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2016年04月13日
 一橋大学 楠木教授×サイボウズ対談:イノベーションは「好き嫌い」から生まれる

いまや、新聞や雑誌、Webメディアで「イノベーション」という言葉を聞かない日はない。企業戦略においても、イノベーションは不可欠な概念だ。イノベーションは「好き嫌い」から生まれると語る一橋大学大学院国際企業戦略研究科 楠木 建氏と、ユニークな人事制度で知られるサイボウズ 社長室 フェロー 野水 克也氏が、イノベーションの考え方や企業の多様性への取り組み、組織とイノベーションの関係性について議論を交わした。


今の人工知能は「イノベーション」ではなく「進歩」である

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――楠木先生は「イノベーションは技術革新と同義ではない」とおっしゃっています。その意味するところをお聞かせください。

楠木氏:「イノベーションは進歩ではない」ということです。技術は日々進歩していますが、「進歩」とは、自動車の燃費がよくなるとかモバイルバッテリーの持ちがよくなるといったように、物事がどんどんよくなっていくことです。ただし、「何がいいのか」の基準は変わっていません。進歩は連続しているもので、イノベーションは非連続なものという違いがあります。

 例えば、人工知能分野の機械学習という技術を使った囲碁や将棋プログラムを考えてみましょう。これらが人間(プロ棋士)に勝利したことは進歩ではありますが、イノベーションではありません。特定のルールの下でどんどん囲碁や将棋が強くなる。これは典型的な進歩です。

――あるインタビューで、将棋のプロ棋士 羽生 善治名人は、「将棋がコンピュータによって完全解明されてしまったら、どうするんですか」と聞かれて、「桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」と答えたという話もあります。

楠木氏:まさにその通りで、ルールを変えるということがイノベーションなのです。「何がいいのか」の基準が変わることですね。イノベーションを「技術革新」と訳すのは間違いだとは思いませんが、どちらかといえば「路線転換」の方が僕にとってはしっくりきます。

イノベーションは「善し悪し」ではなく「好き嫌い」から生まれる

――また楠木先生は、「イノベーションは好き嫌いから生まれる」ともおっしゃっています。

楠木氏:「好き嫌い」の対語は「善し悪し」であり、「善し悪し」とは「何かをよくしていこう」ということですから、そこから生まれるのは進歩です。つまり、善し悪しを持ち出した瞬間に非連続性は生まれません。今は誰もいいと思わなくても自分は好きだとか、面白い、やってみたいといったところからしかイノベーションは生まれないのです。それを「イノベーションは好き嫌いから生まれる」と表現しています。

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野水氏:ルールが同じだから「善し悪し」があるわけで、ルールが変われば「善し悪し」の軸も変わるということですね。

楠木氏:はい。ルールという言葉は、普遍的であることを意味しています。文明と文化という言い方がありますが、文明が普遍的なのに対し、文化は「好き嫌い」の問題です。「好き嫌い」は、言い換えれば局所化された「善し悪し」です。例えば、私は「クッキー」と「ようかん」だったらようかんの方が好きですが、これは「好き嫌い」です。私の中ではようかんの方がいいんです。しかし、それは個人的な好みなので普遍ではまったくない。つまり、「善し悪し」と「好き嫌い」は1つの連続軸上にあって、それが局所的になると「好き嫌い」、普遍的になると「善し悪し」になるのです。

イノベーションを起こす仕組みはないし、努力もいらない

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