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2016年11月08日

スペインMBA「ESADE」発の起業支援、先進国こそ「社会起業」が必要だ

ワークライフバランスの実現、若者の貧困。昨今のメディアを賑わす話題から多くの社会問題が浮き彫りになります。慈善活動ではなく営利企業のビジネスモデルを使って社会問題を解決する手法は社会起業と呼ばれ、先進国・発展途上国を問わず、アイデアや資金が集まり始めました。現在スペインでは、世界的に有名なMBAビジネススクール「ESADE」や大手銀行の「BBVA」などが後ろ盾となって、社会起業支援プロジェクト「Momentum Project(モーメンタム・プロジェクト)」が活動しています。2011年の設立以来50社以上の社会起業を助け、中南米諸国へも支援の輪を広げてきました。

執筆:佐藤 隆之

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スペイン発「社会起業支援プロジェクト」の社会、環境に優しいビジネスモデル


スペインの有名MBAと大手銀行が起業家支援するプログラム

 先進国に共通して存在するのが、多くの社会問題や環境問題です。こうした社会や環境に配慮しながら経済的な成果を上げる事業、あるいはビジネスモデルは「社会起業(ソーシャル・ビジネス)」と呼ばれています。

 スペインには、銀行やMBAビジネススクール(経営大学院)などと協力し、社会起業を支援する「モーメンタム・プロジェクト」という起業家支援プログラムがあります。これは投資、宣伝、教育訓練、パートナーシップの観点で社会起業を支援するものです。厳しい審査をくぐり抜けた企業は1年間、モーメンタム・プロジェクトからの支援を受けられ、経営者、起業家や学生インターンといった人脈が得られます。

 モーメンタム・プロジェクトは、欧州で有数のMBAビジネススクールである「ESADE(エサデ)」と、国内第二位の規模を持つ大手銀行の「BBVA」が主催しています。さらに、大手コンサルティング会社のPwC(プライスウォーターハウスクーパース)も支援に参加しました。モーメンタム・プロジェクトは豊富な人材とノウハウ、資金力を背景に、社会起業を支援するプロジェクトなのです。

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スペインの有名MBAスクール「ESADE」


 モーメンタム・プロジェクトからは、スペインの隠れた強みが見て取れます。スペインには前述のESADEの他に、「IESE(イエセ)」、「IE(アイイー)」といったMBAビジネススクールが存在し、経営層教育に力が入っています。また、BBVAと共にスペインを代表する「サンタンデール銀行」は国際的にも存在感を発揮し、総資産では三井住友銀行と同程度です。

モーメンタム・プロジェクトのコンセプトとは

 モーメンタム・プロジェクトの理念は、参加する企業を選抜する過程によく表れています。まず、応募者のビジネスモデルには「社会や環境に良いインパクトをもたらし、かつ、製品やサービスに新規性があること」が求められます。また、寄付に頼るのではなく経済的に自立できるよう、利潤をもたらし、横展開が容易なビジネスモデルが好まれます。これらの条件を満たした、優れた能力・経歴を持ったチームがモーメンタム・プロジェクトの支援対象に選ばれるのです。

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スペイン発の社会起業支援プログラム「Momentum Project(モーメンタム・プロジェクト)」とは


 2011年の設立以来、モーメンタム・プロジェクトはスペインで50社近い企業を支援してきました。さらに、中南米のスペイン語圏へと国際展開を進め、メキシコでは30社、ペルーでは4社の社会起業の発展に力を尽くしています。業種は多岐にわたり、貧困・教育・リサイクル・障がい者就労・有機農業といった分野の企業が参加しました。

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Roba Amigaの古着回収ボックス

 2006年にバルセロナで創立された「Roba Amiga(ローバ・アミガ)」はモーメンタム・プロジェクトの支援を受けた一例です。「友達の服」を意味する同社は中古服のリサイクルを手掛けており、スペイン国内250の地域に中古服収集のためのコンテナやトラックを設置しています。年間6000トンの衣服を収集し、40%の業界シェアを占めるに至りました。

 収集した衣服は国内店舗やアフリカへの輸出を通じて安価で販売され、3億円以上の売り上げを上げます。衣服のリサイクルを通じて、環境資源の節約やCO2排出の削減に貢献しています。また、約150人の従業員のうち、約半数は障がい者などの一般的には就労が難しい人たちが占めており、労働市場での社会貢献も行ってきました。

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Roba Amiga(ローバ・アミガ)の実店舗「Botiga Amiga」


社会起業は発展途上国の課題だけを解決するものではない

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 社会起業が必要なのは発展途上国だけではなく、先進国でも同じです。企業や慈善団体の手が届かない層が存在するため、社会貢献を目指しつつも市場原理に基づいて活動する企業が必要になるのです。国連が、健全な社会を実現するために必要な領域として定義したのは、貧困・飢餓の解消、健康の向上、男女平等、水やエネルギー資源の確保などが含まれます。スペインでモーメンタム・プロジェクトが取り組んでいる問題は、日本などの先進国でも共通する問題と言えるでしょう。

 起業支援プログラムは、営利企業では多数の成功例が存在します。米国のYコンビネーターに代表されるように、アイデアを事業へと変換する段階で、資金や人脈などの支援を行うと、起業の成功を後押しできるのです。

 こうした起業支援プログラムは社会起業においても有用だと考えられ、世界60か国に展開する「アショカ財団」や貧困問題へ積極的に取り組む投資ファンド「Acumen」のように、国際的に展開する社会起業支援プログラムも広がってきました。

【次ページ】フェイスブックCEOも取り組む社会起業支援

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