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  • 2019/10/01 掲載

IPアドレスに“国の情報はない”のに、なぜ「海外IPはダメ」とアク禁になるのか

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国内のゲームサイトやWebサービスが使えなくなる例が報告されている。原因として、サービスプロバイダーが契約者に振り出すIPアドレスが国内のものではなく、海外のものである場合が考えられる。Webサービスによっては海外からのアクセスを禁止していたり、利用規約で国内限定サービスとしているからだ。しかし、国内の通信事業者が海外のIPアドレスを割り振るといったことが、実際にあるのだろうか。

執筆:フリーランスライター 中尾真二

執筆:フリーランスライター 中尾真二

フリーランスライター、エディター。アスキーの書籍編集から、オライリー・ジャパンを経て、翻訳や執筆、取材などを紙、Webを問わずこなす。IT系が多いが、たまに自動車関連の媒体で執筆することもある。インターネット(とは言わなかったが)はUUCPのころから使っている。

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「海外IPアドレスだ」と言われて突然アクセスできなくなる?
(Photo/Getty Images)

海外からのIPアドレスが使えない状況

 「プロバイダーを変えたら、特定のWebサイトにアクセスできなくなった。問い合わせてみると、『プロバイダーが割り当てたグローバルIPアドレスが国外のものだから』と言われた」──そんな経験をした、あるいは話を聞いたことがあるかもしれない。なぜ、このようなことが起きるのだろうか。

 最近では、NURO光のサービスの利用者が、この症状をツイッターなどに投稿している。DAZNなどの動画サービスにアクセスできないという症状が発生し、通信事業者やサービス事業者に問い合わせても「ルーターをリセットせよ」とのアドバイスだけで症状が回復しないという問題が発生している。

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 前提となる条件を整理してみよう。まず、「Webサービスによって海外からのアクセスを禁止している」という状況だ。たとえば海外出張などで、ニュースサイトにアクセスしたら動画部分が表示されないといった経験はないだろうか。

 テレビ局や新聞社の動画ニュース配信、オンデマンド動画サービスやストリーミングサービスなどが配信する動画コンテンツは、海外からのアクセスを遮断することが多い。著作権の関係で他国から視聴できない、海外での配信ライセンスまで取得していない、といった理由があるからだ。

 こうした視聴制御は一般的に、アクセスしてくる元のIPアドレスを調べて、海外や特定の国に割り当てられたIPアドレスかどうかを判断して行われる。このような制御は法律的に問題があるわけではない。

 ビジネス的な要因以外でも、DoS攻撃をやり過ごすため、IPアドレスによってアクセスを遮断する方法もある。DoS攻撃は通常、パケットの中身や種類を見ても対策・選別はできない。

 ただし、攻撃パケットがサービスの継続に影響がないような国からのものだった場合、国単位で一律パケットを遮断することで対策できる。DDoS攻撃のように攻撃元が分散していても、攻撃インフラであるボットネットの大部分が特定の国に集中している場合がある。このような場合も、IPアドレスの国によるフィルタリングでトラフィックを抑えることが可能だ。

他国のIPアドレスは使えない

 では、正規の通信事業者が、自国に割り当てられていないIPアドレスを保持していて、それを契約者に割り振ったり使ったりすることはあるのだろうか? 答えは「ノー」である。

 IPアドレスはIANA(Internet Assigned Numbers Authority:インターネット割当番号公社)によってアドレス空間全体の割り当て状況が管理されている。地域インターネットレジストリ(RIR)と呼ばれる世界に5つ存在するリージョナルレジストラが、管轄国・地域のIPアドレス空間の管理を任されている。RIRから、各国のネットワークインフォメーションセンター(NIC)にアドレスを分配する。さらに各国の通信事業者やプロバイダーが、商用サービスとして組織や企業にIPアドレスを割り当てる手続きなどを代行する。

 IPアドレスは、このように管理されているのだが、ご存じのようにIPv4アドレスは、43億以上あるすべてのアドレス空間のうち、グローバルIPアドレスとして使える範囲の払い出しが終了しており、どの国や組織であっても新たにIPv4アドレスを受け取ることはできない。

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IPv4アドレスはすでに枯渇しており、IPv6アドレスが徐々に普及している
(Photo/Getty Images)

 すべてのIPアドレス(以降、特に明記しない限りグローバルIPv4アドレスのことを意味する)はRIRに振り出され、各国が使えるIPアドレス空間は決まっている。他国のIPアドレスを別の国が使うことはない。そもそもグローバルIPアドレスはインターネット上で一意なアドレス体系だ。そのため、IPアドレスによって送信元や宛先の国を特定する情報としても利用されている。

 ただ、IPアドレスの割り当ては一意だが、未来永劫不変というわけではない。使っていないアドレス空間の移転が可能だからだ。

【次ページ】そもそもIPアドレスに国を表す情報は一切含まれていない

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