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  • 2024/01/16 掲載

物価目標「下方修正」でもマイナス金利解除は4月のワケ、その後はどうなるのか?

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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日銀は2024年度の物価見通しを下方修正する方向で調整するという。報道通りであれば、1月のマイナス金利解除の可能性はほぼなく、4月の解除が濃厚だ。しかし、日銀の目指す物価目標の達成や植田総裁が「第2の力」と表現する、賃金上昇を起点とする物価上昇の実現までの道のりは遠いだろう。マイナス金利解除から解除後のシナリオ、無視できない米好景気後退のリスクまで、藤代氏が解説した。

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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4月25、26日に開催される日銀会合
(Photo/Shutterstock.com)

日銀は物価見通しを下方修正へ

 1月12日付で時事通信が報じたところによると、日銀は1月23日に発表する展望レポートにおいて、2024年度の物価見通しを2023年10月時点の前年比プラス2.8%から2%台半ばへ引き下げるという。日銀は2023年7月時点で1.9%としていたものを、10月には2.8%へと大幅に上方修正していたが、それを再び引き下げることになる。

 下方修正の詳細な要因は不明だが、過去数ヶ月、食料品価格の上昇鈍化から、消費者物価指数が急速に低下していたことがあるとみられる。消費者物価指数(全国)は生鮮食品を除いたベースでプラス2.5%まで伸び率が鈍化、東京都のそれはプラス2.3%と2%割れが視野に入りつつある。

 仮に報道通りとなれば、1月にマイナス金利が解除される可能性はほぼ消失したといって過言ではない。物価見通しの引き下げと金融緩和の解除は、常識的に考えて相いれない組み合わせである。もちろん、能登半島地震に伴う経済活動の下振れリスクを見極める必要もある。

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能登半島地震発生前には、1月会合でのマイナス金利解除を予想する声もあった
(Photo/Shutterstock.com)

マイナス金利は「異常」、4月解除予想の理由

 とはいえ、マイナス金利という極端な金融緩和は早晩解除されるだろう。その時期について筆者は3月の金融政策決定会合で階層構造方式の見直し等について何らかの予告をした上で、4月にマイナス金利解除に踏み切ると想定している。

 また、その後の展開については当分の間、政策金利を据え置くと予想している。それは後述するとおり、日本経済は欧米対比で賃金上昇率が低いため、インフレ退治を目的とする連続利上げが必要な状況に至らないと判断しているからに他ならない。


 日銀は2%目標の安定的達成が見通せるまで金融緩和を粘り強く続けるとしている。その点、4月の段階ではそうした見通しに強い自信を持てる状況にはならないと判断される。

 ではなぜ日銀はマイナス金利を解除するのかといえば、それはマイナス金利が「異常」であるからだ。マイナス金利は、2016年1月に、金融緩和の手段が尽きた末に導入された奇策であり、それを賃金・物価がともに「デフレではない状況」に回帰した現状においてなお継続していることの妥当性は揺らぎつつある。

 こうした事情を踏まえると、マイナス金利解除の説明は「(マイナス金利解除は)必ずしも金融引き締めではない。金融緩和を長く継続するための措置」との論法が用いられるのではないか。もちろん過度な円安に対する警戒もあるだろう。 【次ページ】マイナス金利解除後はどうなるのか?

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