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2016年12月06日

9割の医師が「進む」と回答

遠隔医療が「本当に」離島や過疎地を救いはじめた

2015年8月に医師と患者間の「遠隔診療」が事実上解禁されて1年余り。医師がテレビ電話などを通じて患者を診療したり、専門医がかかりつけ医に指示を出したりする遠隔医療への注目が高まっている。岡山県新見市や医療福祉総合特区の香川県でこれまで、患者の遠隔診療実証実験や中核病院による地域診療所支援が続けられてきたが、新たに宮崎県日南市でも無医地区の患者に対する遠隔診療の実証実験が始まった。高齢化社会は今後さらに進行する見通しだけに、日本遠隔医療学会会長の原量宏香川大学瀬戸内圏研究センター特任教授(医療情報学)は「遠隔医療は離島や過疎地の住民に欠かせない」とみている。

執筆:政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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テレビ電話を通じて患者のケアについて意見を交わす新見医師会のスタッフら

(写真提供:新見医師会)

中核病院と地域の診療所で患者情報を共有

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 医師同士が助け合う仕組みを早くから構築したのが香川県だ。県内には瀬戸内海に浮かぶ24の有人離島があり、山間の過疎地も多い。医師は本土の都市部に偏在しているため、離島や過疎地の患者は専門医の治療をなかなか受けられなかった。

 離島に暮らす妊婦は胎児の異常で流産の危険があるのに、半日もかけて通院している状態だった。1980年に助教授として香川大学病院に赴任した原教授は、胎児の心音をとらえる携帯型装置を手渡し、送られてくるデータをパソコンで管理した。

 こうした経験から、原教授の呼びかけでスタートしたのが、中核病院と地域の診療所をインターネットで結ぶ患者情報の共有システム「かがわ遠隔医療ネットワーク」(K-MIX)だ。2003年度からスタートした事業で、通信回線を通して患者データを中核病院と地域の診療所が共有し、専門医の助言を受けながら診療する。

 離島や過疎地に暮らしていても遠くの中核病院までわざわざ通う必要がない。日々の健康管理は地域の医師に任せ、万一のときは中核病院の専門医がかかりつけ医を通じて対処してくれる。

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(クリックで拡大)

中核病院の患者の診療情報を病院間でやり取りして治療に役立てるK−MIX+の仕組み

(写真提供:香川県医師会)


 2014年度からは中核病院の患者のカルテなど、診療情報を病院間でやり取りして治療に役立てる機能をK-MIXに追加した「かがわ医療情報ネットワーク」(K-MIX+)もスタートさせた。検査や薬剤投与の重複を抑えられる効果もあり、現在129の医療機関が参加している。

 さらに、「オリーブナース」と名づけた訪問看護師がタブレット端末を持って患者の家庭を回り、病院にいる医師の指示を受けながら訪問看護する制度も2013年度から始めている。何か異常があれば、その場で医師が遠隔診療できるのが強みだ。香川県医務国保課は「これらの取り組みを通じて離島や過疎地域に質の高い医療を提供していきたい」と狙いを語る。

テレビ電話で医師やケアマネージャーらが患者を指導

 岡山県北部の新見市は患者と直接向き合う遠隔診療のパイオニアといえる。新見市は面積790平方キロと県面積の1割以上を占めるが、人口は約3万1,000人で、65歳以上が全人口に占める割合を示した高齢化率は38.4%に達している。

 しかし、医療機関は街の中心部に集まり、医師不足が続く。日本医師会のまとめでは、市内の医師数は人口10万当たり159.43人、全国平均の244.12人を大きく下回っている。

 2008年に市内全戸に光ファイバーが敷設されたのを受け、新見医師会は市内の医療施設にテレビ電話を設置、訪問看護師が患者の家庭に携帯端末を持ち込み、医師が診療する実証実験をスタートさせた。

 この経験を生かして今年から始めたのが地域包括ケアの多職種連携会議で、訪問看護師が持ち込んだテレビ電話で患者の自宅と新見医師会の在宅医療・介護連携支援センターを結び、医師、リハビリ指導員、ケアマネージャーらが患者を指導する。所用でセンターに集まれない職員もテレビ電話を使って会議に参加できる。

 患者は認知症や脳梗塞、がんなどで在宅ケアが必要な約30人で、週に1、2回、訪問看護師が遠くの人なら片道40キロの距離を駆けつけ、在宅ケアしている。新見医師会の太田隆正会長は「診療だけでなく、リハビリや生活指導も1度にできる。患者の立場で考えたら、こうした取り組みこそ求められているのではないか」と力を込めた。

【次ページ】遠隔医療の普及を阻む課題とは

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