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  • 2006/02/06 掲載

【中堅中小IT化】整理・整頓・清掃と、1品ごとの損益計算で会社が変わる(2/2)

中堅中小企業 IT戦略の成功事例~業種は違えど、ヒントを得られる~

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デジタルとアナログを組み合わせた工程管理で
1品単位の損益計算

 3Sの効果を実感した古芝氏は、次にISO9001の取得を目指す。ISO9001では、受け入れ検査、工程内検査、最終検査におけるチェック体制が必須だ。そこで、古芝氏自身が7年間、計5000時間かけて作ってきたデータベースをブラッシュアップすることにした。このデータベースは、「4D」というリレーショナルデータベースソフトで構築されており、注文ごとにIDを割り当てて管理している。

 新しいシステムでは、工程の開始・終了、検査の合格・不合格、担当者、設備といった情報をバーコードで入力するように改良した。これにより、発注者からの状況確認にもすぐ対応できる。
 ユニークなのは、システムをデジタルだけで完結させていない点だ。各注文の作業予定は、工場内のボードにID番号を張り出して管理する。

「未来のことに関してコンピュータで管理すると、ハプニングが起こった時に計画を組み直す必要があり、人手を取られます。ですから、未来の情報はアナログ。一方、確定した過去、つまり工程が終わったという情報は、デジタルで記録します。弊社の場合は、特急品の注文も随時現場に投入してその調整をしなくてはなりませんから」

 古芝氏が作り上げたデータベースシステムは生産管理に特化したものではない。販売、社員ファイル、売上といった情報まで、すべてが関連付けてあり、必要な情報を簡単に取り出せる。例えば、請求書を発行するのであれば、入金、売上、締め日、担当者という情報をデータベースから取り出して、印刷すればいい。

 そして、データベースを活用することで、今まで見えてこなかったものが見えてきた。それは、損益だ。多くの企業では、月次決算を元に損益を計算する。しかし、枚岡合金工具では、商品1品ごとに、損益を計算する。受けた商品が出荷されるまでの時間から、1時間当たりの利益を算出、それを元にA~Eまで5段階の等級を付ける。D、Eについては、コスト削減努力をしても利益が上がらないようであれば、撤退する。

「人、モノ、お金、時間という経営資源は限られています。その中で、いかにパフォーマンスの高い仕事をできるかによって、業績が左右されます」
 IT化と経営革新の成果が結びつくことで、同社は利益が生まれる体質に変わってきたのである。

「根底にあるのは、お客様に満足していただくという経営理念です。これまでは技術力だけで勝負していましたが、企画力を加えて顧客満足度を上げていきます。例えば、昨年にはITの事業部を創設しましたが、これによって情報をすばやく提供できれば、お客様に喜んでいただけます。金型を売るだけではなく、金型を通じてもっと価値を感じていただけることを目指しています」
(取材・文:山路達也)


古芝氏が社内文書整理用に作ったデータベースを母体として開発された「デジタルドルフィンズ」。テキストから、図面、動画まで、あらゆるデジタル・アナログ文書を簡単に取り込み、検索できる。パソコンに慣れていない高齢者でも使える操作性を備えている。

■会社プロフィール
会社名:枚岡合金工具株式会社
所在地:大阪市生野区巽中2-7-22
主な業務内容:冷間鍛造金型の設計・製作、ソフトウェア開発
TEL:06-6758-2001

●注釈
■リレーショナルデータベース
現在広く使われているデータの管理手法。表計算のように1枚のシートで情報を管理するのではなく、複数のテーブル(表)の集合で情報を管理する。これにより、関連するデータを抽出したり、結合することが簡単に行える。

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