされた。ヤマトは「独自の戦い」だった。利益面では売上高以上に、日通は専業2社に大きな差をつけられている。

アイデア勝負ではなく体力と戦略の勝負

 運送業にとって引越が「現金商売のおいしい仕事」だったのは昔の話。見積りで他社と比べられて叩かれ、受注できても当日は「アルバイトがまだ来ない」「家具が出せない、入らない」「うっかりモノを壊した」「近所の人が文句を言ってきた」「事故で渋滞」など不測の事態に泣かされ、終わった後は「サービスが悪い」などクレームで叩かれる。

 見積りがシンプルで荷物もクレームも比較的少ない学生や単身者と比べると、家の中がモノであふれ返り、複雑な見積りを作成する段階からコストパフォーマンスにうるさく、作業中に子どもがケガをするなど不測の事態が起きやすく、後で細かいクレームをつけられやすいファミリーは、割の合わなさ満点。

 それでも、「オフィスの引越」「転勤、単身赴任に伴う引越」など、カネの出所が個人ではなく法人の引越は、景気回復で経費節減ムードがゆるみ、おいしい部類に入る。

 引越会社にとって管理しやすく、利益を出しやすい順番で言えば、「オフィスの引越>転勤・単身赴任>学生や単身者など小口の引越>ファミリー(少人数)>ファミリー(多人数)」という図式になるだろう。この不等式は、引越業界各社の戦略をみる上で重要だ。

 かつては、「女性スタッフの起用」「食器収納専用箱」「サロンカーで人も運ぶ」「自家用車も載せて運ぶ」「家電を注文すれば引越当日に設置作業する」など、どちらかと言えば不等式の下位にあるファミリーを相手にしたアイデア競争に重点が置かれ、メディアをにぎわせた。それで最も注目されたのがアート引越センターだった。

 しかし、斬新だったアイデアもアッと言う間に他社が追随し、現在、引越に関して考えうる限りのアイデアはほとんど出尽くした感もある。アイデア勝負の時代はもう過ぎ、財務も含めた総合力を活かし、同じサービスメニューでいかに安い見積りを出して他社に勝てるかという体力勝負や、いいターゲットを狙い撃ちし、いかに効率的に収益をあげられるかという営業戦略に、主戦場が移っている。

【次ページ】高収益を武器に日通の牙城を侵食したサカイ

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