• 2006/08/30 掲載

オーマイニュース成功の鍵を握る、韓国にあって日本にないもの(2/4)

【IT基盤】日本の市民メディアの再挑戦の日

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韓国をリードする386世代


ノムヒョン大統領
386世代とジュニア世代の
デジタルデモクラシーの申し子とも言えるノムヒョン大統領
 現在韓国の社会を政治的にも経済的にもリードしているのは、「386世代」と呼ばれる韓国版「団塊世代」の人々だ。現在30歳を越え、80年代に強烈な学生運動に身を投じた、60年代生まれの世代である。年代的には日本でいえば団塊ジュニアに近いのかもしれないが、彼らの生き方はまさに東大安田講堂などで学生運動を展開した日本の団塊の世代と重なる所が多い。

 韓国では87年頃まで朴正煕、全斗煥大統領らに代表される職業軍人による政権が続いていた。これに対しこの「386世代」が中心となった強烈な民主化運動が行われ、大統領の直接選挙が実現、民主化へと移行した経緯がある。彼らは韓国の民主化は自分たちが勝ち取ったものだという自負を持ち、反体制・反権力を自らのテーゼとして行動する。こうした背景からも政治または会社組織に対し強い主張を行い、権利を主張していく世代である。

 この「386世代」の後を受け継ぐ、ジュニア世代(まとめて「2030世代」と呼ばれるが)もこうした傾向を脈々と受け継いでいる。自らの親の強烈な民主化・労働運動を見て育った彼らは、おのずと政治参加意欲も高く権利意識も高い。国民の声が国を動かすという諸先輩方の成功体験をみて育ったこの世代は、90年後半、2000年に入っても政治に対し、モノを言い、行動する世代として存在してきた。彼らは、親の世代の「反体制」というテーマに代わって「政治的腐敗・汚職の追放」といったテーマを中心にこの「熱」を保っている。

新しいメディアへの渇望


 韓国にはこうした新しい世代の主張を公の場に伝え、主張していくための媒体が存在しなかった。当時、韓国ジャーナリズムの中心となっていた朝鮮日報、東亜日報、中央日報といった既存の新聞は多分に保守的であり、政権や野党、一部の財閥との癒着も指摘されていた。こうした経緯から386世代とそれに次ぐジュニア世代は、既存のメディアに対する不信感を募らせていった。まさにこの新しい世代は既存のマスメディアに代わる革新的なメディアを渇望していたのである。

 こうした流れをさらに加速したのが、99年から大統領主導で進められた国家レベルでの情報化戦略である。96年の「情報化促進基本計画」の後を受け実施された、韓国版のe-japan戦略ともいえる「サイバーコリア21」により、徹底的な高速通信網の整備とITによる産業創出が進められた。これにより韓国のネット環境は一躍世界トップレベルへと躍り出る。家庭に高速のADSLがつながり、街にはネットカフェが溢れた。「サイバーコリア21」は、2002年の「e-コリア・ビジョン2006」に引き継がれ今に至る。現在韓国ではこうしたネットインフラの急速な整備により、ネットを介してつながったジュニア世代は今までの韓国特有の地縁や血縁とは異なった、言わば韓国版ネオナショナリズムともいえる新しい連帯感を共有するようになっていく。

 そもそも韓国は日本に比べ地縁・血縁による繋がりが強いと言われる。もちろん長い軍事政権とそれに続く30年もの三金政権がこうした傾向を煽ったという指摘もあるが、明らかにその繋がりは日本には無い「濃さ」を持っている。こうした地縁・血縁にかぶさるように国家民族レベルでの繋がりが形成されているが、この繋がりの強さがネットという触媒を経て、民族レベルの新たなナショナリズムとなって昇華されつつある。もちろんそこに韓国の独自の宗教観や、過去の日本の植民地政策や南北分断の歴史など、様々な要素が複雑に作用していることは言うまでもない。こうした新たなネチズンの世代は親譲りの市民権利を主張する、デジタル民主主義と、新たに台頭したナショナリズムを両輪として、モノ言う世代として大きく成長を遂げてきたのである。

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