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  • 2016/11/08 掲載

スペースマーケット重松大輔社長らが語る、イノベーションとニュービジネスモデル

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過去において「イノベーション」とは「新製品」「新技術」と同意語だった。しかし、今日の市場における「イノベーション」とは、「顧客満足度の向上」と「新たな価値提供」を指す。こうした変化に対応するためには、新たなビジネスモデルの構築が必要だ。シェアリングエコノミーに取り組むスペースマーケットの重松大輔氏らが「イノベーションとニュービジネスモデル」をテーマに語った。

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト 鈴木 恭子

ITジャーナリスト。明治学院大学国際学部卒業後、週刊誌記者などを経て、2001年よりIT専門出版社に入社。「Windows Server World」「Computerworld」編集部にてエンタープライズITに関する取材/執筆に携わる。2013年6月に独立し、ITジャーナリストとして始動。専門分野はセキュリティとビッグデータ。

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アカデミック、国家、ベンチャー企業創業者が一堂に会し、「イノベーションとニュービジネスモデル」に対する取り組みをそれぞれの立場から紹介した

従来の経済指標から脱却せよ

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 10月に開催された「ワールド・マーケティング・サミット」に登壇したケロッグイノベーションネットワーク共同創立者で常任理事を務めるロバート・ウォルコット(Robert Wolcott)氏は、「企業の成長戦略が劇的に変化している」と指摘した。

 その代表格が、IoT(Internet of Things)や3Dプリンタの台頭によるビジネスモデルの変革だ。IoTはあらゆるデータを収集・分析することで、新たな知見とサービスを提供する「データ駆動型ビジネスモデル」を生み出した。3Dプリンタはこれまで工場でしか作り出せなかったものを、「ユーザーの近いところ」で生産できるようにしたのである。

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ケロッグイノベーションネットワーク共同創立者で常任理事を務めるロバート・ウォルコット(Robert Wolcott)氏

 ウォルコット氏は、「3Dプリンタ技術は、これまで大規模な投資が必要だった製造現場を変える可能性がある」と指摘する。もちろん、3Dプリンタ技術の登場で、製造業がすぐになくなることはないが、生産と需要の関係に変化が生じることは間違いない。実際、英国ロールス・ロイスは、旅客機エンジンの製造に、3Dプリントした大型部品を使用しているという。

 「新たなビジネスモデルを考えるために必要なのは、将来を予測することではない。今の市場を変化させ、その変化に対応できるように備えることである」とウォルコット氏は説く。

 その好例が、オンラインDVDレンタルおよび映像ストリーミング配信を手がける米Netflixだ。1997年の設立当時は、郵送でDVDをレンタルしていた。同社は将来的に映像のネット配信が主流になると確信していたが、当時は技術的にも消費者のマインドでも「インターネット経由で映画を観る」ことに追いついていなかったからだ。

 しかし、「オンラインで映画をレンタルする」というビジネスモデルを作り上げ、市場と需要の変化を鑑みながら自社のビジネスモデルを変革したことで、今日の成功を築いた。

 もう1つ、ウォルコット氏が指摘するのは、「イノベーションによって、従来のビジネス成功指標が通用しなくなる」ことだ。

 例えば、エンジンオイルメーカーの英国カストロールは、電気自動車の台頭によってエンジンオイルの販売量が減少し、「オイル販売の量=会社の収益」という指標が使えなくなった。そのため、同社は「90秒でオイル交換ができる」というバケツ型のオイルセル装置を開発し、アストンマーティンなどの高級車に組み込むようにしたのである。

「エンジンオイル不要の自動車が普及する変化の中で、高級車のユーザーに対し、『(オイル交換という)煩わしい作業を低減する』という付加価値の高い商品を訴求することに成功した。これも大きなイノベーションだ」(同氏)

 最後にウォルコット氏は、「企業側の都合や制約は、顧客にとって関係がない。企業は自社の論理に固執せず、市場の変化の“周辺”で何が起きているのかを注視する必要がある」と語った。

国策こそ国民主導で実施すべき

 続いて登壇したパキスタン政府企画機関の副議長で企画開発庁連邦大臣を務めるアーサン・イクバル(Ahsan Iqbal)氏は、「公共政策に不可欠なツールとしてのマーケティング」をテーマに、モバイルマネーサービスである「イージーパイサ(easypaisa)」の取り組みを紹介した。

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パキスタン政府企画機関の副議長で企画開発庁連邦大臣を務めるアーサン・イクバル(Ahsan Iqbal)氏

 パキスタンは国民の70~80%がモバイルデバイスを利用しているが、成人人口の80%が銀行口座を所有していないという特徴がある。そのため、クレジットカードなどの金融サービス利用率は先進国に比較して低く、振込や年金の受け取りなど、一般的な金融サービスが滞るといった課題があった。

 こうした背景から、パキスタン政府は2008年に無支店バンキング規制法を施行し、モバイルマネーサービス(日本の電子マネーに相当)を開始した。これにより利用者は、銀行口座を所有していなくても、国内外への送金、公共料金の支払い、社会保障の支払、給与、年金などの支払いが行える。

 イクバル氏は、「イージーパイサは、産・官・学が連携し、構築したシステムだ。こうした政策は国民のニーズを国が把握し、市民の協力の元で実行する必要がある。過去においてパキスタンは、一般市民とエリート層のギッャプがあり、政策が一握りのエリートのものになっていた。これでは国家としてのイノベーションが実現できない」と説明した。

【次ページ】シェアリングエコノミーによる破壊的イノベーション

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