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  • 2016/08/16 掲載

ロボットブームで分かった、Pepperに「できること」と「できないこと」

「V-Sido OS」のアスラテックに聞く

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2年前まで100に満たなかった新規ロボットの開発プロジェクトは、現在は毎月30以上もプロジェクトが立ち上がり、2016年には年間で300以上のロボットが開発されている。このロボットブームの中で、独自のポジションを確立しつつあるのが、ロボットベンチャー「アスラテック」だ。チーフロボットクリエイターの吉崎 航氏によって開発された「V-Sido OS」(ブシドーオーエス)を事業の中核に据え、「人々とロボットが共存する社会」の実現を目指す同社に、現在のロボットブームの状況や今後のロボットビジネスの将来性について話を聞いた。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。


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ロボットブームで広がる「テレプレゼンス」の可能性

ロボットOS「V-Sido OS」が様々なロボットに搭載される日

 アスラテックのV-Sido OSは、複数のアクチュエータの動きを制御することで、全身の動きをつくり出すOSである。V-Sido OSの特徴は、電動、油圧、空圧などアクチュエータの種類や、ロボットのサイズ、形状、用途などを問わず、多様なロボットを制御できることだ。

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アスラテック
事業開発部
部長
羽田卓生 氏

 このOSは、二足歩行ロボットのためのシステムというイメージがあるが、実はそれ以外の多くのロボットにも実装されている。同社の羽田卓生 氏は「V-Sido OSが発表されてから2年が経ちますが、我々の最終目標はこのOSが量産されることですので、まだ道半ばの準備中というところです。現在、対応ロボットは12種類まで増え、現在進行の案件も多く、着々と準備は進んでいるところです」と語る。

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 同社では現在、V-Sido OSを利用したロボットを3つのカテゴリに分類している。V-Sido OSをロボットにネイティブで実装して動作させる「Works with V-Sido」が8機種、元のロボットに後付け的にV-Sido OSを実装して動かす「Compatible with V-Sido」が4機種、さらにライトに対応したり、クリエイター向けにカスタマイズする「Powered by V-Sido」が2機種ほど実績がある。

 Works with V-Sidoの分類には、同社によるコンセプトモデルの二足歩行ロボット「ASRA C1」(アスラ・シーワン)や、水道橋重工の巨大なロボット「クラタス」、災害時に汎用建設機械(バックホウ)の運転席に乗せて遠隔操作を実現する富士建の「DOKA ROBO/ROBO2」など。

 また、Compatible with V-Sidoとしては、不気味の谷を超えたココロの「アクトロイドシリーズ」や、ロボットゆうえんちが運用する上体ヒューマノイド型ロボット「ナビゲーションロボット」などがある。

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V-Sido OSを活用したロボット分類。「Works with V-Sido」「Compatible with V-Sido」「Powered by V-Sido」で計14機種がある

ロボットで「できること」と「できないこと」

 そして、今回新たに発表されたのが人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を遠隔操作する「VRcon for Pepper」(ブイアールコン・フォー・ペッパー)だ。VRcon自体はプロダクトの分類だが、これを利用したVRcon for Pepperや「テレプレゼンス for Pepper」は、Powered by V-Sidoに属する。

 今回発表されたVRcon for Pepperは、Pepper単体では対応できなかったことを、スマートフォンやタブレット、PCなどからインターネット経由で遠隔操作することにより実現できるようにした。

「Pepperと操作端末とのコネクションには、リアルタイムで双方向通信を実現する『WebRTC技術』を採用しており、これにより遅延が少ない通信が可能です。ユーザーの操作に合わせてPepperが自然に動きますが、これはこれまで培ってきたV-Sidoのノウハウが生かされています」と語るのは、同社の川口 直哉氏だ。

 VRcon for Pepperでは、ロボットの動作だけでなく、映像や音声を使ったやり取りもできる。遠隔地にいるオペレータの声を、Pepperのスピーカーから出力したり、オペレータがキー入力した内容を、Pepperで読み上げる機能なども備えている。このようにVRconを使うことで、リアルタイムな動きや会話が可能になる。

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「Pepper World 2016 夏」で紹介されたVRcon for Pepper。ゴーグルを装着し、Pepperの視点で見たり、Pepperから話ができるデモブースが盛況だった
「『Pepper World 2016 夏』の出展では、VRconのデモが来場者に好評でした。お客様にゴーグルを装着してもらい、Pepperのカメラ映像を見たり、自分が話した言葉をPepperで出力したり、自分の動きをPepperに同期させたりと、Pepperが分身のように使えるのです」(川口氏)

 VRconがウケた理由について、羽田氏は「VRという面白さもありますが、従来のようにAIでつくり込まない発想がウケたのかもしれません。また発表の時期もちょうど良かったと思います。Pepperで実現可能なことと、可能できないことが、お客様に認識していただけるようになったからです」と振り返る。


【次ページ】「にぎやかし」から「実用」へ、いまのPepperができること

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