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2016年03月31日

キヤノンの東芝メディカル買収、画像診断事業参入に「6655億円」はお得な買い物か?

不適切会計問題に揺れる東芝は、世界4位の医療機器メーカーの東芝メディカルシステムズ(以下、東芝メディカル)を6655億円でキヤノンに売却しました。東芝メディカルが得意とする画像診断事業は世界的な成長が見込まれているため、デジタルカメラ事業が縮小するキヤノンにとって、新しい成長力を確保する戦略的な投資になります。この買収によってキヤノンは、画像診断事業参入という戦略転換を成功させることができるのでしょうか。

執筆:佐藤 隆之

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“成長株”の東芝メディカルは東芝グループで唯一の黒字だった

 キヤノンが買収を発表した東芝メディカルは、栃木県に本拠を置く、医療機器の世界的大手企業です。CT、MRI、超音波エコー、X線などの画像診断装置の製造・販売に強みを持ち、医療機器市場では世界4位の地位を確立しています。また、日本ではCTにおいて市場シェア60%、超音波エコーでは35%を占めており、どちらも業界1位を獲得しました。

 東芝にとって、東芝メディカルは“虎の子”、あるいは“将来の飯の種”と評されるほど、将来的な成長が期待されていました。2016年3月期の業績予想では、電力・社会インフラや半導体が300億円近い赤字、PC・家電では1400億円の赤字を記録しているのに対し、東芝メディカルが中心となるヘルスケア部門は150億円の黒字が見込まれています。売上高では4000億円と、比較的小さいものの、唯一、利益を計上している事業だったのです。

 最も将来性がある事業だからこそ、東芝はキヤノンに対して高値での売却が可能になりました。約6655億円での売却は、現在の収益性に対して割高であるとの見方もありますが、それに見合うだけの価値が東芝メディカルにはあると評価されているのです。売却で得た資金を使って、東芝は以前から取り組んできた事業に集中を強めていくと見られています。東芝は白物家電事業を中国企業「美的集団」へ売却する方針を示しています。そのため、原子力発電を含むインフラ事業や、パソコン・半導体・ストレージといったハイテク製品が事業の中心となっていくでしょう。

キヤノンの東芝メディカル買収は割高か?

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 成長が期待される東芝メディカルですが、買収を決定したキヤノンにとって、どのような位置づけとされているのでしょうか。デジタルカメラを始めとする画像処理を得意とするキヤノンにとって、医用画像処理の開発は相乗効果が見込めます。医療分野は規制が厳しく参入障壁が高いため、簡単には参入できません。医療分野に興味を持つキヤノンにとって、東芝メディカルは“渡りに船”といった案件だったのではないでしょうか。

 キヤノンは2016年に「新5カ年計画Phase V」として野心的な成長戦略を描いています。2015年に3.8兆円だった売上高を2020年までに5兆円以上にする計画です。しかし、デジタルカメラがスマートフォンにとって代わられつつある現状等を考えると、既存事業だけでの成長には困難がありました。そこで、大胆な新規事業への投資が求められるようになってきたのです。実際、キヤノンは「戦略的大転換を果たし、新たなる成長に挑戦する」ことを基本方針として宣言しています。

 医療事業はキヤノンの将来事業の一つです。すでに遺伝子検査装置の事業化が始まっており、それに加えて、東芝メディカルの画像診断事業が推進されていくでしょう。キヤノンが強みを持つ生産技術や販売網によって製品の競争力を高めたり、ITを組み合わせた事業を始めたりするなど、今後の幅広い展開が見込まれます。また、さらなる買収を行い、医療分野への進出を加速させる可能性もあります。戦略的な観点から見ると、“割高”と称された約6655億円の東芝メディカル買収も、キヤノンにとっては納得の数字だったのでしょう。

【次ページ】世界の画像診断市場はGE、シーメンス、フィリップスが牽引

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