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  • 2024/03/15 掲載

障がい者への合理的配慮とは何か?4月から義務化される制度の詳細、対応例4選

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4月から、民間企業による障がい者への「合理的な配慮」の提供が法的義務となる。「前例がないから」「特別扱いできないから」という理由で対応を一方的に断ることは明確なルール違反となる。ただ、具体的にどのような取り組みが求められることになるのかについて、現時点で事業側に理解が十分に定着しているとは言い難い。民間企業はどのようなところへ気を配るべきなのか。また、どのような対応が「NG」と見なされるのか。具体的なモデルケースと合わせてわかりやすく解説しよう。

執筆:三上 剛輝、編集:川辺 和将

執筆:三上 剛輝、編集:川辺 和将

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行政だけでなく民間事業者も「合理的配慮」が義務化される
(Photo/Shutterstock.com)

義務化される「合理的配慮」とは

 「合理的配慮」は、まったく新しい概念というわけではない。2016年4月に施行された障がい者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)で、まずは国や自治体に対して、障がい者の権利・利益を侵害する社会的な障壁を取り除くことを目的とする義務が設けられた。

 この法律では、障がい者から社会的なバリアーを取り除いてほしいという要請があった場合、その実施に伴う負担が重くなければ、バリアーの除去について、必要かつ合理的な配慮を行うことを求めている。当初、民間事業者については直接的な罰則規定のない努力義務にとどまっていたが、2021年の法改正に伴い、民間事業者も2024年4月から義務化の対象となる。

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事業者の合理的配慮提供が努力義務から義務へと移行する
(出典:内閣府公表資料)

 違反には引き続き直接的な罰則がないものの、国が必要に応じて求める報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、罰則(20万円以下の過料)の対象となる。

障がい者差別解消法の前提、キーワードは「社会モデル」

 合理的配慮を理解するうえでキーワードとなるのが、障がい者差別解消法の前提となる「社会モデル」という考え方だ。

 社会モデルは、障害を本人の医学的な心身の機能障害とは見なさない。社会におけるさまざまな障壁(バリアー)との相互作用によって生じるものとして捉える。

 社会的なバリアー(=障壁)にはいくつかの種類がある。段差や狭い通路といった交通機関、建物等における「物理的な障壁」や、資格取得が制限されるなどの「制度的な障壁」、点字や手話サービスが提供されないなどの「文化・情報面の障壁」。そして、障がい者をかばわれるべき存在と捉えるなど「意識上の障壁」だ。

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社会モデルに基づく「障害」のとらえ方
(出典:内閣府作成リーフレット)

 社会的なバリアーを取り除くために必要な対応について、国は、障がい者と事業者側が対話を重ね、解決策を検討していくこと(建設的対話)が重要という考えを打ち出している。

 企業にとっては「前例がありません」「特別扱いできません」「もし何かあったら…」といった理由で一律に、一方的に対応を断るのはNGとなる。

 前例がない、特別扱いできないというだけの理由で対応を断るのは、社会的なバリアーを放置することになり、合理的配慮の義務に抵触する可能性がある。また、漠然としたリスクを指摘するのではなく、リスクを低減するためにどのような対応ができるのかを検討することが求められることになる。

 また、同じ障害でも程度などによって適切な配慮が異なるため、「○○に障害のある人は…」などひとくくりにせず、個別の状況に応じた対応を検討する必要がある。

 たとえば、過去に車いす利用者と別の参加者との衝突事故があったライブハウスで、別の車いす利用者がコンサートの通常席チケットを購入した場合を考えてみよう。運営側には、すぐに断るのではなく、通常席のエリア内を一部区切って車いす用スペースを設けたり、別の特別席のチケット購入を勧めたりといった代替案を提案し、双方の合意点を探ることが求められるだろう。 【次ページ】どこからどこまでが合理的配慮?4つの対応例

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