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  • 2019/07/03 掲載

【自動車市場レポート】販売台数「2年連続マイナス」の衝撃、米中摩擦やMaaSの影響は

連載:テクノロジーEye

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リーマンショック後の落ち込みから2017年頃まで順調に伸びていた自動車の販売市場だが、ここにきて陰りを見せ始めている。「2019年は販売数の低迷が予測され、2018年に続き2年連続でマイナスになる可能性があります」と語るのは、IHSマークイットの川野 義昭氏だ。今後の自動車販売市場の予測と日本市場の最新動向について、政治的、環境的、またCASEやMaaSといった技術的な側面からのファクターを織り込みつつ、詳細に解説してもらった。

構成:井上猛雄、ビジネス+IT編集部 中島正頼

構成:井上猛雄、ビジネス+IT編集部 中島正頼

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IHSマークイット
日本・韓国ビークル・セールス・フォーキャスト マネージャー
川野 義昭氏

2018年に続き2019年も「マイナス」か

 まず、主要各国の販売数のこれまでの推移とこれからの予測を概観してみよう。本記事の販売予測で対象とする「ライトビークル」は、いわゆる一般的な乗用車と、車両総重量が6トンまでの商用車である。大型バスやトレーラー、超小型車や電気三輪車は含まない。

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主要市場別のライトビークルの販売状況と推移。直近の政治問題もあり、市場の勢いは鈍化しつつも、2023年には1億台を超える規模に拡大する見込みだ

 これを見ると、リーマンショック(2008年)後から2017年までの推移は、新興国の経済成長もあり、販売数も順調に伸びている。

 しかし、IHSマークイットの川野 義昭氏は、「2018年から中国の販売台数がスローダウンし、雲行きが怪しくなりつつあります」と警戒する。

「そのため、直近の2019年はマイナスを予測しています。そうなると、2018年に続き2年連側でマイナスになるということです。ただし中長期的には、概ね年平均で1.5%程度の市場成長となる見通しです。2023年には1億台を超える規模に拡大するでしょう」(川野氏)

 中長期的にみると、成熟市場である欧州や北米は、市場全体の中で安定した買い替え需要を喚起するだろう。一方で、中国やインドなどの新興国市場は、経済成長が原動力となり、市場全体の平均を上回るものとみられる。

米中摩擦やBrexitの影響に左右されるも、日本市場は堅調

 ただし市場全体の拡大スピードは、さまざまな要因によって左右される。特に、今の“米中摩擦”がどう転ぶかは、自動車業界に大きな影響を与えるという。

「トランプ政権になって“米国第一主義”による保護主義の傾向が強くなり、中国との貿易摩擦により、中国の景気減速を引き起こしています。この傾向は、インドやトルコ、EU、日本などへも波及していくかもしれません。

 また欧州では英国のEU離脱(Brexit)リスクもあります。2019年10月まで決定が延ばされましたが、まだ予断を許さない状況が続いています。加えて、環境面を配慮し、2018年9月に『WLTP(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)』がEU全登録車に導入されたため、その調整が行われるでしょう」(川野氏)

 とはいえ、こうした複雑な状況でも、現在のところ日本は特別な立ち位置にあるという。川野氏は「日本の場合は、政府の施策が効いているため、まだ他国と比べて販売は好調といえます」との見解を示す。

「もちろん増税前の駆け込み需要がありますから、来年以降はどうなるか分かりませんが、2019年4月からエコカー減税も2年延長になり、軽自動車や小排気自動車が比較的好調です。これが需要の下支えに寄与しているといえるでしょう」(川野氏)

SUVがトレンドもハッキリ分かれる「国の好み」

 次に、自動車のサイズ別、ボディタイプ別に推移と予測を見ていこう。

 サイズは小さい方からA~Eというセグメントで、たとえば軽自動車はA、カローラやシビックなどの中クラスはC、ベンツのEクラスやBMWの5シリーズがEだ。

 ボディタイプは、一般的なセダン(Car)、多目的車(MPV)、ピックアップトラック(PUP)、スポーツカー(SPORT)、スポーツ用多目的車(SUV)、バン(Van)の6種類だ。

 ここでも、分野ごとに顕著な結果が表れている。

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自動車サイズ/ボディタイプ別に見た場合の推移と予測。Cセグメントが全体の3分の1を占める。最近の大きなトレンドはSUVの人気だ

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「サイズで言えば、グローバルではCセグメントが全体の3分の1ぐらいを占めています。このCセグメントは中国が一大市場になっており、比較的小さいサイズが好まれるアジア諸国の中では珍しく、中クラスのサイズがよく求められています」(川野氏)

 ボディタイプ別で目を引くのは、SUVの伸長だろう。

「ここ5~6年ぐらい前からSUVブームが到来し、伸びが著しくなってきました。セダンの代わりに、SUVが人気を博しているのが最近のトレンドです。今後の伸びのほとんどがSUVタイプになる見込みです」(川野氏)

 セグメントやボディタイプによって、「国の好み」がハッキリ出てくるのは、政策・経済・社会・技術の側面が複雑に影響するからだ。

 たとえば、燃費や排ガスなどの環境規制が厳しい欧州では、小型車が好まれる傾向にある。また、こうした規制が緩い米国の場合は、州によって変わってくるものの、どちらかというと大型車が好まれ、SUVとピックアップトラックがシェアの半数以上を占めている。ただ、カリフォルニア州などは環境規制が厳しいため、小型車が好まれる傾向にあるという。

 各国の事情によって、売れ筋の自動車が異なってくると、あらゆる市場にマッチする自動車をラインアップできるのはトップの数社しかない。そのため、自動車メーカーとしての戦略が重要になってくる。

 各社の戦略は、地域別の販売シェアの推移を見ると分かりやすい。

【次ページ】主要メーカーの「選択と集中」が進む中、カーシェア等MaaSの影響は?

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