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- 2016/10/21 掲載
広島大学、執念のITコスト削減術 “国立”にも関わらずAWSと直接契約
企業情報システムや学生プログラミングコンテストなど、主にIT分野で活動を行っているライター。著書に「日本オラクル伝」(ソフトバンクパブリッシング)、「バックヤードの戦士たち―ソニーe調達プロジェクト激動の一一〇〇日 」(ソフトバンクパブリッシング)、「まるごと図解 最新ASPがわかる」(技術評論社)、「データベース 新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」(共著、英治出版)がある。全国高等専門学校プログラミングコンテスト審査員。趣味は語学。英語と韓国語に加えて、今はカンボジア語を学習中。
着実に広がり続ける広島大学のクラウド活用
当初、大学からは直接インターネットからVPN接続でAWSへアクセスしていたが、昨年AWSのダイレクトコネクトがSINET経由で利用できるようになったため、こちらでの利用を開始した。現在、同学ではAWSアカウント専用の仮想ネットワーク Virtual Private Cloud(VPC)を5つ所有しているが、そのうち2つをダイレクトコネクトで使用している。すべてをそうしないのは、アプリケーションによってはSSL通信(HTTPS通信)のみでもセキュリティを担保できるものがあると判断したからである。
一時的なアクセス急増に即応でき、コストも"見えない"のが魅力
同学にとってクラウドを活用する利点とは何か。それを端的に示す事例として、相原氏は入試合格発表と理工系学部の研究用ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)環境を紹介した。近年、入試合格発表のメイン舞台はWebサイトになっている。合格発表当日の発表時間12時になると、公式Webサイトへ普段の100倍に上るアクセスが押し寄せるといい、その状況を示したものが図2である。
これを見ると、公式Webサイトトップページの搭載されたサーバが最も重要であることがわかる。12時のプラスマイナス10分間、4,500アクセス/秒のバーストアクセスが起きている。このサーバが能力不足だと大幅なレスポンス低下、最悪サイトダウンが起き、アクセスユーザーは合格者の受験番号が記載されたPDFファイルにたどり着けないことになる。そのため、これまで同学では数日前からWebサーバを追加し、キャッシュを増設するなど入念な準備が必要だった。しかし、現在は2日前にAWS上でWebサーバとキャッシュサーバのインスタンスタイプをt2.smallからx3.largeに構成変更し、キャッシュサーバの数を倍増するだけである(図3、図4)。
そして、合格発表の翌日には構成を元に戻す。AWSに移行したことによって担当職員の対応業務は解消した。そして何より、コスト削減が実現した。相原氏は語る。
「ほぼ数日間の変更であるため、合格発表対応にコストは見えなくなりました。これがオンプレミスだと数倍のコストがかかります。効果絶大です」(相原氏)
【次ページ】 コスト抑制の秘策は「随意契約」による「直接契約」
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